入院する場合、救急搬送された場合、在宅医療に移った場合、聞かれたことがある人も多いはず。
「延命治療はどうしますか?」
息子は、在宅になって最初の往診で書類をもらった。
どの措置を希望して、どの措置を希望しないか、事細かく書かれていた。
私が
「延命措置なんてしないよね」
と呟くように言うと、息子が驚いたように私の顔を見て
「えっ?」
って言った。
私も驚いて
「えっ?」
って聞き返した。
だってがん患者の延命措置は、それによって蘇生したところでガンが無くなるわけじゃない。
助かってもまたすぐに同じことが起きる。
何度も同じ苦しみを味合わせたくないと思っていた。
息子は息子なりに、絶対私が助けてくれるはずと思っていたようだ。
ただ、そんな気持ちを口に出して言うのは残酷な気がして、何も言わずその書類は一旦保留にした。
ずっと結論が出ないまま、というか話し合ってもいないまま、11月の19日を迎えることとなってしまった。
息子の首がガクンと垂れ、目が白目になった時、
「終わった」
と直感した。
ダメなのはわかっていた。
何をしても蘇生しないだろう。
それでも救急車を呼んだ。
言っていることとやっていることが真逆。
でもそのままサヨナラできる心境じゃなかった。
救急車の中でも救急隊の人たちが、
「お母さん、まだ諦めないで! 」
と何度も言ってくれてたような気がする。
私は、
「目を開けて! 戻って来て!」
と鳴き叫びながら息子の手を握っていた。
最後には
「〇(息子)、起きなさい!」
と怒鳴っていた。
病院に到着して、先生方も手を尽くして、心臓マッサージはもちろん、カンフル注射や気管挿管をして人工呼吸をしても、息子は戻って来てはくれなかった。
CT画像を見た先生は
「生きていたのが不思議です」
と言った。
延命措置の選択、理屈じゃないと感じた。
あのまま静かに見送ることもできた。
無理だと感じたのに、何故救急車を呼んだのだろう。
あんな書類1枚で、最後の約束をするなんて私には無理だった。