電話による保険募集の留意点/監督指針II -4-4-1-1(5) | なか2656のブログ

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1.電話による保険募集の監督指針上の留意点
金融庁の保険会社向けの総合的な監督指針II -4-4-1-1(5)は、電話による新規の保険募集、転換および団体保険への募集・加入勧奨について、「保険会社又は保険募集人が行う電話による新規の保険募集等は、非対面で、顧客の予期しないタイミングで行われること等から、特に苦情等が発生しやすいといった特性等」にかんがみ、

当該行為を反復継続的に行う保険会社又は保険募集人は、トラブルの未然防止・早期発見に資する取組みを含めた保険募集方法を具体的に定め、実行するとともに、保険募集人に対して、適切な教育・管理・指導を行」わなければならないと規定しています。



そして監督指針は、「その際の取組みとしては、以下の措置を含めた適切な取組みがなされ ているか。」としてつぎの5点をあげています。

①説明すべき内容を定めたトークスクリプト等を整備のうえ、徹底していること。

②顧客から、今後の電話を拒否する旨の意向があった場合、今後の電話を行わないよう徹底していること。

③通話内容を記録・保存していること。

④苦情等の原因分析及び再発防止策の策定及び周知を行っていること。

⑤保険募集等を行った者以外の者による通話内容の確認(成約に至らなかったものを含む。)及びその結果を踏まえた対応を行っていること。


2.電話による保険募集に関するパブコメ上の留意点
金融庁が保険業法改正に伴い、平成27年5月27日に発表した、「「平成26年改正保険業法(2年以内施行)に係る政府令・監督指針案」に対するパブリックコメントの結果等について」のパブコメ回答部分においては、何点か、電話における保険募集についてふれられています。

・「平成26年改正保険業法(2年以内施行)に係る政府令・監督指針案」に対するパブリックコメントの結果等について

(1)パブコメ回答578
パブコメ回答578は、「当規定は、営業職員か代理店かに関わらず、業として反復継続的に電話による保険募集を行っている場合を想定したものです。なお、基本的には、既契約者に対する単なる訪問アポイント取得等の契約保全や既契約の更新(更改)を目的とした電話については、生保・損保に関わらず、今回の改正の趣旨に該当しない限りは、当規定にある措置を講じるなどの必要はないものと考えられますが、営業職員等が行う保険募集においても、顧客の予期しないタイミングで行うこともあり得ることから、当規定の趣旨に配慮した対応が必要と考えられます。」としています。

つまり、既契約者に対する契約保全や既契約の更新のためのアポイントのための電話は今回新設の監督指針II -4-4-1-1(5)には該当しないとしています。しかし、そのアポイントの電話が新契約の獲得などの意図を含むものであれば、監督指針II -4-4-1-1(5)の対象になるとされています。

(2)パブコメ回答587
パブコメ回答587は、「(顧客から、保険会社または保険募集人に電話連絡し、契約手続きを行う場合については、)当規定の趣旨に照らし、特に苦情等が生じ得るものとは考えられないことから、当規定の対象とするものではありません。」としています。

(3)パブコメ回答588
パブコメ回答588は、「(保険会社又は保険募集人(保険代理店)のホームページやコールセンターに資料請求を行った顧客に対し、後日、保険会社又は保険募集人が電話と資料送付のみで保険募集を行うケースについて)、当規定の趣旨に照らし、特に苦情等が生じ得るものとは考えられないことから、当規定の対象とするものではありません。」としています。

(4)パブコメ回答590
パブコメ回答590は、「DMを一方的に送ることのみをもって、当規定の対象から除外されるものではありません。また、「反復継続的」の有無については、個々の事案に応じて総合的に判断する必要があります。」としています。

(5)パブコメ回答597
パブコメ回答597は、③の「通話内容を記録・保存」に関して、「通話内容の記録方法としては、必ずしも録音に限定されるものではありませんが、事後的に精緻な確認・検証が可能な方法である必要があります。」としています。

(6)パブコメ回答600
パブコメ回答600は、「通話内容の保存期間については、保険会社又は保険代理店において、保険募集の適切性等を事後的に確認・検証するために適当と考えられる期間、保存することが必要と考えられます。」としています。

(7)パブコメ回答594
なお、パブコメ回答594は、団体保険に関して、「規則第227条の2 第2項各号に該当する団体が被保険者に対して電話を用いて行う加入勧奨行為については、当団体内のルールに委ねられるものであるため、本規定の対象となるものではありません。」としており、団体内での適切な情報提供が期待できる団体の加入勧奨については監督指針II -4-4-1-1(5)は適用されないとしています。

■参考文献
・錦野裕宗・稲田行祐『保険業法の読み方 三訂版』186頁
・中原健夫・山本啓太・関秀忠・岡本大毅『保険業務のコンプライアンス 第3版』149頁

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保険業務のコンプライアンス(第3版)







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