春からずっと 田んぼの中の小道を歩いて来た
田んぼの移り変わりを見て来た
苗から稲へと成長した田んぼは今
黄金の時 実りの時を迎え
稲穂を垂らして収穫の時を待っている

春 浅い海のように広がる水田に
わずか10cmほどの小さな苗が植えつけられた
田の中にはおびただしいほどのタニシが生息していた
オタマジャクシもそこでカエルに成長した
そして苗もグングン成長した
緑の風が心地良く吹き渡っていた



稲に穂が出る頃に
田の脇を歩くと
たくさんのイナゴが飛び交った
無人のヘリコプターが田の上を飛び回り
空中から農薬を散布しているのを見たのも
その頃だった
もうすぐ大きなコンバインが
田にやって来て
あっという間に稲を刈り取る時が来る
それでやっと米が出来る
1年をかけて苦労して米を作った農家に
やっと米の収入が入る
稲刈りは田んぼの秋祭りだ

私たちの食を支えてくれる米
こんなふうに育って そして刈り入れられる
稲の一生の物語を
田んぼの中の道を歩き続けて しみじみ感じた
もうすぐ私は
稲が1本残らず刈り取られて
急に淋しくなった風景の中を
赤トンボと共に 歩くことになるだろう