初のお手前に加えて水屋からのお運びをすることに。お客様の誘導とか裏方の荷物運びならそれなりにこなせるのだが、宗匠から業務命令としてお沙汰が下ると新人には有無が言えない。
本番の3日前に、今回デビューする人たちだけの稽古があった。私たちの「易社」グループからは2人。他のグループからも集まり8名位でお手前とお運びの稽古を繰り返し行った。
さて、本番当日、私は午前中用事があり午後からの入り。会場に到着すると、仲間は午前中、すでに何席か済ませ初舞台を踏んでいた。到着するや否や「次は渡邉さんのお手前の番ですよ」と宗匠から声がかかった。
「そんな無茶な!」と心の中で叫んでみたものの出るしかない状況に置かれた。
お手前の席に付くと、お手前の順番を思い出していた。
「一煎、さしあげます」。という言葉掛けを忘れ手がすでに動いていた。が、一煎目を入れたときに、半頭が側に来て二煎目の湯をとっててください、と小声で指示をしてくれた。
二煎目を急須に注ぎ、半頭が急須を取ってお客様のところへ。しばらく待った。美味しかったのか、どうなのかお客様の反応が全く見えてない。様子を窺う余裕がない。二煎目の茶碗が戻ってきた。これで終わりだとホッと胸を撫で下ろしていると、席主の宗匠から茶碗を伏せて最後の言葉を、という声がかかった。
そうだ忘れていた。思い出したかのように「お退屈様でした」を発して席を立った。苦い苦いデビューだった。
![$なごみカルチャー](https://stat.ameba.jp/user_images/20130312/21/nagomian-life/53/f7/j/t02200165_0640048012454800186.jpg?caw=800)
![$なごみカルチャー](https://stat.ameba.jp/user_images/20130312/21/nagomian-life/2c/fa/j/t02200293_0480064012454801054.jpg?caw=800)