マンガ・コース講師 -5ページ目

「キャラ」から「キャラクター」へ

●マンガもイラストも複数の先生方が作画を教えていきますから

ぼくは「人物」表現を中心に課題を出しています。

作画経験が非常に浅い生徒たちなので、まず自画像あたりから

自由に描くというのは、他の講師さんの時間でやっていますので

「キャラクター・デザイン」として、シナリオに登場した人物をまず

描いてもらう。


★これをフリーで描いてもらうと、まず殆どの学生が顔を大きく

描くんですね。バストまでの一種の肖像画です。

マンガ作品もフリーで描かせてみると、殆どがこの状態です。

あとはクローズアップになっています。これでは「物語」を豊かに

表現出来ません。


★そこで「全身ポーズ」でまず必ず描くように指導します。この

全身を、さまざまな行動(アクション)を付けて何通りも描ける

ようになって貰いたい。

 そして、そのアクションにはその人物の「感情」が表現出来る

ように、表情にも変化を付けていく。


★イラスト・コースでは、一人の人物の1日の着衣の変化などが

表現されるようにと、課題に近いかたちで描いてもらう。

 こんなとき「一日・日常」というシナリオ課題を、5~8ページで

描くわけです。その着衣にだって、「季節」によっても変化がある。

 これを欧米人という課題にも拡げて、作画トレーニングをして

みるのもいいでしょう。マンガもイラストも、まずは「キャラ」を描く。

とりあえずはパターン化したものを描いていく。

 しかし、作品という視点からみると、これだけでは何かが不足し

ています。そう、人物の「性格表現」です。これを考え、タイプを

探っていく。それではじめて「キャラクター」に成長していくわけ

ですね。


●最近、マンガ研究の分野で「キャラ」「キャラクター」の違いを

認識して、マンガを「読む」という問題が浮上しています。

『テヅカイズデッド』(伊藤剛・NTT出版)が、その発火点になり

ました。「キャラ」は「キャラクター」の省略語ではないという、

新しい考え方です。

4年制大学でのマンガ論・マンガ創作

京都精華大学では日本初の「マンガ学部」を設定し

本格的にマンガ創作・マンガ編集&プロデュース・アニメーション等を

多くの実力派作家を教授などに迎え、相当充実した本格的なマンガ

創作や編集論を展開しています。

入学倍率もかなり高い。


★ぼくは、 文学部系で「マンガ論」「マンガ史」を教えています。

半期15コマ内での講義で、毎週かあるいは隔週2コマで進め、

後期に「マンガ創作」として、論から少しはなれてシナリオ→ネーム

までのコマ割り作品を実作し、それをレポート採点するという

ケースがあります。


 絵は描かなくとも良いのです。ネームを書き、コマに割って

場面を展開していく。それを体験することによって、マンガを

「解読」する際に、作品をより深く分析できるように~という意図

から、実施しました。

 マンガ読みの女生徒から好評で、数年絶やさずに続けて

います。


●このときに<課題>としているのが、「日常・一日」です。

マンガ描き~というと、すぐファンタジーやラブストーリーを

描きたがる。

 でも、平凡な人間の1日、ロボットの1日、魔術師が起きてから

洗面し食事し…という彼らの日常がまず描けないことには、物語

を展開し絵にしていくことは出来ません。

 描けたとしても、上滑りしたリアリティのない平凡な場面の連続

でしかない。ですから、まずは大きな物語を捨て、小さな細部を

8ページていどの短篇に描いてもらっています。


★普段、マンガ・コースの学生のように、作品描きをやっていない

生徒が、コースの作品より深い短篇を提出してくることが多いの

です。この経験から、イラスト・コースの1年生に、この課題で

描いてもらっています。

 女生徒がほとんどのコースを担当していますが、彼女たちは

物語作りが苦手でマンガを避けた~という傾向にあります。

ですから、「1日」テーマがうってつけなのです。

専門学校のマンガ・コースでは

 ●4月から、新1年生を教えるわけですが、ぼくの担当は「漫画の知識」と「作品制作」が

中心です。知識は、マンアガ史とマンガ記号論、著作権、ネームのマナーなどなど

徐々に深く教えてゆきます。

 作画については、絵画の先生、ストーリー系、背景系、ヒトコマ・四lコマ系と

それぞれの担当講師がいますので、印刷の知識や編集の実際などについての

「情報」を教えていくようにしています。


★作品制作では、ですから物語構成とネームが中心です。

 しかし、1年の初めは、400字で文章を書いてもらうことからスタートです。

たとえば、誰でも書けるように『遅刻』という課題で、このことについての

体験談、自分の考え方、感じていたこと、などを5~6枚内で書いてもらう。

 とにかく、専門学校の場合、かなり「文章力」が低いのが実情です。文も文字も

正確に書けないのでは、優れたネームが書けるはずがないからです。


●この原稿には、徹底した「赤」校正をして、返却します。

漢字使用、文字のいい加減な書き方、誤字などは当然です。

 これによって「自分がいままで、いかにいい加減な」文章を書いていたかを

認識してもらう。そして、次も文字です。この『遅刻』をヒントと土台にして、

マンガ用原作シナリオを書いてもらう。そのためのシナリオの書き方は、

「漫画の知識」の時間を利用して、教えています。


ネーム・コマ割りに進むのは、この後になるわけですね。

 そして学生には「マンガの読者」だった自分を「マンガを描く」読者として

マンガを読む!という意識改革をアピールしていきます。しかし、これは

言うは易く~というやつで、彼女達彼らは、簡単には、意識を転換できない。

「マンガの勉強なんだから、大学の勉強より気楽だ」位の気持ちです。

 実はプロになって10年間以上、仕事が途切れず、自分を進化させる~

ということは「東大へ入るよりも困難なことだ」!!が現実でしょう。


●自分を真剣に鍛えられる学生は、非常に少ないのは、

昨今どこの学校でも同じことかとも思いますが…。

 でも、これは厳然とした事実です。ぼくはウソを告げ

たくはありません。