三毛のマリコ
離婚後、何かやってみたらどうかとカウンセラーに言われ、地域猫のボランティアを始めました。そこで出会った猫たちの猫生に一瞬でも関われたことは私にとってかけがえのないものになっています。自身の覚書のようなものとして少し記していこうと思います。🐈マリコは、とある公園に暮らす10歳以上のお婆ちゃん猫で、腰のあたりにハートの模様のある綺麗な三毛でした。何度か出産の経験もあったようですが、交通事故や病気ですべての子どもをすでに亡くしてしまったらしいと聞きました。マリコはご飯を食べてはくれても、決して触らせてくれない猫でした。彼女の子ども達もまた決して人が触れることのできない猫だったようです。外で暮らすマリコなりの自衛の策だったのだと思います。それを子ども達にもきちんと教え込んでいたのでしょう。まだ寒さが残る初春にマリコはいつもよく寝床にしていた茂みの前で倒れていました。公園の近所にある会社の方からボランティア仲間に連絡が入り、なんとか公共の回収を免れ、私たちの手でおみおくりすることができました。触らせてくれなかったマリコを最後に思う存分撫でさせてもらいました。ビロードのような手触りの毛並みは外で長年暮らしていたと思えないほどなめらかで艶やかでした。マリコはあの日、おそらく寝床から這い出て、最後の力を振り絞り、人が入ってこれないような場所でひっそりと最期を迎えるつもりだったのでしょう。彼女としては不本意だったかもしれませんが、最後に会えたことを感謝しています。前日の彼女は色々美味しそうなごはんを並べても、スープすら口にしませんでした。でも表情は凛としていました。自分の最期を悟っていて覚悟は決まっていたのでしょう。マリコの意志の強そうな瞳は、いつも生きる勇気をくれるような眼差しでした。お疲れ様、マリコ。虹の橋の向こうで、やっと子どもたちとずっと一緒に暮らせるね。