人間の領域と 野生動物の領域
その境界を越えて 田畑を荒らすイノシシ
そんなイノシシは 人間にとって迷惑千万
捕えられ 鋭い刃物で眉間を突かれ
命を絶たれ 人間の食物となる
それが山深い地の掟だった
昨日 運悪く罠にかかったイノシシは
何匹かの瓜坊を連れた母さんイノシシ
子供たちは 母親が殺されるのを
遠巻きに見て 散り散りに逃げて行ったという
そして イノシシは人間の手にかかった
心臓と肝臓は その日のうちに食卓に上がった
次の日 肉を解体する
手際良くイノシシの巨体に 包丁を入れる2人の山男
骨と肉とを巧みに切り分ける
情けも容赦もない
「かわいそう」などという言葉は
虚しく 不要だった
イノシシは既に 命を絶たれ
聖なる食物として 身を捧げてくれたのだから
「ありがとう」その言葉しか かける言葉はない
ここでは人間と 野生動物は
そんなふうに 折り合いをつけて生きている