『ラストレター』(日本、2020年)
を観た。
仙台で夫と子ども達と暮らす裕里は、
亡くなった姉・未咲の代わりに高校の同窓会に出席する。
姉の同級生の乙坂鏡史郎から声をかけられ、未咲として乙坂へ手紙を書くのだが・・・。
岩井俊二監督作品。
※ネタバレを含みます。
先日鑑賞した大傑作『Love Letter』の24年越しのアンサー的作品。
かなり期待して観たんだけどかなり期待外れ。がっかり。
ストーリーとキャラクターが白々しい。白ける。
キャストは魅力的なんだけど、いたるところがヘンテコなんだよね。
手紙というアイテム
今作は、姉・未咲のふりをして妹・裕里が同窓会に出席するという設定がまずツッコミどころがありすぎる。
舞台は仙台なのがいっそう違和感がある。
仙台の都市レベルは分からないけど、地元組はなんだかんだで親同士や地域のコミュニティで繋がりが残ってそうだし、
未咲が亡くなったことを知る人が一人もいないというのは、あまり信じられないんだよね。
それに、高校卒業して25年以上経っていたとしても、
妹を本人と信じ込むって現実味がない。
松たか子(裕里)が未咲として福山雅治(乙坂)に送った手紙の返事を、
福山雅治(乙坂)は未咲の実家宛に送ったことで、未咲の娘である広瀬すず(鮎美)が手紙を受け取り、
広瀬すず(鮎美)が未咲のふりをして福山雅治(乙坂)に返事を出す、と2人の人間が故人のふりをするという設定自体はかなり面白い。
途中まで、なんで福山雅治(乙坂)は何十年も忘れられない人である未咲が別人なのを気付かないんだよ!と思ったら
妹・裕里が姉のふりをしていることを気付いていることと、
姉の死の真相が松たか子(裕里)から語られることで作品のトーンが変わる。
ここまでは、裕里の嘘はいつバレるのか、乙坂と裕里はどんな関係になっていくのか、
未咲のふりをした娘の鮎美と乙坂の関係はどうなっていくのか、と引き込まれる。
手紙が果たす役割を描くところまでは面白いんだけど、
高校時代は生徒会長をつとめ明るく学校のマドンナだった未咲は不幸せな結婚をして最期は自死をした、
という真相を聞かされてからは、どこをどう興味深く観ればいいのか分からないストーリーになっていく。
キーアイテムである手紙の使い方はすごく素敵なのに、そこからつながるストーリーに魅力を感じない。
この作品は、案内人であり推進者の乙坂が、未咲との思い出を振り返り、
未咲の娘・鮎美と裕里をつうじて未咲と出会いなおす話、といっていいかもしれない。
乙坂のキャラクターが高校時代を演じる神木隆之介と現在を演じる福山雅治をもってしても全然魅力的じゃないから
引き込まれない。
姉妹と乙坂の高校時代のエピソードも取るに足らないもので、
乙坂が執着するような特別さを感じないんだよ。だから、この作品自体にも魅力を感じない。
一人二役
『Love Letter』では主人公二人を中山美穂が一人二役で演じていたけど、
今作は、広瀬すずと森七菜が一人二役。
広瀬すずは高校時代の未咲と娘の鮎美。森七菜は高校時代の裕里と、裕里の娘・颯香を演じる。
広瀬すずは、未咲と鮎美で雰囲気が違ってさすがだなぁ。
森七菜は華奢なのもあって中学生くらいに見える。裕里と颯香はどちらも無邪気で少し子供っぽい。
娘たちは、現代の高校生役にしては純朴というか12-13歳くらいのキャッキャウフフな明朗さがあるんだよね。
演じる二人は、公開当時で広瀬すずが21歳、森七菜が18歳。
作品の役割に沿って、ちゃんと幼く見えるのが良い。
母娘を演じるのが全然違和感がない。
キャストのヘンテコさ
豪華キャストで、この作品はキャストに支えられているよね。
このキャストでなければ途中で投げ出すわ。
キャストはとても良い。でも、ヘンテコ。役の設定がヘンテコ。
まず、乙坂の高校生時代を演じた神木隆之介にいつまで高校生役やるんや!とツッコむよね。
2012年公開で今作から8年前の『桐島、部活やめるってよ』でも高校生役やってたし、
2015年公開の『バクマン。』でも高校生役やってたし、
あれから何年たってると思ってるんだ・・・
さすがに今作の神木くんは童顔でも高校生に見えない。
現代キャストは別人で高校生役として別人を起用するのに、あえて神木君!?というチョイスにびっくりする。
広瀬すずと同級生役なんだけど、公開当時は広瀬すず21歳で神木くん26歳だよね。
神木くんが時をへて福山雅治になるとは思えないしな。高校生乙坂キャストは違和感まみれ。
対して、森七菜が松たか子になるのはあまり違和感がない。
そして、未咲の元夫と現在の妻を『Love Letter』にも出演した
中山美穂と豊川悦司が演じるんだけど、中山美穂が公開当時50歳で臨月状態の妊婦役。
これもかなり違和感がある。
庵野秀明が監督ではなく役者として、松たか子(裕里)の夫として出演しているのもそうだし、
同窓会の同級生たちなどもどこか役者っぽくなくて、映像がところどころ生々しいのもこの作品の特徴。
ホームビデオを観ているような、不思議なリアリティを随所に感じる。
乙坂のケレンミ
小説など文章の表現だと乙坂の外連味が気にならないんだろうけど、
既に絶版になっている売れない恋愛小説を何年も前に一冊出しただけで小説家の名刺を携帯しており、
数十年ぶりにあった元恋人(のふりをした妹)に
「君にまだずっと恋してるって言ったら信じますか?」と帰りのバス停まで追いかけてくる40代。
質問形なのが一層、後ずさりしたい。
小説なら細部やリアリティは気にならないかもしれないけど、映像でみるとコワイ。不気味。
小説家というより、文章講座の先生が今の職業では?
高校時代の乙坂もなぜ裕里が恋したのか分からない。
好きな人へのラブレターを後輩である妹に託す先輩の男子生徒って、言っちゃ悪いがその時点で魅力的には思えないよ。
ラストの手紙
ラストシーンは、未咲が高校時代に読んだ卒業生代表の言葉で締められるけど、
卒業生代表の言葉ってあんなにも、卒業生たちへのハナムケみたいな口調なの?
わたしは高校卒業しておらず高校の卒業式に出たことがないので分からないけど、
未咲の言葉って、熱血教師が卒業生たちに贈る言葉みたいだった。
いったい何様なんだ、とかなり偉そうに感じて鼻白む。
手紙の使い方は素敵だと思うんだけど、
大傑作『Love Letter』と比べるのがかわいそう。




