あれから2ヶ月が経った。
すっかり秋が深まり、
肌寒い季節がやってきた。
近年、日本は春や秋が短くなった気がする。
短い故に尊い。
俺はそんな秋が好きだった。
ゴトッ。
荷物を置き、
久しぶりに路上ライブに臨む。
空気も程よく冷たく凛としている。
緊迫感が心地よい。
新曲を引っ提げ俺は戻って来た。
久しぶりの路上ライブ。
俺はギターを構えて歌い始めた。
■ ■ ■
ぱちぱちぱち
歌い終わると
どこからともなく
拍手が聞こえてきた。
振り返ると
水華が公園の樹木に寄り掛かりながら拍手をしてる。
「やっぱり
上手い。
ユウサクさん帰ってくるの、
ずっと待ってたんですからねー。」
「それは、うれしいねぇ。
こんなにカワイイ子に待っててもらえるなんてお兄さんは本望だ」
「‥あのねー!!
本当に待ってたんですよ?」
水華は俺の冗談ぽい受け応えにちょっとイラっときた様子を見せた。
「ごめんごめん!
そんな悪気はないんだよ!待っててくれてありがとうね」
「やっぱり歌いたくなったんですか?」
「ああ、元々好きな事だったし、急には辞められなくてね。
今後は就活もあるし頻度は減るかもしれないけどこれからも続けようと思う。あと‥」
「あと‥?」
公園の時計を指さした。
「あの時計、10分ズレてる事に気付いてさ。」
「あ、ホントだ!」
水華は自身の携帯に表示されている時間と照らし合わせて
驚いていた。
「こないだ家帰った時、『いいだろ』が始まったばかりだったから、
おかしいなぁ?って感じてさ。
だからあの日の
『9時までに誰も来なかったら』っていう
俺のルールは
結局ノーカウントだった、というワケ。
神様が辞めるな!とでも言ってるみたいだよなあ」
「きっと運命ですよソレ。
これからも続けてくださいよ。
あたしユウサクさんが戻って来ないって考えたら‥すごくイヤだった。
気付いてなかったかもしれないけれど、
歌を聞くの、
あの日が初めてじゃなかったんです。
それで元気や勇気をもらってて。
『明日もがんばろう』って。
バスを待ってる時、
いつも遠くで聞いてた。
もう1年も前から」
(続く)