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こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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もう会うことなどあるはずがないと思っていた。

携帯で上司と話しながら街を歩いている最中。汚れているところなどない靴の動きが止まった。ガラス越しにお互いの驚く表情を見ているのだろう。

 

「……はい。ではそのように。取りまとめてご報告します」

 

話し終えた携帯を麻のジャケットの内ポケットに入れ、ゆっくりとした足取りで店のドアを開ける。『いらっしゃいませ』とチェーン店によくある明るい声色の接客を聞き、コーヒーを注文した俺は窓に向いたカウンター席のスツールに腰を下ろした。

湯気が立つコーヒーを一口飲むと口の中に苦みと酸味が広がる。

それは今の俺の感情と同じような味だった。

 

「……久しぶりだな。生きていたのか」

 

隣に座るヤツが俺に顔を向けてキツイ視線をよこし、店の中だから抑えてはいるが視線同様キツイ口調で返してきた。

 

「何であなたがいるの!?あなたには会いたくなかった!」

 

「おー、怖っ。俺はお前なんていてもいなくても別にどーでもいいが。……何だ?また何かやらかしたのか。ヘ・ス……お前」

 

長話する気はなかった。コーヒー一杯の時間だけのつもりだったが、カウンターテーブルに置かれた弁護士事務所の封筒が目に入り聞いてみた。

 

「何でもないです。あなたには関係ありません」

 

慌てて隠すように両手で封筒を押さえたヘ・ス。問題があることが良く分かる仕草だった。

 

「ま、そうだな」

 

その後はお互いに無言。コーヒーを飲み干す直前、テーブルの上に置いていた俺の携帯が震えた。画面を見て立ち上がり、ヘ・スをもう一度見る。

 

「これも何かの縁だ。もし、気が向けば連絡しろ」

 

コーヒーが乗ったトレーに置いてある、店の名前が書かれた紙ナプキンを一枚。手に取ってジャケットの内ポケットからペンを取り出し数字を書いてヘ・スの前に置いた。

 

「連絡なんかしません!あなたなんかに!」

 

視線を下げ、決して俺を見ないようにしてへ・スが言った。俺は腕時計で時間を確認してから窓ガラスに目を向け、最後にもう一度ヘ・スを見た。

 

「……そうか」

 

俺がそう返事をした時、窓ガラスが小さく叩かれた。ヘ・スはその音に顔を上げ、俺を見た時以上の顔をして驚いていた。明らかに俺に向けて笑い、腕に抱えたさらに小さな腕を持ち、俺に向かって手を振らせている人物に。

 

「……チェリョン?」

 

「安心しろ。今は俺の妹だ。良いヤツと結婚して幸せにしてるよ」

 

そう言い残し、俺は外に出た。近づかなくてもよく分かる、そっくりな顔の二人。愛する女の腕に抱かれた小さな人が俺に向けて腕を伸ばすので、俺もその体に腕を伸ばし右腕でしっかりと抱き上げる。もう片方の腕でガラス越しのヘ・スと向き合って紙ナプキンを指さした。

 

「休みの日なのに誰かと打ち合わせだったの?仕事の邪魔してゴメン。お兄ちゃん」

 

「いや、大昔の知り合いなだけだ」

 

ヘ・スに向かって会釈したギジュと大通りに向かって歩き出す。

 

「え~!?‟昔の”って元カノ?今までの彼女とタイプが違うね?」

 

「いや、あいつだけは絶対にありえん!」

 

 

きっと近いうちにヘ・スから連絡がくるだろう。

俺の愛する女に会いたくて。

 

 

 

 

 

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久し振りに『月の光の中で』の番外編である『My Turn To Cry』。

ウォン皇子様のお話です。

時期としてはハジンの記憶が戻ってすぐくらい?借金のお話がまだ残っている時かな?

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!

 

 

 

 

 

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本日、無事に『高麗日記』を書き終えることができました。いつも読んでいただく皆様に感謝するばかりです。

 

今回は『高麗日記』について少しだけ書かせていただきます。

 

『高麗日記』、ヘ・スとソ皇子様が現代で無事再会して恋愛を始めることができません。この結末に不満な方もいらっしゃると思いますが、たまにはいいかな?と思い。また、結末に選択肢があるものを書いてみたくて、4話からヨ皇子様と結婚するか、しないか。というものを書きました。

結婚を選択するを選んでも、正確には結婚していませんが(笑)

 

また、3話からの二人の年齢を50代くらい?にしたかったのですがパク妃の出産年齢とかを考えて年齢を下げました。だってヨ皇子様と夫婦として張り合うには若い子じゃダメな気がしててへぺろ

(ちなみにパク妃とはヨ皇子様の三人いるお妃様の一人。文成王后という方で、高麗では一男一女を産んでいます。ヨ皇子様の子はこの二人だけのようです。さらに付け加えれば、三人のうちのもう一人もパク妃 文恭王后といい、二人は姉妹です。)

そのため、ハジンと初めて会った時、編集長としてのヨ皇子様の年齢が若すぎる気がしますがお見逃し下さいあせる

 

 

さて、来週はチョット初めの方に戻ってお話を書かせていただきます。

以前のお話の続きを2話予定しています。

ブログを読んでいただいている皆様。ここまで読んでいただきありがとうございます!

