流動資産:貸倒引当金
1:内容と範囲
貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)とは、売掛金などの金銭債権の貸し倒れに備え、期末にその取立不能見込み額を計上するものです。
売掛金、受取手形、貸付金などの債権は、必ずしも全額が回収可能とは限りません。そこで、決算時にこれらの債権を評価し、取立不能額を引当金計上して当期の費用として処理します。
貸倒引当金は税法で繰り入れ限度額が決められていることから、実務上、多くの会社がコレに従っています。しかし、税法の繰入額を上回る取立不能見込み額が実際にある場合には、税法規定とは無関係に必要な額を設定しなければなりません。
2:税務上の取り扱い
税法では貸倒引当金の繰り入れを個別評価によるものと一括評価によるものとに区別し、それぞれに繰り入れ限度額を定めています。
【個別評価】
特定の事実の発生によって取立不能の見込みが高い債権に対し、その損失見込み額の繰り入れを認めるものです。たとえば、債務超過の状態が相当期間継続し事業好転の見通しがない場合など、実務的に債権の一部が取立不能と認められる場合には、その金額を繰り入れることが出来ます。
また、形式基準によるものとして、銀行取引停止、破産、和議、会社更生法などの対象となった取引先に対する債権については、その50%の繰り入れが認められます。
【一括評価】
経営に重大な問題の生じていない取引先に対する債権(一般債権)については、コレを一括し、次の計算により求めた金額を繰り入れ限度額とします。
期末一般債権等の帳簿価額の合計額×貸し倒れ実績率=繰り入れ限度額
中小法人については貸し倒れ実績率に変えて、1~0.3%の法定繰り入れ率を選択適用することが出来ます。なお、貸倒引当金の設定対象となる債権からは、その債務者から受け入れた金額があるために実質的に貸し金と認められない金額などを控除します。
3:貸倒引当金の取り崩し
貸倒引当金の繰入額(税法の繰入限度額内)はその事業年度の損金に参入され、その金額が良く事業年度において益金に算入されます。従って、決算整理においては、洗替法により繰り戻し・繰り入れを行うのが原則です。
4:表示
貸倒引当金は受取手形、売掛金、貸付金などに対する評価勘定であるので、ほかの引当金のように負債の部に表示するのでなく、資産の部に控除項目として表示します。
具体的には、設定対象となった債権の科目ごとに控除する方法(科目別間接控除法)が原則ですが、2つ以上の科目について一括して記載する方法(一括間接控除法)、債権について貸倒引当金控除後の残高を記載し、貸倒引当金の金額を注記する方法(直接控除注記法)も認められています。なお、この表示の仕方は減価償却累計額と同様です。
5:勘定処理の事例
①決算委につき当期の貸倒引当金2,000,000円を設定する。なお、貸倒引当金残高は1,800,000円である。
貸倒引当金 1,800,000/貸倒引当金戻入益 1,800,000
貸倒引当金繰入額 2,000,000/貸倒引当金 2,000,000
②A社に対する売掛金1,000,000円について個別評価による貸倒引当金500,000円を設定していたところ、貸倒となった。
貸倒引当金 500,000/売掛金 1,000,000
貸倒損失 500,000/
-かっぱ-
流動資産:仮払金
1:内容と範囲
仮払金は、現金や小亜切手などによる金銭の支出を行ったが、相手勘定が不明な場合、または相手勘定は判明しているが最終的な金額が確定していない場合に、その支出を一時的に処理しておくための勘定です。概算払いした仮払金は、実際の支出の内容や金額が確定したら、本来の勘定科目に振り替えられます。
たとえば、従業員が出張する際、曽於経費を概算払いして仮払金勘定で処理しておき、出張を終えた段階で清算し、旅費交通費などの本来の勘定に振り替えます。
2:表示
仮払金は速やかに正規の勘定に振り返ることが望ましいのですが、決算時まで未清算のまま残ったものが貸借対照表の流動資産の部に「仮払金」と表示されます。
3:実務のポイント
仮払金は使途不明金の温床となりやすい注意すべき勘定です。経理担当者は、日常の事務において仮払金の残高に注意し不正な支出がなされないよう監視するとともに、仮払いから清算までのシステムを整備して従業員に通知することが大切です。
4:勘定処理の実例
①従業員が出張する際、旅費の概算払いとして150,000円を現金で支払った。
②上記の従業員が出張から戻り、次のように精算した。
旅費交通費125,000円 交際費20,000円 残金5,000円
→
①仮払金 150,000/現金 150,000
②旅費交通費 125,000/ 仮払金150,000
交際費 20,000
現金 5,000
-かっぱ-
流動資産:未収入金
1:内容と範囲
未収入金とは、本来の営業取引以外の取引における代価の未収額、および本来の営業取引における代価の未収額で売掛金以外のものをいい、未集金とも言います。本来の営業取引意義の取引には、固定資産や有価証券などの売却のほか、金銭貸付や不動産賃貸といった役務の提供も含まれます。ただし、このような継続的な役務の提供にかかる未集金のうち、支払請求日が未到達のものは未収収益と区別されます。
2:表示
未収入金は、賃借対照表の流動資産の部に「未収入金」として表示します。
3:勘定処理の事例
ex)帳簿価額8,000,000円の土地を1,000万円で売却し、代金の半額を預金小切手で受領し、残金は良く月末に受け取ることにした。
現金 5,000,000/土地 8,000,000
未収入金 5,000,000/固定資産売却益 2,000,000
-かっぱ-