なでしこジャパンがオリンピック予選で敗退してから、既に時間が経っているが、ここで改めて、なでしこジャパンが敗退した理由を検証してみようと思う。

まず、ほとんどの人が指摘していることだが、世代交代が上手くいかなかった。いや、もっと言えば、監督に世代交代をする気がなかったと言ったほうが良いかもしれない。

中には「有力な若手が出てこなかったのが原因」という論調があったが、まったく当てはまらない。もし、それが本当であれば、高倉新監督の新生なでしこがアメリカ代表に善戦することなどできなかったはずだからだ。もっと言えば、新生なでしこに大儀見がいなければ勝っていたかもしれなかった。

確かに、新生なでしこはDFラインが定まっていないため、失点も多かった。しかし、攻撃面では、アメリカから1試合だけで3点をもぎ取った。失点ばかりを恐れ、ろくに点を取れなかった前代表と比べれば、大きな違いである。

それはさておき、なぜ世代交代ができなかったかといえば、「新しく招集した選手をちょっと出して終わり」という、佐々木の意味不明な選手起用方針が原因だ。また、あまり調子の芳しくない選手や既に落ち目の選手をしつこく起用・招集をつづけたことにも問題がある。

この例に端的にあてはまる選手が、大野・田中明日菜・高瀬・鮫島・丸山・福元だ。大野は往年のスピードに陰りが見え、それは鮫島も同様だった。これらの選手はW杯がピークで、それ以後は選手を入れ替えるべきだった。しかし、ようやく新たなサイドバック(有吉)を起用したのはカナダW杯になってやっと。結果論になるが、ロンドンオリンピックで有吉を正規メンバーとして連れて行っていたら、最後はどうなっていたかわからなかった。

ご存知の通り、有吉をバックアップメンバーとして、正規メンバーに名を連ねたのが丸山桂里奈。そして、丸山は決勝でボールをけらずに相手選手を蹴るという愚行。何のためにこんな奴を連れていったのか、本当に佐々木という人間は見る目がない。こんな人間が監督を退任した後、十文字学園の副学長に就任するなど何のブラックジョークなのか、不思議である。

さらに、田中明日菜、丸山・高瀬は典型的なチームのお荷物。特に、リオ五輪予選で田中明日菜を起用した罪は重い。

なでしこリーグを見ていればわかることだが、実際、ロンドン五輪やカナダW杯では、ベレーザやレッズに有力な若手が出てきていた。にもかかわらず、この2チームの選手には、特定の選手を除き、佐々木は招集することはなかった。

まあ、はっきり言えば、これは世代交代が上手くいかなかったというよりも、佐々木のえこひいきというだけの話なのだ。だから、「なぜ敗退したのか?」と問われれば、監督の贔屓の選手のピークが過ぎたというのが最大の理由だ。コンディションとか波に乗れなかったというのは、大した問題ではなかったのである。

このブログで昨年末のエキサイティングシリーズ「ベレーザ対INAC」のレポート記事を掲載した。その時、「INACは、このまま行くと凋落の一途をたどるだけであり、大改革が必要な時期に来ているだろう」と書いた。

実際、澤、川澄、大野、近賀は、長谷川、籾木、田中美南らの技術・体力に翻弄され、もはやついていくことができなかった。それは、INAC、すなわちなでしこジャパンである。まさに、ここでの予言が、そのまま五輪予選の結果になったといっても過言ではあるまい。
既に優勝は決まってしまったのであるが、現状のベレーザとINACの差はどれほどあるのか、注目の対決だった。

結果はスコアレスドロー。しかし、この記事にあるように、内容的にはINACの完敗だった。

シュート数は20対3。セカンドボールをほぼ全てベレーザに拾われてしまい、引いて守るので精一杯という印象だった。INACが勝てない原因として「気持ちで負けている」とチーム関係者は言う。しかし、気持ち以前にチームとして機能していないように思える。そうであれば、いくら勝ちたい気持ちがあっても勝てるはずがない。

また、澤はチーム不振の原因を一方的に若手に押し付けているように見える。マスコミを通じてチームの内情を批判するのは最悪である。それを指摘したところでチームの状態が上向くはずもない。そもそも、INACの若手が伸び悩んでいるのは、選手だけではなくフロントや監督・コーチの責任でもある。また、ベテラン選手は若手を叱咤するだけでなく、プレーしやすい雰囲気づくりを積極的に進めていく責任もあるはずである。

この辺りが、ベレーザ・岩清水とは決定的に異なる。ベレーザの若手選手で中堅・ベテランに気兼ねしてプレーしにくいと感じる者は一人もいないはずである。岩清水だけでなく、阪口、有吉なども「若手が伸び伸びとプレーしやすいように心がけた」と言っている。もちろん、内心、不満に思うこともあったろうが、彼女らがプレスに対して不満を述べたことなど一回もないはずだ。

