もうすぐお正月。
お正月には里帰りしてゆっくりするつもり。
待ち遠しいなぁ。


あれは、今年のお盆の事。ちょっと寄り道しようなんて、思ったんだよ。
最初の家族のところ。
ひと目見るだけ、ちょっとだけ、なんてね。

「ごめんね。」
あの時、あの人は泣いてた。

おれが以前、お姉さん と呼んでいた人だ。
引っ越しをすることになって、おれは一緒に行かれないって言っていたよ。
肩を震わせながら遠ざかるのを、見ていた。

その後、長らくボランティアさんちて過ごして、それから、かあさんとみーさんちに行ったんだ。

着いた。
ここだ。
まあまあの一軒家だった。 

すると、玄関のドアが開いて、坊やが飛び出してきた。
「お外に飛び出さないようにね。」
と言いながら出てきたのはあの人だ。

お姉さん、ママになっていたのか。

「ボク、ラッキーとボールで遊ぶー」

ラッキー?

それは、まだ若いゴールデンレトリバーだった。

ちょっと待ってよ。どういうことだ?
おれは頭が混乱して立ちすくんてしまった。

すると、そこへ、聞いたことのある声がしたんだ。

「あれ?みなとさん?どうしたんですか、こんなところで。」
振り向くとそこにいたのは、天国のお迎え係だった。

「誰が“渡り名簿”に載っているんですか?」
「あのラッキーです。」
「なんで?」
「それはわかりません。」
「わかりません、て。あんなに元気なのに、事故か?事故なんですね?!」 
「ですから、それは私にもわからないんです!」
「なんだよ、おまえ!見殺しにする気か?!」

「私の役割は、さいごの時の苦痛を取り除き、天国に案内することです。運命を変えることはできません。」

すると、ボールを追いかけて道路に出ようとする坊や、走ってくるトラック、坊やを助けようと走ってくるラッキーが同時に見えた。

つづく