演技力について 14 あまり知られていないちゃんばらの真実 | 名古屋の鈴木のブログ

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 日本の時代劇の華・ちゃんばら。現在はほとんど放送されていないが、昭和時代の日本のテレビドラマは娯楽時代劇が支えてきた。ラストをちゃんばらで悪人を倒し締めるワンパターンな構成を人々は見続けていた。
現在は「鬼滅の刃」など、アニメで再び注目を浴び、スポーツチャンバラは人気を維持している。
 さて、テレビにおけるちゃんばらの秘密を書こう。そして、ちゃんばら、つまり殺陣アクションができる俳優女優こそ、優れた演技力の持主であることを。
 ちゃんばら遊び。日本の子どもたちは昔から遊んできた。その時、おもちゃの剣、刀を相手にぶつけていたはず。ぶつけられて「斬られた~」だったはず。
テレビドラマでも相手の身体に刀が当たっているように見える。
が、実はまったく当たっていない。斬り合いしている2人の距離は意外と離れていて、刀を振り下ろしてもまったく当たらない間隔でいるのだ。つまり、当たっていないのに斬られたふりをしているだけなのだ。
では、なぜ、当たっているように見えるのか。
それはテレビカメラの位置だ。斬る者が刀を振り下ろす、斬られる者の肩から胸に向かってザクッと斬ったかのように見える、斬られた者が倒れる・・・
この一連のアクション、テレビカメラは必ず、斬られる者の背後から撮っている。どんなに激しく動き回っていても、斬られる時には必ず背後に回る。肩越しに見える斬る者の形相(顔つきのこと)も見えるので、いまの状況がよくわかるポジションではある。ああ、いま、斬ったなと。
でも、実は、その位置から撮らないと・・・別の角度から見たら刀がまったく当たってないことがばれてしまうから・・・の理由の方が大きい。
つまり、ちゃんばらは斬る者と斬られる者、カメラマンの3人の一体となったチームワークが生み出す芸術なのだ。
 いま、芸術だと書いたのは私事からの理由があるから。
子どもの頃から祖父母の影響で、時代劇を見てきた。ちゃんばらを、かっこいい! と何の抵抗もなく見ていた。
が、思春期だったか、あるとき、気が付いた。ただ殺してるだけじゃないかと。嫌悪感が生まれて見れなくなった。
再び、見れるようになったのは、日本テレビ系「吉宗評判記 暴れん坊将軍」を見た時から。松平健さんのちゃんばら、その剣さばきを見て美しい! と思えた。健さんの動きがとても速かったのだ。右に左に剣・刀を振って身もすばやく移動しながら、バッタバッタと数人を一度に斬り落としていくその速い動きに魅了された。
そうか、ちゃんばらは芸術だったんだ!
それからは、俳優さんを見るようになった。すると、実に個性豊かなのだ。松平健さんのちゃんばらは美しい、高橋英樹さんのちゃんばらは豪胆、加藤剛さんのは背筋が常にピンとしていて剣道のようだし、役所広司さんはただ振り下ろしてるだけ・・・笑
引退してしまったが、若手で言えば東山紀之さん、もっと見てみたかったな~。
彼らこそ、演技力がすばらしい役者さんと言えるのは、先ほど、書いたように、斬る者と斬られる者、カメラマンの3人の一体感がないとちゃんばらは撮ることができないからだ。たとえば、よろけたりして動きが一瞬でも遅れれば、すべてのタイミングが外れていき、見れたものではなくなってしまうから・・・とても難しいのだ。
 それも、「はい、もう1回、初めからー!」と、監督・演出家の声も多いだろう。何度も撮り直しだってある。
それでも、同じ動き、本当にまったく同じ動き・アクションを再現しなければいけない。そうしないと撮れないのだ。
 ちゃんばらって一見、簡単そうにみえて、実はもっとも過酷なハードアクションなのだ。
 ちゃんばらができる俳優さん女優さんが少なくなったことも、娯楽時代劇の激減した理由のひとつなのかもしれない