ロックダウン第二弾が決まる直前の先週金曜日の夜、仕事の後にテートモダンで開催中のアンディ・ウォーホル展に行った。「今行けるうちに行っておかないとまたロックダウンで全美術館が閉館してしまうかも」と先週友人と一緒にオンラインで券を買っていた。特にウォーホルのファンでは無いけれど、一人のアーティストについての展覧会は深く知ることが出来るので、なるべく行くようにしている。とは言っても、前にロンドンで展覧会に行ったのはなんと1年以上も遡って『スタンリー・キューブリック』展とは…自分でも驚いた。再ロックダウンは予想出来たのだから、夏の間に他の展覧会も行っておくべきだったのに、久々の映画館や建築見学で気分的に忙しくすっかり忘れていた。で、当日も午後8時半過ぎに入場して1時間ほどで見終わったらクタクタ。ロックダウン以降就寝が子供並みに早いので、夜遊びもできなくなったらしい。かつては1時間で見終わるくらいの展覧会だったら入場料(今回は£22 = 3000円)に見合わないと怒っていたのに。すっかり調子が狂っている。
 
   この展覧会で印象的だったことは…まず最初の映画があまりにもつまらなかったこと。男性が寝ている姿を延々と映すだけで、人体が抽象絵画のように見えてくることを狙ったとか。そう言われても…残念ながらそうは見えない。次にウォーホールのスタジオでシルバーに塗られた「ザ・ファクトリー」。昔ニューヨークのロフトについて調べたことがあり、彼のスタジオのことも紹介されていたのを思い出した。アートの実験場であると共に1960年代のアーティストや若者の溜まり場だったとか。そして多くのゲイやトランスジェンダーの友達。当時のアメリカでは同性愛は犯罪だったので、ゲイとしてのアイデンティティの影響で彼は精神的に相当厳しい状況にあったようだ。そしてファクトリーに来たうちの一人のあるフェミニストに拳銃で三発撃たれ、そのうちの一つが彼の胴体の多臓器を貫通し、生死の境を彷徨う。この後の傷の写真 (動画参照) は生々しく、まるでフランケンシュタインのよう。飛び降り自殺途中の報道写真などと同レベルで衝撃的。そしてこの事件は彼の人生に大きな影を落とし、人格も一変したという。
 
   20世紀で最も成功したアーティストの一人なのに、ウォーホルの人生はとても痛々しい。銀髪の鬘 (動画参照)でウォーホルというアーティストを演じ続けていたように見える。友人曰く「才能あるアーティストというより、天才的に自己プロデュースに長けて、時代の波に乗った人ね」。ラストを飾るレオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」(写真1)で宗教に対峙する間に命が燃え尽きてしまったのかもしれない…
 
【追記】自分で撮った写真のブログ掲載について美術館にメールで問い合わせたのだが、返信に「今夜からテートモダンは一カ月間閉鎖です。貴方は丁度間に合って良かったですね」とあった。主催者の方々の無念は如何ばかりか、と思う。
 
写真1: 「最後の晩餐」は白黒のシルクスクリーン 
 
有名人好き
 
壁紙の紫色の楕円も毛沢東の顔だった…
 

テート・モダンの『アンディ・ウォーホル展』動画(英語版、日本語字幕も悪くない)