にほんブログ村
ブログランキングに参加しています
励みになりますので、クリックお願いいたします。
0. はじめに
債務整理の方法は、裁判所を利用するかどうかで、①任意整理(私的整理)と②自己破産、個人再生(法的整理)に区別することができます。
今回は、同居の親族(親や配偶者)がいらっしゃる方が債務整理を行う場合に、それぞれの方法が家庭へどのような影響を与えるかをご紹介します。
1. 債務整理全般
弁護士が債務整理に介入した時点から、債権者からの取立ては停止します(貸金業法21条1項9号)。
したがって、債権者から自宅に督促状が届いたり、電話がかかってきていた場合には、それらが一旦収まることになるため、同居の親族へかける心理的な負担を減らすことができるでしょう。
一方、債務整理の開始に伴い、信用情報(ブラックリスト)への登録がされると、新規の借入れが事実上不可能となります。ローンだけでなく、クレジットカード(ETCカード)等の利用もできなくなってしまうので、生活費等の支払いに本人名義のカードを用いていた家庭であれば、支払方法の変更を検討しなければなりません。
2. 私的整理
任意整理は、債権者(銀行や貸金業者)と個別に和解交渉をして、将来の利息をカットしつつ分割払い等の猶予を得る手段ですので、借入れ元本そのものを大きく圧縮することは見込めません。まとまった金額の借入れがあれば、債務整理後もそれなりの期間にわたって返済を続けていくことになります。
一方、法的整理ではなく裁判所を利用しないため、配偶者等の同居親族が手続に関与する必要はありません。
債務整理開始後に、滞ることなく返済を続けていくことができるのであれば、家庭に与える影響が少ない手段であるといえます。
3. 法的整理
(1)家計状況の報告
自己破産、個人再生の申立てをする場合、裁判所からは家計状況の報告(家計簿の提出)を求められます。また、申立人本人の収入に関する資料(給与明細)のほか、同居親族がいれば、その方の収入資料も提出を求められることになります。※各地の裁判所の運用によって異なる場合があります。
これは、裁判所が申立人の免責や債務圧縮を認めてよいかを判断するため、家計を同一にする同居親族の収支も含め、家計状況の情報が必要となるからです。
仮に申立人が、同居親族の収支や、家計全体の状況を一人で把握し、資料を収集できるのであれば、同居親族の協力を全く得ることなく、申立ての手続を進めることも不可能とは言い切れません。
しかし、同居中とはいえ、他人の収支を完全に把握することは困難ですし、給与明細等の資料を同居人の許可を得ずに持ち出すことは、後々トラブルにもなりかねません。同居親族を全く関与させず(秘密にしたまま)、法的整理の手続を進めることはあまり現実的ではないでしょう。
家計状況の把握や資料提供等の協力(もちろん、債務整理後の生活の立て直しも含め)を求める必要があるという意味で、家庭へ与える影響は少なくないといえます。
(2)財産の制限
これはイメージがつきやすいかもしれませんが、自己破産を行うと、破産者の保有財産は大部分が換価処分され、債権者に配当されることになります。
一方、破産をした後にも生活のために最低限のお金は必要となりますから、総額99万円以下の範囲で、財産を残すことができます(自由財産)。
したがって、破産者名義で、自由財産の価額を上回る財産があれば、自己破産手続に伴って手放さなければならなくなり、家庭へ大きな影響を与えることとなるでしょう。
なお、個人再生では、自己破産のような財産の換価処分はありませんが、保有財産を下回る価額まで債務圧縮をすることはできません(清算価値保証原則)。
したがって、個人再生手続を利用して債務を圧縮し、返済を続けていくために、結局、主要な財産を手放さざるを得ない状況となる可能性があります。
(3)その他
同居親族が保証人となっている場合、法的整理の手続開始に伴い、保証人にも返済の請求がされるようになる点は注意が必要です。
仮に本人が、裁判所から免責や債務圧縮の許可を受けたとしても、保証人は、保証債務として全額の返済義務を負います。場合によっては、保証人自身も法的整理の手続きを行うことを検討する必要があるでしょう。
4. おわりに
手段によって差はありますが、債務整理が家庭へ与える影響は少なくありません。しかし、借金に苦しみながら、迷惑をかけたくない一心で何も手を打たず、漫然と借入れを続けると、取り返しのつかない事態を招きかねません。
早い段階で家族に協力を求めた方が、かえって迷惑をかけずに済むこともあるのです。借金でお悩みの方は、まずは専門家である弁護士にご相談いただければと思います。
にほんブログ村
ブログランキングに参加しています
励みになりますので、クリックお願いいたします。