【再読】 ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』脇明子訳 岩波少年文庫
本日もアリス。
こちらは続編の『鏡の国のアリス』になります。作中時代は前作から半年後です。
今作のモチーフは「チェス」。アリスは白のポーンからスタートします。
魅力的なキャラクターが多数登場するのは前作と同様です。
それでは早速、章ごとの感想を書いていきたいと思います。
以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。
1.『鏡のなかのおうち』。アリスが鏡を通り抜けるシーンの挿絵二枚が好きです。時計と花瓶(?)のニヤニヤ笑いが良い。この鏡の国に行く場面、子供の頃はよく真似していました。鏡面を通り抜けられるってロマンがありますよね。同じ理由で、映画『ネバーエンディング・ストーリー』の鏡の門のシーンとかも好きでした。
ちょこちょこ歩き回っているチェスの駒たちも可愛い。
ジャバーウォックは相変わらず不気味でした。チョッキ着てるのに全然可愛くない。暗黒の神話生物みたいな造形してます。怖。
2.『生きている花園』。お喋りで姦しいお花たちは、見栄えは良いですが皆かなりの毒舌です。
その後に登場する赤の女王は普通に良い人です。昔から大好き。会話はあまり通じませんが、少なくとも前作のハートの女王と比べたらマシな方かと。この世界のルール上では常識人の部類なんじゃないでしょうか。
走って喉がカラカラの状態で乾いたビスケットはキツい。下手したら窒息しそうです。
3.『鏡の国の虫たち』。汽車に乗るアリス、からの不思議昆虫図鑑。木馬バエのデザインはセンスあると思います。
話し相手だった蚊は意外と親切でまともでしたし、アリスはもう少し優しい対応をしてあげるべきでした。子鹿は可愛い。
4.『トゥイードルダムとトゥイードルディー』。有名な双子の回です。「セイウチと大工」の詩は少し長いですが、物語性があって面白い。
赤の王様の夢は何となく象徴的。
5.『毛糸と水』。白の女王様は多分滅茶苦茶良い人です。優しそう。アリスにこの世界のルールをざっくりと解説してくれます。鏡の国というだけあって、いくつかの法則が反対になっているんですよね。ただ、それを知ったところでこの世界に順応できるかというと、それは流石に難しそうですが。
その後の、羊のお店とボート漕ぎは特に好きな場面の一つです。絵になります。
6.『ハンプティ・ダンプティ』。表紙の場面。ダムとディー同様、マザー・グースに登場することで有名な卵さん。物凄く尊大です。そして気難しい。
7.『ライオンとユニコーン』。こちらもマザー・グースから。理由は分からないのですが、初めて読んだ時、配ってから切るプラムケーキにツボった記憶があります。何がそんなに面白かったんでしょう、小さい頃の私。
この章で登場するハーネルとボーシャは、前作の三月ウサギと帽子屋本人で良いんでしたっけ?
帽子屋はいっつもお茶飲んでますね。
8.『「それがしみずから考案せしもの」』。ここで登場する白の騎士は、作者の自己投影とも言われているだけあって中々に魅力的で愛らしいキャラクターです。不器用で素っ頓狂で優しい、愉快な人物でした。「タラの目」はちょっと長かったですけど。
9.「アリス女王」。歩兵だったアリスがついに女王に即位しました。前半部分では、赤と白の女王に挟まれてひたすらいじめられています。この三人の問答は面白いですが、理不尽すぎて流石にアリスが少し可哀想。この世界の法則と常識は滅茶苦茶すぎます。
アリス女王を迎える際の「ばんざい三唱 かける三十!」のコーラスは好きな部分です。口に出して言いたくなるフレーズです。その後の場面での、お辞儀する骨つき肉もツボ。
ラストで、パーティーが大混乱の中で幕を下ろす様子は、「夢の終わり」感というか、「あ、目が覚めるな」という覚醒直前のあの感覚を上手く演出している場面だと思います。
10.「ゆすぶって」、11.「目をさますと」。
ちょっとキョトンとした表情のキティが可愛いです。
12.「どっちの夢かしら?」。現実世界に戻って来たアリス。ネコたちを前に、夢の内容を自己分析している姿が印象的でした。
本編語の解説では、作品が書かれた当時のキャロルとアリス・リドル(アリスのモデルになった少女)の関係性や、時代背景などが説明されています。こちらも興味深かったです。
白の騎士の顔が、テニエル氏の自画像だというおまけ情報もあったり。
小さい頃は前作よりもこちらの方が好きだった記憶があります。今はどちらも同じくらい好きですが。
前作同様、何度読んでも楽しめる作品です。
それでは今日はこの辺で。