一方、INACは監督だけでなく、澤、大野、近賀、川澄などが「若手が、若手が」と口をそろえて批判する。しかも、本人に直接ぶつけるのではなく、その不満をメディアに対して口外する。これでは若手は萎縮するだけで、本来持っているポテンシャルなど十分に発揮できるはずもない。

この試合、HTや試合終了後にベレーザの選手たちが割合、晴れやかな表情を見せていたのに対し、INACの選手たちは終始、苦々しい表情をしていた。この表情の差が、現在の両チームの差なのかなと思った。

選手個人に目を移すと、川澄に少し復活の兆しが見えつつあるように見えた。アメリカから帰ってきてから、何がおかしくなったのか、自慢のスピードと体力が明らかに衰えて見えた。しかし、昨日は近賀と共にスピードに乗ったプレーを随所に見せてくれた。が、やはり、全盛期に比べると、かなりプレーの質に陰りが見える。

その他は大体ダメである。この試合、両チームを通じて際立ってよかったのはベレーザの清水だが、INACの両サイドバックは清水の半分も動けていない。正直、ボールの扱い方もベレーザの長谷川、田中美南などの若手の方がうまい。

その意味でも、INACは、このまま行くと凋落の一途をたどるだけであり、大改革が必要な時期に来ているだろう。
前回の更新からかなり間が空いてしまった。

既にW杯が終わって時間が経っているので、今年のなでしこリーグについて話をしたいと思う。

今年のレギュラーシリーズ、エキサイティングシリーズの優勝は日テレ・ベレーザだった。
ちょうど時間があったので、駒沢オリンピックスタジアムまで足を運び、優勝の瞬間を見てきた。



レギュラーシリーズで2引き分けと、あまり相性の良くないジェフが相手だったが、試合内容は完勝だった。守るべきところは集中して守り、主導権を握ると、それを終始相手に渡さない横綱相撲。

強くなったなという印象だった。

レギュラーシリーズでは新潟に1敗しただけで、負けがほとんどなかった。得点41がリーグトップなら、失点9はリーグ最少。最強の攻撃力と守備力を備えているのだから、これで優勝しないほうがおかしい。しかも賞賛されるべきは、若手の成長を促しながらのチーム作りを成し遂げて優勝した点にある。

この記事にあるように、キャプテンの岩清水は「若手の成長を待つ」という方針が時間をかけて実を結んだ。いや、岩清水だけではなく、前の監督である野田、寺谷やスタッフが強いベレーザを取り戻すべく頑張った結果だろうと思う。

野田が監督になったころ、ベレーザは壊滅的状況だった。その後、岩渕、永里などが成長してきたものの、この両選手も海外移籍し、チーム作りは振り出しに戻りつつあった。しかし、この時すでに、なでしこカップでINACを破り優勝するなど、復活の片りんは見せてきた。そして、昨年末の皇后杯優勝、今年はリーグ完全制覇だから恐れ入ったというところだ。

ベレーザが優勝した要員は、DFラインがシーズンを通じて、ほとんど変わらなかった点だ。毎回スタメンは同じ選手で固めれられた。清水、岩清水、村松、有吉。テレビで試合を見ていて、「この4人の名前だけはいつも同じだな」と思ったものだ。それが守備の安定を生み、ベレーザ復活の礎となったといってよい。

もちろん若手の成長もある。椛木、長谷川、清水、隅田、中里。メニーナ時代に、全日本女子ユースで京川・仲田・道上を擁する常盤木学園を打ち破った世代だ。無論、素質もある。しかし、その素質を開花させたスタッフのサポートには拍手を送りたい。特に、前監督の寺谷はメニーナのころから彼女らの指導に心血を注いでいたはずである。

そして、ベテランも頑張った。代表の阪口はもちろんだが、個人的には原が良かった。運動量豊富でテクニックもある。彼女が目立たなかった試合はなかったといっても良いのではないか。体は小さいが、体の芯は強く、阪口同様、ベレーザに欠かせない選手である。

そして、忘れてはいけない監督の采配も良かった。監督の
森栄次は星川敬がベレーザを解任された後、チームを建て直し優勝へと導いた。決して大胆というわけではないが、代えるべきところは代えるというメリハリのついた采配だった。また、若い世代の蓄積疲労を気にしていたのか、若手はスタメンに固定しなかった。長谷川、椛木、田中美南にしても、コンディション的には問題なくとも、スタメンではなかった試合もある。豊富な人材を有効に活用して、常にフレッシュな状態にしていたのだろうか。そのおかげで、終盤のINACのような勤続疲労を起こさなかったという見方もできる。優勝インタビューで、「選手は十分そろっているのだから、後はそれを引き出してやるだけでよかった」という彼の言葉は全くの本音であろう。

