『去年マリエンバートで』(フランス、1961年)

 

を観た。

宮殿のようなホテルで社交に花を咲かせる上流階級の人々。

その中で、ある女性に対して

去年マリエンバートかどこかのリゾート地で不倫関係になったと主張する男性が現れるのだが・・・。

アラン・レネ監督作品。

全編モノクロ。

 

実験的で、整然とした優雅さが散りばめられた傑作アート映画。

 

 

難解なようでシンプルなストーリー

 

去年の庭での逢瀬の映像と、現在の社交場での映像が重なり

どこまでが現実でどこからが幻想か惑わされるのがこの作品の魅力だと思うけど、

ストーリーは比較的シンプル。

 

主要登場人物は、

ヒロインの女性、女性の夫、女性を追求する男性の3名のみで彼らの名前は明らかにならず、

彼ら3人のほかには台詞のある粒だった登場人物は存在しない。

 

ある男性が、ヒロインの女性と去年不倫関係にあったと主張し、

女性は拒否するものの、やり取りの間に

いつしか二人は不倫関係でありあれから1年後の今日に駆け落ちするという展開が真実味を帯びてくるというもの。

 

ストーリーが難解に感じるのはあまりにも映像に惹きつけられて

内容や台詞が頭に入ってこない、ビジュアルの強さが原因なんじゃないかと思う。

圧倒的な美的世界で、ストーリーは添え物程度なのかもしれない。

 

 

圧倒的に優雅なビジュアル

 

文化財レベルのバロック調のホテルの調度品や内装も目を見張るし、

ホテルに集う上流階級の人々の装いも上質。

 

単に建物や衣装やヘアメイクが美しいだけでなく、独特の演出がアーティスティックで目が釘付け。

社交のために小さい輪になって談笑しているようなシーンで静止画のように人々がピタッと止まってカメラが人々の間を回遊し、

女性と男性に行きつく。

女性と男性は二人で話しているのにお互いを見つめあうようなことはせず、

お互いに明後日の方向を向きながら、あるいは片方は相手を見つめながら片方はまったく別の遠くを見つめながら

会話をする。

どこを切り取っても一枚の絵画として成立するような、

現実の光景としては違和感があるが美しいカットが続いていくんだよね。

 

ホテルから臨める整然とした永遠に続いていくかと思われる幾何学的な庭が、

去年のマリエンバート(かどこか)と現在のホテルを繋ぐ装置になっている。

この庭の絵がホテルに飾ってあり、おそらく庭の写真も存在する。

 

去年と同じ場所で再会したというわけではないらしいのに、去年と現在を繋ぐ庭が

物質的な存在感はあるのに、どこか無機質でこの世の場所とは思えない。

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女性役のデルフィーヌ・セイリグが着用しているドレスはココ・シャネル自らがデザインしたらしい。

ドレスも髪型もシックで一分の隙も許さない完璧なエレガンス。うっとりしてしまう。

 

個人的にあまりの美しさに息を飲んだのは、ホテルの部屋の窓から続く壁紙に

手すりと草木模様の金属の装飾が一体化して構成されている様相。なんて美しいんだ。

ストーリーが進むと、壁の一部分だった草木が壁全体を覆いつくし、部屋全体がギラついている。

モノクロでも絢爛豪華さがしっかりと伝わってくるね。

 

モノクロなのに。

モノクロだから?この美的世界の虜になってしまう

 

 

マリエンバートという地名

 

この作品はまず『去年マリエンバートで』というタイトルの響きが異常にオシャレ。

 

マリエンバートという地名は日本ではなじみが薄いけど、

マリエンバート(ドイツ語: Marienbad)はチェコの都市で現在でも存在するみたい。

 

二人が出逢った象徴的な庭のことを「フレデリクスバートの庭」と男性は呼ぶ。

フレデリクスバートとGoogle検索しても現実の地名や固有名詞にはいきつかず、作品世界での呼称みたい。

 

フレデリクスバートの庭にいった覚えはないという女性に、男性はいくつか地名を挙げる。

・カルルスタット

・マリエンバート

・バーデン・サルサ

このうちで、マリエンバートのみ実在し、あとの二つは存在しない架空の地名。

 

フレデリクスバートの庭も、カルルスタットもバーデン・サルサも存在しないのに

マリエンバートは存在する。
 

あの庭はマリエンバートにはないんだろうけど、あえて虚構の中に実在の地名を入れているところが小粋で素敵。

 

 

 

 

 

優雅な気分に浸されたい人にはおすすめ。