nabisonyoです。
当ブログにお越しいただきありがとうございます。
こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
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ハジンside
「はい?」
何かを言いかける目の前の人、ジフさんに答えた時。
「ハジン?」
自分の名前を急に呼ばれ、声がした方向である後ろを振り返れば、そこに立っていた男性を見てわたしは驚いて目を見開いた。
「……ギドン!?何でここに?」
気まずそうな表情。そんなギドンの表情から、本当だったらわたしに対して声を掛けることはしなかっただろう。だけどわたしを見かけて思わず声に出てしまい、わたしも名前に反応してしまった……ということだと思う。
「俺……ハジンに謝らないといけないと思って」
口籠るギドン。彼のことをついこの間までとても好きだったはずなのに、今のわたしには恋愛感情なんて欠片もなく。どこか遠い日の、何年も昔の出来事のようで。そして裏切られたせいで、ひどく冷めた気持ちでギドンを見る。
「何も聞きたくない。ミリと二人で後悔して、騙した人たちにちゃんとお金を返したら?」
キツイ口調のわたしに俯いたギドンはただ立っているだけ。終わったこと。もう彼らに気持ちなんてまったくない。だけど笑って『いいよ』と許すことはできないから、優しい言葉なんて掛けない。だけど思い出したらあの時の気持ちが胸をチクリと刺す。
嘘をつかれたことに悲しみと、自分の不甲斐なさで涙が出そうになってきた時、ガタンッと向かい側のイスが音をたてた。立ち上がったジフさんが、少し目線が上になるギドンを見上げて低い声を出した。
「おい、ハジンは俺のものだ。お前はミリってヤツと仲良くしておけばいいんだよ。もうハジンに声を掛けるな。いくぞ、ハジン」
「あ、ちょっと!」
店を出るため立ちあがったジフさんが座っているわたしの腕を引っ張って立ち上がらせようとするから、バランスを崩し座っていた椅子の足元に靴が脱げてしまい声を上げた。
「あぁ、悪い」
脱げた靴に気が付いたジフさんは、わたしをもう一度イスに座らせ、戸惑いもなく高そうなスーツで片膝をつき脱げた靴を履かせてくれる。それも優しい手つきで、童話の王子様がお姫様にするように。きっとわたしたちを見ている周囲のお客さんも同じように感じているはず。
靴を履かせ終わると立ち上がり、今度はわたしに向かって手を差し出した。
「行くぞ」
反対する気なんておきなくて、その手を取った。
何だか夢見心地の気分になり、ドキドキする胸で地下鉄に向かって歩いているはずが路地裏の暗い方へと進むから、急に警戒心が出て声をあげた。
「ちょ!地下鉄じゃないんですか!?」
「……車で来ている。あの駐車場だ」
つないだままの手と反対の手を伸ばす先には数台の車が並んでいる。黒いセダンがピッと鳴ると同時にライトが一度光った。ジフさんが車のロックを解除したからだ。
「じゃあ最初から地下鉄じゃなくて車にすれば良かったじゃないですか!」
「ハヌルの女だと思っていたんだから車に乗せるわけないだろ」