多様性、LGBTQといったキーワードが浸透してきた昨今。
実はシェイクスピア作品にも性について考えさせられる作品が多数存在します。
シェイクスピア劇では女性役を少年が演じており、舞台で演じていたのは男性のみ。宝塚と逆のイメージですね。
シェイクスピアの作品には、女性が身分を隠すためなどの理由で男装するシーンが多く登場します。
男性が演じる女性が、男装をするという何とも複雑な設定になっているのです。
例えば『十二夜』という作品では、男装したヴァイオラという女性が、男性として仕えた公爵(男性)に恋をしてしまいます。
公爵はヴァイオラが男性だと信じているため、恋心に気づくはずもありません。
一方、公爵が恋心を寄せるオリヴィアは、ヴァイオラを好きになってしまうのです…。
しかもヴァイオラそっくりの双子セバスチャン(男性)が現れてしまい、しっちゃかめっちゃかな展開に。
最後には様々な誤解が解けてハッピーエンド、となるわけですが、喜劇の中に性に対するテーマがしっかりと存在していることが分かります。
こういった作品ごとに隠されたテーマを探すのも、シェイクスピア作品を楽しむ醍醐味です。
また、シェイクスピア劇ではあらゆる事件が次々と起き、スピード感ある物語展開が魅力です。例えば、ロミオとジュリエットは恋に落ち、ロミオがジュリエットの親族を殺してしまい、駆け落ちに失敗し2人とも死んでしまいます。2~3時間の上演時間で登場人物たちの運命がどんどんと動いていく様子を、体感してみてください。
シェイクスピア劇でセリフ量が膨大にあるのは、かつての演劇が“聴覚”を重視していたからです。
また、照明や音響などがなかったため、今の場面が昼なのか夜なのか、晴れているのか天気が荒れているのか、全てをセリフで表現していたのです。
現代では映像演出などもありますが、当時はとてもシンプルな舞台。
役者の“言葉”から、作品の世界観を表現しなくてはなりませんでした。
そこで劇作家であるシェイクスピアは、言葉巧みに作品を表現したのです。
シェイクスピア劇を観劇するときはこういった背景を踏まえ、目の前の俳優の演技や衣装・美術だけでなく、セリフの言葉から想像力を働かせてみてください。
きっと奥行きのある情景が浮かんでくるはずです。