nabisonyoです。

当ブログにお越しいただきありがとうございます。

こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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スーツのポケットから出すと番号だけが表示された携帯の画面。

そろそろ掛かってくるだろうと思っていた頃だった。

 

「チェリョンに会わせろ」

 

スライドして応答するとすぐに耳に入って来た声に少し。いや、かなり動揺した。が、まぁ有り得なくないだろうと自分を納得させた。そして久しぶりに聞いた兄弟の声は、こんな声だったか?と考えたが、千年も経てば記憶なんて無いようなもの。

 

「イヤですよ。ソ兄上とチェリョンを何で会わせないといけないんですか?」

 

「俺じゃない。ハジン……ヘ・スが会う」

 

思っていた通りの反応に微かな笑いが漏れて、相手は俺の態度に不満気な声で悪態を漏らした。その反応にさらに笑いが出てソ兄上から『おい!』と窘められる。

 

「フッ。分かってますよ。チェリョンは、まぁそのうち。記憶は無いし、今はあいつも忙しいんで。だけどあいつの性格ならきっと喜ぶだろうから、いつか会わせますよ。それよりヘ・ス。何をやらかしたんですか?」

 

「ウォンには関係ないだろう?」

 

ヘ・スと同じように俺は関係ないと言うソ兄上。確かに積極的に関わりたいと思っていない。だけど仕事柄、口が出た。

 

「俺が裁判官でも?」

 

「……」

 

「ちょっとくらいは話を聞いてアドバイスできますよ。ちなみにヘ・スの持っていた封筒の弁護士事務所は評判があまり良くないですからね。気を付けてください。そうですね……最近独立したばかりのポン・サンピルって弁護士なら悪くないと思いますよ。どうするかは自分たちで決めてください。じゃあ」

 

そう言って通話を切った。

 

 

あいつならきっと何とかしてくれるだろう。

あぁ、でも……。ソ兄上には会いたくない。

 

 

ヘ・スであったコ・ハジンの裁判が終わったとサンピルから聞き、しばらくするとまたソ兄上から電話が掛かってきた。そして今、カフェにいる。チェリョンであったギジュを連れて来ることをお願い……命令され、ギジュには偶然を装い会うことにしたのだ。

 

待ち合わせのカフェに入り、店内を見まわすと会いたくなかった二人が奥の方のソファ席に向かい合って座っていた。向こうも俺を見つけたようで、ソ兄上が小さく頷いた。ギジュにアメリカーノと自分用に好きな物を買ってくるように財布を渡して、ソ兄上たちに近づいた。

 

「久しぶりですね」

 

「……お前の子、ではないんだよな?」

 

カウンターで注文しているギジュを見てソ兄上が言った。

 

「えぇ。チェリョンの子ですよ」

 

腕に抱いた子を抱き直し、ヘ・スがソ兄上の横に移動したので目の前の空いている二人掛けのソファに座った。

 

「無事、示談が成立したようで何よりです」

 

「俺は示談なんて納得いっていない。100%向こうが悪いんだ」

 

俺の言葉に噛みつくように言い出す。この人は昔から虐げられていた割には真っ直ぐだったと思い出し、何だか懐かしくもあり。苦くもあった。

 

「ソ兄上、物事にはどちらかだけが悪いなんてことはないんですよ。どちらも言い分がある。正しいと思っている奴が本当に正しいということは絶対にない。もちろん反対の場合もある。だから、今回のことも絶対ヘ・スが100%正しいなんてことはないんですよ。ま、俺はそれを聞くのが楽しいから今の職業を選びましたけど」

 

俺の言葉にソ兄上とヘ・スがイヤそうな顔をするが、そこに自分用のココアと俺のコーヒーを受け取って戻って来たギジュがマグカップをテーブルに置きながら口を挟んた。

 

「お兄ちゃんたら、そんなこと言って」

 

俺の腕の中で手を伸ばす子供に微笑みかけながら、二人に頭を下げてソファに腰を下ろした。

 

「始めました。私、ユ・ギジュです。兄のお友達ですか?こんなこと言ってるけど、お兄ちゃん。私が結婚する前まで弁護士をしていたんですよ?でも結婚した後に裁判官になるって言って、理由を聞いたら『昔、自分のせいで一方的に傷付けた人がいる。だから平等に人の話を聞いて、両方の気持ちを少しでも軽くできる立場になりたい』って言ったんです。ひねくれちゃって」

 

「……そんなこと言った覚えはない。ギジュの勘違いだろう。だが、時代により価値観も倫理観も変わる。それは二人とも身に沁みて解っているだろう?絶対に正しいことなんてこの世に有りはしないと思っているから、どの時代でもぶれないものを探しているだけですよ」

 

隣のギジュは俺の言葉にクスッと笑って、俺の膝に乗っていた子供を自分の方へと移動させた。そこからはヘ・スとギジュが話し出し、俺とソ兄上はほとんど話さず、時々ポツリポツリと言葉を交わすだけだった。

 

店を出る時にはギジュとヘ・スは連絡先を交換し合い、この調子だとこれからも二人は会うことがありそうだ。その様子を見ている俺たち二人。

 

「ソ兄上。俺はあなたに会いたいとは思っていませんので安心してください」

 

「あぁ、俺もだ」

 

 

 

それから時々、ギジュから話を聞くソ兄上とヘ・スの様子。二人が幸せか、なんて興味はなく。会う気も全くなかった。それが突然ソ兄上から連絡があり飲みに誘われるのは。

数年先の話。

 

 

 

 

 

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『月の光の中で』の番外編、『My Turn To Cry』でした。

飲みに誘われる理由は一応考えていますが、まだお話はできていません。いつかできたら読んでいただけると嬉しいです照れ

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!

 

 

 

 

 

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