無名塾公演「炎の人~ゴッホ小伝」は
凄い凄い 壮絶な舞台だった
ゴッホそのものになって
仲代さんはしゃべり 動き回る
精神を病み 狂気と正気の狭間を
揺れ動く ゴッホ
時に 大声を張り上げ
時に 刃物を振りかざし
それでも ひたすら描き続けるゴッホ
いつの間にか そこにいるのは
ゴッホそのものだった
ゴッホの魂が 仲代さんに
降りているかのようだった
貧困と孤独に
生涯を支配され
今や50億円もの値がつくゴッホ作品は
ゴッホの生前には
たった1枚しか 売れなかった
ラストシーン
キャスト全員が舞台に立ち
声を揃えて メッセージを投げかける
「生前のゴッホの作品を認めなかった
オランダや フランスの人々を
私はほとんど憎む」
怒りを含んだその言葉のやさしさに
涙が込み上げた
そうだ この舞台は
純粋で 心弱き人たちへの
愛にあふれたメッセージを
ゴッホに託して 届けてくれたのだ
そう思ったら さらに
涙は止まらなくなった
でも あまりにも間が悪かった
カーテンコールと同時に
私は役者さんに プレゼントを渡す
4人のうちの1人だった
仕方なく 恥ずかしい顔のまま
舞台下に 向かう
私がプレゼントを渡したのは
娼婦の役をした女優さん
「ありがとうございました
泣きました」
と 照れながら渡した
翌朝 バスで次の公演地へと
旅立つ役者さんたちを見送る
美男美女揃いと 噂に高い無名塾メンバー
どの人も容姿に恵まれ
個性が輝いている
一番最後に 仲代達矢氏登場
さすがにすばらしい存在感を放つ人
だが 舞台の上とは違い
その人はやはり 年齢相応に見えた
鍛えてはいても 体がつらい日もあるだろう
そんな素振りも見せず
命の限り 人々に
演劇のすばらしさを 魅せてくれようとしている
渾身の力を出し切って
観せてくれたゴッホ
私は一生 忘れないだろう
バスに乗られる前の仲代達矢さん
握手 次は私の番・・・
と思ったら 前の人で終了
9年経っても それだけが心残り