 

 

 

 

 

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「俺たち、結婚するか?」

 

真剣な瞳は冗談を言っているわけではないと分かる。けれどわたしたちの関係は恋人同士なんてものでもなく、手すら握ったこともなかった。

 

「何で?」

 

「ソが、いないだろう?この時代では現れないかもしれない。……なら、歳をとった俺たちにできるのは、思い出し、話して、あいつらを忘れないことだ」

 

「やっぱり、高麗の記憶があったんですね」

 

わたしもコーヒーカップに手を伸ばし、まだ温かいと言える温度のコーヒーを飲む。

 

「やっぱり?」

 

落ち着いているわたしが意外だったのか、少し驚いた表情で聞き直すジョンヒョンさん。珍しい表情にクスリと笑いが起きる。

 

「初めて会った時に迷いもせずにわたしに声をかけたでしょ?他にも何組か待ち合わせしていたのに。それに、編集長にしては高麗時代の背景を良く知っていたもの。そうかな?って。ずっと思ってた」

 

「そうか……」

 

フッと小さく二人で笑い、残りのコーヒーを無言で飲んだ。

 

 

 

 

 

その後のわたしとジョンヒョンさんの関係は、周囲から見たら‟事実婚の夫婦”という名前になるかもしれないけれど、実際は茶飲み友達。ルームメイトのようなものだった。休日の昼間にリビングの温かな光の中で高麗の話をする。それも幸せだった後継者争いが始まるまでの僅かな間の話が多かった。

『ウンが……。ジョンが……』と話したり、わたしの本を持ち出して『この時……』と話したり。

そんな関係もあっという間に過ぎ、ジョンヒョンさんが先に逝き、一人残った小さな家で暮らした。

それも、もう終わり。

 

 

 

目を閉じるとあなたが浮かぶ。

 

『行こう……』

 

夜の星々に溶け込むように青いペジャを着たあなたがわたしに手を差しだす。

わたしはその手に自分の手を伸ばし、そっと重ねた。一歩あなたに近づくと、わたしの腰を引き寄せるから。

 

『陛下。来世では。一緒の空間、一緒の時間でめいっぱい。心ゆくまで愛し合いましょう?』

 

背伸びをしてあなたの唇にキスをした。優しい瞳で見つめ返すあなた。

頬に添えられた手、近づく顔、重なった唇が離れる。

 

『私のスよ』

 

そして光がわたしたちを包み、一つになった。

 

 

 

 

 

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産まれてから今まで会ったことがなかったジョンヒョンさんの子供。

ジフくん。

 

天気が良く、緑の芝生が広がる休日の公園。

キャッチボールをしている一組の親子に近づくとわたしに気が付いて、ボールを投げる手を止めて親子が並んだ。

 

一人は昔から知っている人。

もう一人は知っているのに、知らない子。

 

「悪いな。こんなところまで」

 

「いいえ。わたしがお願いしたから良いんです。……こんにちは。コ・ハジンです。お父さんに仕事でお世話になっています」

 

「こんにちは。ジフです」

 

「挨拶ができて良い子ね。それに、ジフくんの瞳。とても綺麗」

 

はにかんでいるジフくんは、高麗での陛下とは違い顔に傷もなく、愛情を受けて育った笑顔。そんな陛下の笑顔を見て視界がぼやけた。

一方ジフくんは挨拶が終わるとわたしに興味を失ったようで、グローブをジョンヒョンさんに渡し、遊具の方へと走り出した。

 

「会わせてくれて、ありがとございます」

 

「……すまない」

 

地面を見て謝るジョンヒョンさんと、涙でぼやける視界でも陛下を追うわたし。

 

「ジフ―!」

 

遠くから陛下を呼ぶ声がして、手を振りながら歩いて来る女性。近づいた女性を見れば、それは高麗で会ったことがあるヨ皇子様の妃だったパク妃。

『負い目がある』と言ったヨ皇子様の言葉にも納得がいき、わたしは女性をみつめた。隣に来たパク妃にペコリと頭を下げて、簡単な自己紹介をお互いがすると、ジョンヒョンさんは陛下の後を追い遊具へと向かった。初めて会った女同士でしばらく天気や仕事の世間話をして。ポツリと言われた。

 

「私、夫はあなたを好きだと思っていたの。だから私と結婚すると言われて驚いたんです」

 

「……わたしたちの関係は、ピッタリ当てはまる良い言葉が分からないけど。兄妹……が近いかも。わたし、ずっと昔。ジョンヒョンさんの弟と付き合ってたんです。彼をすごく愛してるけど誤解してすれ違って、気持ちを持ったまま離れて。彼は亡くなった。ジョンヒョンさんも彼とケンカ別れしてしまっていて。だから弟の記憶があるわたしを切り離せなかったんだと思います」

 

