私「それで、Sはこれからどうしたい?」
私「ダンナ君のことや、義両親のこと、借金のことは一切考えなくていいとしたら」
S「考えなくていい、なら、………、別れたい!」
私「OK。じゃあまずは、Sの実家に頭下げて戻ろう」
…あからさまにイヤそ~な顔をするS。
当たり前か。
親との関係がイヤで、一緒にいたくないからダンナ君と結婚したところがあるのに
またそこに戻らなければいけないなんて。
S「他の男の所に行くのはダメ?」
私「ダメ」
私「Sが実家に戻るのは、有利に離婚するためだからだよ」
別居は、離婚という目的を達成するための手段であること。
現時点では既婚であること。
他の男の所に行けば、『不貞、有責配偶者』とみなされ、
離婚するのに不利になりかねないこと。
手段をまちがえてはいけないこと。
感情とモノゴトを分けること。
親がキライなままでいい、目的のためにうまく『利用する』こと。
期間限定で女優になれ。
実家に戻ることで、
『ダンナ君の借金グセが、<婚姻関係を継続し難い重大な事由>である』
と、周囲に思わせるのが大事。
実家に戻れば、給料を離婚後の一人暮らし費用として貯められる。
親と仲良くするのがイヤなら、『ふり』だけでいい。
ご飯は一緒に食べても、あとは自室にこもってしまえ。
親にグチグチ言われても、『お金』と思って謝り倒して
メンタルから流せ。
…etc。
この案が、Sを助けるものであると淡々と説明した。
Sの逃げグセは、ダンナ君の借金グセと根っこが同じだ。
Sは、パワハラ気味で大嫌いな親から逃げたかった。
親からもらえなかった愛を、誰かに埋めてもらおうとした。
ダンナ君は、愛されたかった。
『問題』を起こして、親がかまってくれることを期待した。
でもSには言わなかった。
今のSにとって最優先事項なのは、
『自分で自分の人生を立て直せる』ことを
実感してもらうことだから。
その他は後からでも間に合う。
そう判断した。
2ヶ月ほどしたある日のお昼時、
Sがニコニコしながら皆に名刺を差し出してきた。
S「苗字変わりました♡」
おお、旧姓だ。
あのあと、実家に戻って別居し、お互いの親も交えて話し合いをして
無事に協議離婚できたと聞いた。
慰謝料なし、借金はダンナ君払い、義両親が監督すると。
お金もある程度貯まってきたから、今度一人暮らしを始めると。
めっさ嬉しそうな顔のS。
自分で自分の人生を立て直して、
自分の人生を生き始めたんだな。