「行くなー!ラッキーーー!!」
「だめですよ!みなとさん!!」
おれはラッキーを、そして坊やを道路の向こうに思いっきり突き飛ばした。
たすかった・・・
「あのね、ラッキーが助けてくれたの。ラッキーがね、ボクを助けてくれたの。」
泣きじゃくる坊やと気を失ったラッキーを抱きしめて、あの人も泣いていた。
「みなとさん、一緒に役所に戻ってください。もう、なんてことしてくれたんですかー。」
がっくりとうなだれて歩く、お迎え係の背中を見ながら、おれはもと来た道を戻っていった。
涙がこぼれて止まらなかった。
神様の前に出てからも、涙があとからあとから出てきて、止まらなかったんだ。
「神様、おれ、おれ・・・」
ためだ。言葉にならない。それに何を言えばいいのかもわからない。
神様はおれの背中をなで
「罰として、お盆の帰省はなしよ。そのかわり、お正月には帰っていいわよ。
ラッキーは、天国名簿の登録抹消が済んだら目を覚ますわ。
あなたは、気が済むまでここでお泣きなさい。」
そう言って、扉の向こうに消えた。
どれだけ泣いたかわからない。
そろそろ店に戻ろうか。
おれのご飯をみんなが待ってる・・・かな。
ドアの前に、あのお迎え係が立っていた。
「すみませんでした。」
「いえ。僕も“おとがめなし”でしたから。
それより、みなさんがお待ちですよ。」
そう言ってドアを開けたその向こうに・・・
てんさん、はる、はっぴーさんや俺の店の常連さんたちが並んていた。
「おいしいご飯を食べたいぞ。早く店に戻るのじゃ。」
「もう、てんちゃんてば。」
みんながドッと笑った。
おれはまた泣いた。
おれたちは歌いながら歩いた。
♪天国いちのうまい店
ほっぺた落ちちゃう気をつけて
一度食べたら止まらない
天国食堂みなと屋さ
待ちに待ったお正月も、もうすぐだ。
もう、寄り道はなし。
まっすぐ、かあちゃんと、みーさん、のぞみの待つ家に帰ろう。
おわり