「そう……。あの人、自分のことあまり話さないから。今までずっと疑っていたけど、今日初めてあなたに会ってその言葉が信じられた。うん、お互いが恋愛の情ではないって何となく分かったし。あなたはまだ弟さんのことを愛してるみたいだから。会えて良かったわ」

 

優しい表情でわたしに笑ってくれ、陛下の元に向かって歩いて行った。陛下の名前を愛おしそうに呼び、親の愛情をたくさん受けている陛下に少しの淋しさと、安堵と、喜びが起きた。

 

「ヘ・ス……」

 

入れ替わりで戻って来たジョンヒョンさんがわたしの高麗での名前を呼ぶ。

懐かしいもう一つのわたしの名前。

 

「いいの。あなたがちゃんと愛してくれたら。両親の愛情を伝えてくれたら、それでいいの。きっと来世でもわたしたちは会えるわ。だって、高麗でも現代でも会えたもの。次は同じ時間を一緒に歩ける二人として出会えるはず。陛下を愛してくれて、ありがとうございます。ヨ皇子様」

 

声を上げて笑っているジフくんである陛下。

一緒に並んで歩くことはできないけど、遠くからでも見守ることはできる。

たまに淋しくなって、なぜ同世代で生まれ変わらなかったのかと陛下に文句を言いたくなることもあるだろう。だけど……。

 

「次は、一緒に生きましょう」

 

そよ風に消されるほどの小さな声で願った。

 

 

 

 

 

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ハジンが現代で一人で生きていく選択をしたお話でした。

来週は別ver.の終わりをUPします。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

 

 

 

 

 

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「俺たち、結婚するか?」

 

まっすぐな瞳で見てくるジョンヒョンさんを、いつからヨ皇子様だと思わなくなっただろう。高麗時代とは違い、穏やかで優しく、でも仕事はキッチリとこなし、必要な時に必要な言葉をくれる。大事な人としてわたしのそばにいてくれた。

 

「何言ってるの?ジョンヒョンさん、彼女いるじゃない。わたしにそんなこと言うよりさっさと彼女と結婚しなさいよ。今の彼女は珍しく長く付き合ってるし、大事なんでしょ?」

 

「あいつは、お前と同じ感じで……。まぁいい。そうだな。あいつともハッキリさせないとな」

 

呆れたことを言うジョンヒョンさんへ目を細めて咎めるように視線を送ると、フッと左の口角を上げて笑う姿。久しぶりにヨ皇子様の時の顔だった。

 

 

 

数か月後『籍を入れた』と結婚報告をしてくれたジョンヒョンさん。左薬指にはシルバーのシンプルな指輪があった。この人もここで幸せになれるなら良かったと思いながらお祝いを渡した。それから一年後、ジョンヒョンさんにも新しい家族である子供が産まれ、5年程が経った。

 

未だに独身のわたし。陛下を見つけることもできていない。『もしかして』という期待もずいぶん前に無くなった。

そして最後の本を出してからは化粧品の仕事だけをしている。それでも穏やかな日々を幸せだと思っている。会社に与えられた部屋から視線を窓の外へ向けると春の花が咲き、風にのって花びらが舞っている様子が窺えて。やっぱり幸せだと思えた。

そんなある日、内線が掛かってきて受付の子から話を聞くとジョンヒョンさんが来社したということだった。ジョンヒョンさんがわたしの仕事場に来ることは初めてで驚きながらも部屋へ迎え入れると、その顔は憔悴しきっていた。

 

「どうしたの、そんな顔して!何があったの!?」

 

応接用のソファに座るように促すと膝に肘をつき大きな手で顔を埋め、苦しそうな声を出した。

 

「すまない。まさか、こんなことになるとは」

 

「何?何があったのよ?」

 

突然謝り出すジョンヒョンさんに訳が分からず、こちらも混乱してきた。

 

「俺が結婚した相手は……朴という女だ」

 

「え?何よ、いきなり。まさか浮気でもされたの?あ、『すまない』っていうならわたしのこと疑われてるとか?」

 

「フッ。それならまだ良かったな。あいつは昔から知っている女で、負い目があって結婚したんだ」

 

そつがないジョンヒョンさんに負い目なんてあるのかと疑問に思いながらも、絶望を表したような顔をしている目の前の人の言葉を漏らさないように聞いた。

 

「赤ん坊が産まれて、それなりに可愛かったよ」

 

「うん?」

 

ジョンヒョンさんにしては珍しく要領がつかめない話に戸惑いながら、隣に座った。そして丸めている背中に手を当てようとした時、ジョンヒョンさんは声を発した。

 

「ソ……」

 

「え?」

 

「ソだったよ。成長した顔は信州に出される前のソと同じ顔をしていた。まさかと思ったよ。だけど昨日。俺を見上げる顔を見て、間違いないと確信した。今のところソに記憶はない。……すまない。ヘ・スよ。まさか俺の子としてソが産まれるだなんて」

 

背中に置こうと思っていた手が止まり、宙に浮く。

世界から音が消えた瞬間だった。

 

 

 

 

 

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