【再読】 『グリム童話集 上』佐々木田鶴子訳 岩波少年文庫
ふと読みたくなり、本日はこちらの作品を再読しました。
ドイツ生まれのグリム兄弟が編纂した昔話集を元に作られた、子供向けの童話集になります。世界各国で多くの人に親しまれている有名なお話が多数収録されています。
岩波少年文庫から出ているので、字も大きく、漢字も少なく、非常に読みやすいです。
以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。
ここからは収録作品について、感想などを簡単に書いていきたいと思います。
上巻には全部で二十五の作品が収録されています。
『オオカミと七匹の子ヤギ』
有名なお話です。オオカミのお腹に石を詰めるのがちょっとエグい。
『ブレーメンの音楽隊』
ロバ、犬、ネコ、オンドリが出てきます。保育園児だった頃に妹が劇でこれをやっていたのを思い出しました。懐かしい。ちなみに泥棒役でした。
『カエルの王様』
泉に落ちたまりを拾ってくれたカエルに対し、気味悪がって冷たい仕打ちをするお姫様。カエルが美しい王子だと分かった途端、コロッと態度を一変させます。正直だなー。
『おいしいおかゆ』
魔法の鍋のせいで、町中がキビのおかゆでいっぱいになってしまうお話です。
『白雪姫』
こちらも有名。胸紐や櫛で二度殺されかけているにも関わらず、毒リンゴを食べてしまう白雪姫。こびとたちからあんなに戸締まりには気をつけろと言われていたのに。割と欲望に忠実です。
『しあわせハンス』
逆わらしべ長者。目先の欲のために大きな金塊を馬と交換し、更にその馬を牛と交換し、そこから豚→ガチョウ→石とランクダウンして最終的には手ぶらになります。しかしそれでもずっと幸せそうなハンス。案外これくらい愚かな方が人生楽しいのかもしれません。
『ひょろひょろ足のガタガタこぞう』
こびとの本名を当てる、名当て系のお話です。その本名が「ひょろひょろ足のガタガタこぞう」。命を助けてやった見返りの約束を反故にされ、情けをかけたら自分の首を絞める結果になったこびと、哀れ。
『いばら姫』
あれです、「眠れる森の美女」。こちらでは魔女ではなく仙女という訳になっています。
『命の水』
父王の病を治すため、命の水を探しに出かけた王子たちのお話です。主人公の末弟は上二人の悪巧みで手柄を横取りされましたが、最終的には名誉を挽回できたのでめでたしめでたし。
『親指こぞう』
百姓の息子(親指サイズ)の、スケールの小さな大冒険のお話。
『ガチョウ番の娘』
お付きの女官に裏切られ、王子様の花嫁の座を奪われてしまったお姫様のお話です。ガチョウ番として働いていましたが、真実が明らかになったことで無事、王子様と結婚することができました。
『ものしり博士』
とあるお百姓が医者になりすまし、度胸と幸運で多額の金を手に入れるお話です。下巻にある「ゆうかんな仕立て屋さん」もそうですが、こういう勝手に周りの勘違いが加速していくタイプのお話は大好きです。
『歌いながらはねるヒバリ』
三人姉妹の末娘が、歌いながらはねるヒバリを欲しがったことから始まるお話。ヒバリと引き換えにライオン(中は王子)と結婚した末娘がかなり強かです。ハトに変わった夫を追って七年間も休まず歩き続けたり、夫と竜の戦いに参戦したり、夫を連れ去った王女から彼を奪い返したり。格好良すぎです。
『ホレばあさん』
継母に虐められている美しい娘が、ホレばあさんという不思議なおばあさんの家で働き、たくさんの金を与えられて帰ってくるお話です。継母の実子である怠け者の娘も行きましたが、真面目に仕事をしなかったのでコールタールまみれにされました。
『兄と妹』
魔法でシカに変えられた兄と、美しい妹のお話。妹は王様と結婚した後で悪い魔女に殺されてしまいましたが、最後には生き返り、兄の方も人間の姿に戻りました。
『テーブルとロバとこん棒』
とある三人兄弟がそれぞれ奉公先で、ごちそうを出すテーブル、金貨を出すロバ、勝手に悪人を叩くこん棒を手に入れます。兄二人は悪い宿屋の主人にその宝物を騙し取られてしまいましたが、こん棒を持つ末弟が相手を叩きのめし、無事にテーブルとロバを取り戻して兄たちに返しました。
『ラプンツェル』
妊娠中の女が魔女からラプンツェル(サラダ菜)を盗んで食べたことから始まるお話です。ディズニー映画の華やかな感じはあまりありません。美しい娘のラプンツェルが魔女に髪の毛を切られて荒野に放り出され、そこで双子を出産したり、王子の目が見えなくなったりします。
最後はハッピーエンドです。
『フリーダーとカーターリースヒェン』
常識人な夫とぼんやりした奥さんのお話。夫の方が始終奥さんに振り回されっぱなしです。戸締まりをしてこいと夫に言われ、「わかった、戸が大事なのね!!」と迷わず家の戸を外して持って行くカーターリースヒェン、やばいです。
『三本の金の毛のある悪魔』
お姫様と結婚するため、ある若者が悪魔の金の毛を取りに行くお話です。この若者すごい賢い。ラストの皮肉っぽいオチが好き。
『漁師とおかみさん』
一言で表すと、人間の欲には際限がない、というお話です。誰もが全知全能になりたいと思っているわけでもないでしょうが。
『白ヘビ』
白ヘビを食べたことで動物の言葉が分かるようになった若者のお話です。動物たちの手助けで試練を乗り越え、お姫様と結婚しました。
『ツグミひげの王さま』
父王の命で物貰いの楽師と結婚させられた、うぬぼれ屋のお姫様。その楽師が実は立派な王様だった、というお話です。高慢なお姫様が惨めな暮らしで心折られ、しかも貧乏楽師と思っていた夫はかつて自分が袖にした王様だったというシチュエーション、こういっては何ですが滅茶苦茶性癖に刺さります。
『鉄のストーブ』
鉄のストーブ(中身は王子)ととあるお姫様のお話です。わがままな箱入り娘かと思いきやどんどん勇ましくなっていくお姫様、愛する人のためとはいえ、三本の針でガラスの山を登っていくのには驚きました。すごいクライミング技術です。
『錘と梭とぬい針』
働き者の娘が、王子様の花嫁になるお話。ちなみに梭はシャトルのことらしいですね。
『六人の家来』
とある王子が、美しいお姫様と結婚するために六人の家来と協力して魔女の試練を突破するお話です。家来たちの個性が強め。
以上、全部で二十五編です。
最後の解説では、それぞれのお話の元となった各地の伝承や、時代背景、暗喩の解説などが簡単に纏められています。
『ひょろひょろ足のガタガタこぞう』のこびとの本名は原文では「ルンペルシュティルツヘン」だそうです。それから『フリーダーとカーターリースヒェン』はラストがここでは一部割愛されているとか。
私が上巻で一番好きなお話は『漁師とおかみさん』ですね。シンプルでやや教訓的。
下巻の方も読み直したいと思います。
それでは今日はこの辺で。