ウィーンフィルのニューイヤーコンサートをTVで観ながらこのブログを書き始めた。本来なら、11月30日にドミトリー・マスレエフのコンサートが現地のウィーン学友協会で開催予定で、小旅行も兼ねてチケットを購入済だった。「予定ではあの席に座っていたはずなのに」とニューイヤーコンサートを現実味を持って観たのは初めて。ところが、よりによって30日の数日前に突然オーストリアがロックダウンに突入し、コンサート自体が中止された。コロナの合間を縫って旅行しようなんて楽観的過ぎたか。一体いつになったら普通にコンサートに行けるようになるのだろうか…と年始から呆然として冴えない。

 

  さて、前回のブログ以来年末映画を観る余裕がなかったので、帰国便で観た『カラミティ』について書くことにする。Calamityの意味が何だったかすっかり忘れていたが、調べたところ「災厄」なので「厄介者ジェーン」と言った感じか。監督はフランス人のレミ・シャイエ、前作『ロング・ウェイ・ノース: 地球のてっぺん』と同様に囲み線の無い独特な色使いのアニメーション手法が特徴的。能力がある少女が男社会の中で格闘し、次第に信頼を獲得していくという物語のテーマも同じ。でも今回は西部開拓時代のアメリカに実在した男装の女傑カラミティ・ジェーンが主人公。さて、そのあらすじは…

 

 時は1863年。アメリカ西部への移民団でマーサ・ジェーンは一家の幌馬車を操作する術を学ぶ必要に駆られ、終いにはズボンを着て短髪に。ジェーンはこの選択によって、果てしなく野蛮な世界に直面するけれど、そこはあらゆることが可能になる世界でもあった…(IMDbより翻訳)

 

 レミ・シャイエ監督は北極とか開拓前の北米とか極端な大自然をアニメーションの世界に落とし込むことに挑戦しているらしい。例えば雲の色が思いがけない色の組み合わせだったりするけれど、センスが良いのでハッとさせられる。『ロング・ウェイ・ノース』の北極とはまた違う絶景が繰り広げられる。ディカプリオが熊と戦う『レヴェナント…』も実写で北米の冬における自然の脅威を描写しているが、『カラミティ』では北米の夏。「泥棒」の汚名を濯ぐためにたった一人で危険な大自然の中へ突入して真犯人を追いかけるジェーンの勇気に脱帽する。ただし、『ロング・ウェイ・ノース』はロシア貴族の話だから当時公用語だったフランス語でも全然違和感がないけれど、西部開拓をテーマとする『カラミティ』でフランス語とは…完全に拍子抜け。元気一杯でガサツなところもあるジェーンがどこか気取って聞こえるフランス語を話すのはちょっと違うと思う。フランス映画だけど、アメリカ資本も巻き込んで英語にするべきだったかも。

 

フランス語版予告編

日本語版予告編(フランス語よりマシかな!?)