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空に限りなく近いあの場所に
立ったのは いったいいつの事だっただろう
そこは まさに天空の城
俗世とは 切り離された空間だった
そこへの道のりは
確かに長かった
登っても 登っても
石段混じりの 土の道は続く
まるで空への坂道のようだ
なぜこんなにも 高い場所に
城を築かねばならなかったのか
石垣の石を 運び上げるのも
大変な作業だった事だろう
家老や武士は 毎日の出仕も
ひと苦労だったに違いない

突然 視界が開けた
そこには 草原が広がるばかり
城は何百年も前に
燃え盛る炎に 焼かれた
草が 悲しいほど
目に沁みた
私には そこに城が見えた
雲海の上に立つ 巨大な竹田城
武士道が息づく 厳粛な世界
城に火の手が上がった時
大勢の武士たちが 城のあるじと共に
昇魂していったこの地
くだってから もう一度
遥かな高みを見上げると
鎧兜を身に着けた武士たちが
じっと こちらを見下ろしている姿があった
魂となった彼らは 日本の行く末を
天空の城から 見下ろしているのだった
憂い 嘆きながらも
一筋の希望は捨てずに
私の一瞬見た幻
それは 秋の陽射しが見せた
悪戯だったのかもしれない

10年前に、竹田城跡を訪れた時の印象を書いてみました。