さて、これから皇后杯があるが、ベレーザの連覇なるか、それともベレーザに土をつけた浦和、新潟を筆頭に、他のチームの巻き返しがあるか注目したいところだ。

なでしこジャパンは残念ながら連覇はならなかった。

まず、決勝戦の内容から見てみたい。

色んな報道で、あれこれ言われているが、私の見た感じでは、そこまで悲観する内容でもなかったと思う。確かに大量失点自体はいただけない。しかし、これはむしろアメリカの奇策がはまったと評するべきだろう。

その奇策とは、もちろん、ゴロによるCKである。

阪口が試合後に語った通り、なでしこのDF陣はアメリカは当然、ハイボールで来るものと思い込んでいた。「セットプレーからのハイボールこそが日本の弱点」と一般には思われており、日本もそれを自覚していたから、その対策に多くの時間を割いていた。

歴史的にも、なでしこジャパンはハイボールの対応に苦労させられてきた。それは、GKとして山根を連れて行ったことでもわかる。GKとしての技術は、山根はなでしこリーグでも下の方である。しかし、佐々木監督が、それでも山根にこだわったところには、「絶対に上だけは抜かれたくない」との強い思いが伺える。

これはもう、一つのコンプレックスと言っても良いかもしれない。

そして、その後の練習や実戦を通じて、ハイボールに対する対処については、一通りの技術を身に付けた。強豪国でも、そうやすやすと、なでしこの守備陣を、単純なハイボール一辺倒で崩すことは難しくなった。そこで、アメリカはセットプレーでグラウンダーのボールを入れることで、なでしこジャパンDFの混乱を誘った。それが見事にはまったというわけだ。

実は、大敗した決勝のアメリカ戦、苦戦した準決勝のイングランド戦は、なでしこジャパンに対し共通したアプローチをしている。

それは岩清水に対する対処である。

イングランドは、熊谷を厳しくチェックし、岩清水にボールを持たせる戦術を徹底した。そして、アメリカは岩清水に対し、グラウンダーのボールで攻める戦術を取った。岩清水は身長163CMと小柄ではあるがヘディング技術は抜群である。逆に、足元のボールに対するチェックは、いまいち甘い。

これは、なでしこリーグの試合を見ていても良く分かる。例えば、ベレーザ対浦和の試合で、マークについている吉良に良くゴールを決められているが、これらのゴールは全てグラウンダーのボールを決められたものである。国内では、それほど大柄な選手がいないので、そもそも岩清水とヘディングで競り合うことを考えること自体がナンセンスであるが、「それでは仕方がない」と相手チームが足元を攻めたボールで、ベレーザは意外に得点されてしまう。このような得点は、あまり海外チームとの試合では、あまり出ていないはずなのだが、アメリカがそこまで研究して戦術を決めたのであれば驚嘆する他ない。

結局、ベンチとしては岩清水をあきらめざるを得ず、澤をボランチに入れ、急遽、阪口をCBにすることになった。

日刊ゲンダイで鈴木某が色々といちゃもんをつけているが、、この判断自体は、別に悪くはない。むしろ、岩清水を交代させなければ、さらなる失点につながった可能性が高い。

問題は2枚目のカードの切り方だ。何故、菅沢を入れたのか。この大会、大儀見・菅沢のコンビは全く息があっていなかった。大儀見は、菅沢がピッチに入った後、「自分のやることが増えた」というくらいだから、我慢してコンビを組ませてもよくない結果につながるのは自明の理だ。しかも、変えたのは大儀見の得点をアシストした川澄である。もう不思議としか言いようがない。

結局、このコンビが有効に機能したシーンは一つもなく、中盤の選手は、むしろ、その後に入った岩渕を盛んに使っていた。そうであるならば、岩渕と同じようにアジリティの高い川澄が残っていたほうが良かった。

菅沢の運動量では、アメリカDF陣は岩渕に張り付いてマークしてしまう。実際、岩渕はきちんとボールを持たせてもらえず、得意のドリブルの効果も半減。更なる追撃にはつながらなくなってしまったのである。

そして、極めつけは後半25分に出した3バックの指示である。この時、ピッチ上の選手も理解できず、キャプテンの宮間に4バックに戻される始末。宮間と佐々木監督の意思疎通が取れなかったのは、何もこの時だけではない。ロンドンオリンピック予選の北朝鮮戦の時、まだかなりの時間が残っているのにも関わらず、佐々木監督に「キープしろ」と言われ、思わず宮間が「マジで」と口ずさんだのがカメラに抜かれていたが、この指示はそれ以上に決定的である。

