『 Love Letter 』(日本、1995年)
を観た。
神戸に住む渡辺博子は、3年前に山の事故でなくなった婚約者・藤井樹の三回忌で、
彼の実家に寄り、たまたま中学の卒業アルバムを見つける。
かつては北海道・小樽に住んでいたという藤井の当時の家はすでに国道になっているとのことで、
藤井への想いを断ち切れない博子は、届かないはずの小樽の住所へ手紙を出すのだが・・・。
岩井俊二の長編映画デビュー作。
アイデア勝利。
脚本が素晴らしい傑作ラブストーリー。
すごい・・・!舌を巻く。
※この映画を初めて観る人は、何の情報もなしに観るのがおすすめ。
※下記、ネタバレを含みます。
世界中で愛されるというのもうなづける、圧倒的な脚本。
珍しいが日常のなかで起こりえない、とはいえないまでの偶然の一致と
それを軸に繰り広げられる恋のけじめと初恋の真相が圧巻。すごい!
このアイデアをどうやって思いついたんだ!?と驚愕するけど、
Wikipediaによると着想は「探偵ナイトスクープ」のエピソードによるものらしい。
現実に、この現象は確かに、なくはない感じがする。
"Love Letter" というタイトル
「Love Letter」というタイトルから想起されるストーリーというと、
恋人(もしくは恋人になる予定の当人)同士が交わす往復書簡をイメージする。
でも、このストーリーで恋愛の相手である藤井樹はすでに故人であり、
手紙を交わす二人同士が恋愛していく話ではない。
主人公の渡辺博子と、手紙を受け取った藤井を一人二役で中山美穂が演じているので、
異世界に手紙が届いた?
藤井樹のかつての住居は国道になっておらず、現在の住人に手紙が届いている?などと混乱しつつ
作品を観ているけれど、ある手紙でコトの真相が明らかになるのが気持ち良い。
手紙を受け取った人物は「藤井樹」という渡辺博子の恋人と同姓同名の人物であるばかりか、
男性の藤井樹とクラスメイトだった女性。
同姓同名の男女がクラスメイトになることは珍しいけど、絶対にないとは言い切れないリアリティが良い。
「藤井樹」という名前も、いかにも同姓同名がたくさんいそうという程ではないけど、
いなくもない絶妙な名前で良い。
渡辺博子は、女性の藤井樹の住所に手紙を送ったことで、
女性の藤井樹から、恋人の藤井樹との中学時代のエピソードを聞き、奇妙な文通関係が始まるというストーリー。
この文通は、
渡辺博子にとっては藤井樹への想いにけじめをつけ、新たな恋に踏み出すきっかけになり、
藤井樹(女性)にとっては中学時代の藤井樹(男性)の初恋が運ばれてくるきっかけとなった。
藤井樹(女性)のもとへ、藤井樹(男性)のLove Letter が、
母校の中学生たちによって時を超え、図書カードとして届くというラストがあまりにも素敵。
抒情的な邦画ラブストーリーの最高傑作なんじゃない!?
キャストの魅力
一人二役を演じた中山美穂が良いよね。
単に美人というだけじゃない、圧倒的な存在感がある。健康的なのに色っぽい。
大人の藤井樹(女性)は中山美穂が演じるんだけど、
中学時代を酒井美紀が演じ、同じく中学時代の藤井樹を演じた柏原崇も、なんて魅力的なんだろう。
溌溂としているようで、原石のままで光り輝いている。
しかも、酒井美紀も柏原崇も若いんだけど演技上手い。
渡辺博子と藤井樹(女性)を中山美穂が演じることに必然性はないし、中学時代は別人(酒井美紀)が演じているから、
一人二役は本当は不自然なはずなんだけど、
もうこの世にいない藤井樹(男性)の話をする二人だからか、中山美穂がともに演じることに不思議と違和感がない。
この一人二役も作品の魅力のうちだと思う。
渡辺博子の現在の恋人役は豊川悦司で、
トヨエツは関西弁を話すトーンがうさんくさくて、それが作品の良いスパイスになっている。
神戸が舞台だけど渡辺博子は標準語なので、トヨエツの関西弁だけが神戸を感じさせるしね。
トヨエツは関西出身なはずだけど、寡黙で標準語の役が似合う。
手紙
時代的な感覚なんだろうけど、
渡辺博子の手紙は手書きで、藤井樹はワープロで返信を送るんだよね。
私信で、一方が手書きなのに一方はワープロの印字で返信をするという感覚が当時ならではだなという感じがする。
2025年現代だと、郵便で手紙を送ること自体はもちろんあるけど、
現代では手書きの手紙の返信を、タイプして印字して返す、というのは珍しいと思う。
タイプするならそもそもメールで、となりそうだし、
紙に起こすことが前提のタイプライター(ワープロ)を個人的な手紙で使うのはそっけないというか失礼な気がする。
相手がわざわざ手書きで書いてきてるんだし、と思うしね。
まだデジタルコミュニケーションが一般的になる前、30年前の感覚が新鮮。
1995年は、わたしは7歳。あいうえお覚えたてくらいかなぁ。
岩井俊二
この『 Love Letter 』で第6回文化庁優秀映画作品賞・ 優秀映画作品賞と
第46回芸術選奨・新人賞を受賞したというのも大納得。
あまりにも映画芸術としての完成度が高い。天才。
わたしの世代(1988年生まれ)でも岩井俊二好きは10代の頃からいて、
というか同世代で映画好きになる人の萌芽のほとんどは岩井俊二なんじゃないかと思うくらい
人気が確立されていた印象。
世代感でいうと、
『リリイシュシュのすべて』と『花とアリス』が作品として一番ピンとくる。
でも、『Love Letter』の完成度がずば抜けてない?
▼好きな映画 『リップヴァンウィンクルの花嫁』レビュー
渡辺博子の亡き婚約者への想いのけじめだけでなく、
藤井樹に淡い初恋の真相を運ぶという、ふたつの恋の交錯がなんてエモーショナル!!!




