新聞連載!選ばれる会社になる知的資産経営(9) | 中小企業の知的資産経営と災害対策・BCP

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経営計画と知的資産

 

 知的資産経営報告書を作成する際には、本稿第4回で述べたクロスSWOT(スウォット)分析を行なう。これは、外部環境の機会・脅威、内部環境の強み(知的資産)・弱みから、今後の戦略方針を導き出す作業である。機会×強みからは成長するためになすべきこと、機会×弱みからは取組むべき課題といった具合であるが、これはすなわち経営計画における基本方針ということができる。

 

経営計画とはなにか

 経営計画とは期間の設定によって種類があるが例えば中期経営計画の場合、企業の3~5年くらい先のあるべき姿を定め、現状とのギャップを認識し近づくための戦略と計画を定めることである。当然そこには売上や利益、市場シェアなどの数値目標が入る。企業が持続的に成長するためには経営計画に基づいて計画的に経営行動を実行していくべきであることは言うまでもない。これは金融機関の信頼にも繋がる。

 ところが、おそらく大半の中小企業は経営計画とよべるものを持っていないであろう。それどころか年度の予算管理すら不十分な会社が多いのではないか。既存荷主の動向や意思決定に経営が大きく影響を受けるトラック運送業の場合は特に、「戦略や計画を作ってもその通りにはいかない」とあきらめてしまいやすいのではないか。しかし普通に仕事をこなしていけば成長できた時代はとうに過ぎている。差別化が難しく厳しい競争環境の中にいるからこそ、自社の強みを知り戦略をしっかりと持って顧客や競合に積極的に対応していくことが必要なのである。

 

報告書から経営計画へ

 本稿第5回で述べた知的資産経営報告書の内容例に、「知的資産経営の今後の展開」の章があった。知的資産を活かして事業を今後どのように展開していくかを述べるものだ。ここにいたるには、SWOT分析で市場や顧客、競合、社会環境、自社の知的資産、弱みなどを分析している。経営計画策定に必要な準備作業はほぼ済んでいるので、これを起点にして計画を具体化していくと良い。自社の過去の業績、財務指標などを確認し、今後の基本方針、実行施策、目標値、責任者、スケジュールなどを定めていくことになる。

 このとき注意していただきたいのは目標値である。例えばある荷主内の自社のシェアを上げるという目標を立てた場合、その目標値は到達シェア値かその時の売上高になる。しかし「売上高◯◯円を目標にみんなで頑張ろう」では計画ではない。そのために何をいつ誰がやるかの施策を定める必要がある。その際に設定すべきものが、KPI(重要業績評価指標)である。これは最終目標に到達するために中間で管理すべき指標である。最終目標を達成するためには中間指標が一定の数字に達していなければならないということだ。

 

知的資産を活かした計画

 さて、知的資産経営とは知的資産を活かした経営のことであるから、経営計画においても自社の強みを活かした実行施策が中心になるはずである。この場合施策のKPIは知的資産の評価指標と一致する。

 例えば事故をおこさないことを非常に重視する荷主がいて、自社の強みは事故防止の社内制度だとしたら、施策は安全管理の強化や荷扱いの教育の強化が考えられる。KPIは教育回数や参加率、実際の事故率などである。これらの値を高めていき荷主に報告して信頼を高めてシェアを上げるというような戦略が考えられる。言い換えると、事故防止の社内制度という知的資産を教育回数などのKPIで評価しながら強化していくことになる。すなわち知的資産の強化が業績に繋がるということだ。

 

 知的資産経営とは、知的資産経営報告書を作成して活用することにとどまらず、知的資産を活かした経営を行なうということであり、それは当然に経営計画を立ててPDCAサイクルでマネジメントしていくことである。スタートはSWOT分析だ。小さな会社でも経営計画はできるのである。