なでしこのDF陣は3バックなど練習をしていない。しかも、CBは急造の阪口。むちゃくちゃな指示も良いところ。これでDF陣が崩壊しなかったのは、ひとえに阪口の天才によるところが大きい。確かに、大胆な指示が必要な場面はある。しかし、大胆さとヤケッパチは全く違う。練習もしていないシステムをW杯の決勝で出すなど、ヤケッパチ以外の何物でもない。この点でも佐々木監督は相応の非難を免れないだろう。

そして、佐々木監督の最大の罪は、次世代の選手の育成を怠ったことである。この世代交代についての危機感は、大儀見はじめ、すべての選手の共通認識と言ってよい。よく「若い選手が出てこない」と言っている人がいるが、違う。若い選手は出てきているのである。彼女たちに適切な場所を与えてやらない者が、日本の指揮を取っているのである。それが佐々木監督なのだ。

その世代交代については次項で述べることにする。
今日、6月から始まる女子W杯のメンバーが発表になった。
結果的にだが、「これなら連覇狙えるかも」というメンバーになったように思う。

GK
福元美穂(岡山湯郷)
海堀あゆみ(INAC神戸)
山根恵里奈(千葉)

講評:この3人は順当。特に言及するところはない。

DF
近賀ゆかり(INAC神戸)
上尾野辺めぐみ(新潟)
岩清水梓(日テレ)
鮫島彩(INAC神戸)
有吉佐織(日テレ)
北原佳奈(新潟)
川村優理(仙台)
熊谷紗希(リヨン)

講評:この顔触れも順当だろう。一時期、上尾野辺が代表から外れていた時期があったが、彼女のテクニックを考えると、サブには残しておきたい人材だと思っていた。川村の代表入りは当然だろう。CBもSBも両方できるし、調子次第では、岩清水とのコンビで先発もありうるレベルにまでなっている。

MF
澤穂希(INAC神戸)
安藤梢(フランクフルト)
宮間あや(岡山湯郷)
川澄奈穂美(INAC神戸)
阪口夢穂(日テレ)
田中明日菜(INAC神戸)
宇津木瑠美(モンペリエ)
永里亜紗乃(ポツダム)

講評:澤が代表に復帰したが、澤が抜けてからの代表の体たらくを見ると、この選出も至極当然だ。とにかく、澤を外した後の佐々木のチーム作りが下手すぎた。結局、優勝を狙うには、4年前から劣化したにせよ、澤に頼らざるを得ない状況になってしまったことは否定できない。とにかく、日本が勝ち進めるかどうかは、彼女のパフォーマンスにかかっている。

対して、安藤、田中は不要だった。安藤は、パワー・スピードともに全盛期から衰えが激しく、田中は凡ミスを繰り返しすぎ。この2人を選ぶくらいなら、後藤や上辻あたりを入れた方が良かった。まあ、この2人はよほどのことがない限り、本選では出場しないから、大勢には影響しないかもしれないが。その他の選手は順当。永里は良く残れたなあという感じ。ただ、この人は代表で結果を残したし、姉よりサッカーセンスがあるのは間違いないところなので、是非、本大会でも活躍を期待したい。

FW
大野忍(INAC神戸)
大儀見優季(ヴォルフスブルク)
菅澤優衣香(千葉)
岩渕真奈(バイエルン)

講評:まず、丸山がやっと代表から外れてくれた。この点は本当に良かった。これだけで、優勝の確率が30%くらい上がった気がする(苦笑)。また、高瀬がケガで離脱。彼女には悪いが、これも代表に良い方向に出ると思う。高瀬はフィジカルが強いといわれているが、度々指摘している通り、世界レベルでは平均以下であり、スピード・テクニックは代表レベルにも達していない。しかし、なぜか佐々木のお気に入りで、試合には出続ける選手である。以前にも言ったが、テクニックもなく、視野も狭い彼女にボランチを兼任させようなど悪い冗談である。

ただ、大野もいらなかった。大野を選ぶなら、横山か田中美南を残せばよかった。大野も、既に全盛期のスピードはなく、スタミナもないから、なでしこリーグの試合でも、手抜きが多すぎ。これなら他の若手FWを選出した方が見込みがあった。

他の3人は順当だろう。

とにかく、このメンバーはドイツ大会の出がらし以外の何物でもない。が、上手くスタミナが持てば優勝も狙える。この大会が最後になる選手も多いだろう。健闘を期待したいところだ。