先週の金曜日はテート・モダン最後の開館延長日だったので、友人と『Surrealism Beyond Borders (国境を越えたシュルレアリズム)』展に行った。この日以降、開館延長の予定がない理由は不明。コロナによる入館制限は廃止された、という割にはテート・モダンの建物自体に入るための行列ができていたことに驚いた。おかげで10分遅刻してしまった。それにしても、イギリスは何故金曜日に開館延長するときにナイトクラブのように騒々しい音楽を流すのだろうか。これもコロナ禍から解放されて浮かれていることの現れなのかもしれない。

 

 さて、展覧会自体は思いがけない意味でとても面白かった。と言うのも、友人に誘われたときは「シュルレアリズムの展覧会があるから行こう」程度の理解でこの展覧会自体の目的には無頓着だったから、展示を見てシュルレアリズムが全世界の美術に与えた影響の大きさにあらためて驚かされた。予想外にも日本人アーティストの作品も多かった。岡本太郎をはじめとして草間彌生まで、これまでシュルレアリズムからの影響を考えたことがなかったアーティスト達も含んでいる(ちなみに草間彌生展も同時開催しており、こちらは券が取れ次第数ヶ月後に行くつもり)。つまり、直接1920年代のパリにおけるシュルレアリズム運動に関わってはいなくとも、影響を受けたアーティストや影響を受けた国(チェコやエジプトのカイロなど)まで展示してあったのだ。

 

 最初の部屋はシュルレアリズム運動の紹介で、有名なダリの電話(写真)やら、作家アンドレ・ブレトンによる「シュルレアリズム宣言」などを紹介。共産主義との関係、フロイトの無意識の発見からの影響など、コンテクストが分かるように展示してあり、今まで単独でしか理解していなかった個々のアーティストのネットワークが初めて繋がった感じ。例えば、20世紀のメキシコを代表する女性画家、フリーダ・カーロの映画を観ていたのに、夫で画家のディエゴ・リベラがシュルレアリズムとの関わりがあったことが分かっていなかった…など。また、ヨーロッパの美術関係の解説ではアンドレ・ブレトンがよく出てくるけれど、日本では詩人の瀧口修造が似たような役割を担っていたらしいことが展示物の解説から伺えた。

 

 後日展覧会で貰った小冊子を近所のカフェで読んでいたところ、店員さんから「素晴らしい展覧会でしたよね! 私も行ったんですよ」と話しかけられた。同じテート・モダンの『アンディ・ウォーホル展』以来、コロナ禍で長らく展覧会はご無沙汰だったけれど、やはりもっと美術館で刺激を受けるべきと反省している。『国境を越えたシュルレアリズム』展は2022年8月29日迄。

 

テート・モダンの予告編がなぜか貼れないので、代わりにAP通信アーカイブから

 

サルバドール・ダリ 「ロブスターテレフォン」(1938)  マックス・エルンスト作品(1924)

サルバドール・ダリ 「ロブスターテレフォン」(1938)     マックス・エルンスト作品(1924)

 

ルネ・マグリット「貫かれた時間」(1938)  物語性の高いレメディオス・バロの作品(1961)

ルネ・マグリット「貫かれた時間」(1938) 物語性の高いレメディオス・バロの作品(1961)