【再読】 ウィリアム・シェイクスピア シェイクスピア全集『夏の夜の夢』小田島雄志訳 白水Uブックス
今日も暑いですね。世間ではそろそろ夏休みの時期でしょうか。
本日はこちらの作品を再読しました。シェイクスピアの『夏の夜の夢』。
シェイクスピアは悲劇や史劇よりも喜劇の方が好きです。実際の舞台演劇では悲劇を観ることが多いですが。ちなみに、訳は断然小田島先生派です。
こちらは喜劇の中でも特に有名なものの一つですね。
シェイクスピア作品を全く読んだことのない私の妹は、『ガラスの仮面』でやっていたやつ、という認識をしていました。あちらでは職人パートが結構カットされていますが、その他は原作通りだったはずです。どちらも未読の方は、まず『ガラスの仮面』から入ってみるのも良いかもしれません。
以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。
ストーリーをざっくり纏めると、人間と妖精、それぞれの抱える問題が、色々あって一晩で解決するお話です。
ストーリーの中心となるのは四人の男女です。
ライサンダー、ディミートリアスという二人の若者と、ハーミア、ヘレナという二人の乙女。
両想いのハーミアとライサンダー、ハーミアを恋するディミートリアス、ディミートリアスを慕うヘレナ、という面倒くさい四角関係です。
ハーミアの正式な婚約者はディミートリアスの方なので、彼女は嫌でもライサンダーと別れてディミートリアスと結婚するしかありません。拒めば死刑か修道院送りです。アテネの法律は厳しいので。
まあ、なんやかんやあって、最終的にはハーミアとライサンダー、ディミートリアスとヘレナの組み合わせで結婚できました。
この四人の他には、不仲なオーベロン(妖精の王)とタイテーニア(妖精の女王)、いたずら妖精のパック、劇の稽古をする町の人々などが登場します。
オーべロンとタイテーニアの嫌味の応酬が結構好きです。会った瞬間からもう喧嘩腰。今回のことに限らず、こういう夫婦喧嘩をちょくちょくしているんだろうな、という確信があります。
この二人も、最終的には仲直りしました。
シーシュースとヒポリタ、ハーミアの父のイージーアスは最初と最後くらいしか出て来ませんが、結構重要な立ち位置のキャラクターだと思います。特にシーシュース。終始名君っぽい雰囲気を醸し出していました。
物語を動かしているのは主にオーべロンとパックですね。道化のパックは小生意気で、軽快な台詞回しが特徴。『ガラスの仮面』でマヤが演じていました。非常に魅力的なキャラクターです。ロビン・グッドフェローよりパックという呼び方のほうがやはりしっくり来ます。
物語が面白くなるのは、男二人が花の魔力でヘレナに惚れてしまうところからでしょう。
シーンとして好きなのは、ハーミアとヘレナの女同士の罵り合いです。ハーミアの口汚さときたら。ハーミアは恋人の裏切りではなくヘレナに対して激怒するんですよね。
お淑やかさをかなぐり捨ててヘレナを罵るハーミア。「この爪はあなたの目に届くわよ」って、暗に目を潰してやると言っているのでは?怖いです。ヘレナの方も、ハーミアが背の低さを気にしているのを知っていて、小さいだの低いだのと繰り返すあたり、なかなか性格が悪い。この二人、問題が解決した後もしばらくはギスギスしたんじゃないでしょうか。
第五幕ラストのオーべロンとタイテーニアの歌、締めのパックの台詞も好きです。見事なハッピーエンド。大団円。綺麗な終わり方だと思います。最後のは、言うのがパックだからこそ許されるセリフですね。
何度読んでも面白い作品です。シェイクスピアの喜劇の中でもとりわけ好きな作品です。
余談ですが、職人たちの名前は何度読んでも覚えられません。ロバ頭のボトムくらいしか記憶に残らないんですよね。なぜか。
それでは今日はこの辺で。