モミジの葉が 雨に打たれて散っていた
まわりの木々や 苔の上に
何かのメッセージを含んでいるかのように
静かに身を置いている葉たち
木から離れた瞬間に
完全に命は絶たれた 1枚の葉
その葉は小さいけれど
燃えるように真っ赤だった

思えば この1枚の葉にも
生涯があったのだ
モミジの芽吹きは いつから始まったのか・・・
1年前 すっかり葉を落としたモミジに
もはや新芽が出ているのを
私は見つけた
その後の長く厳しい 冬の風雪に耐え
春 やっと新芽から青葉が育ち
さわやかな 目にしみる緑を広げてくれた
モミジの下に立つと
まぶしい木漏れ日が射し込んだ
それがモミジの青春の季節 (とき)
やがて夏が来て 若葉のそばには
まるでヘリコプターのような
奇妙な羽が ぶら下がった
あれはきっと モミジの種だったのだろう

秋 モミジは他のどんな葉よりも
赤く情熱的に燃える
今 モミジの葉の生涯は
クライマックスを迎えている
そして モミジの1枚1枚の葉は
満足して 木に別れを告げて散っていく
そんなふうに生きる人がいる
何かに燃えて 人生を捧げて
熱く生きる人がいる
きっと悔いは残らないだろう
モミジも そんな生き方をする人も
真っ赤なモミジと そんな話をした
