それからというもの
惚けた日々を送っていた。
良い歳してフリーターというのも
流石に親も不安に思っているし、
就活をしなければならんと思いつつも
そのまま気力が湧かないまま一日が終わる。
それの繰り返しだ。
20歳の頃に、
一度は製薬会社に勤めてはいたのだけど、
深夜にまで及ぶ残業、残業の毎日で身体を壊してしまい、
半年間も入院生活をしていたら
クビを切られてしまった。
製薬会社勤務なのに、
そんな俺につける薬も無しという、
ミイラ取りがミイラならぬ滑稽な事態である。
今では近所のコンビニで細々とアルバイトをしながら生活している。
ただ前よりも張り合いが無くなった。
一ヶ月前に路上ライブを辞めてからだ。
身体が重くなった感が否めない。
■ ■ ■
「ユウサク!路上辞めちゃったのかよ!
しかも最後のお客さんが女のコだったっていうのに辞めちゃったのかよー。もったいねー」
ファミレスの店内の一角でカズキが大声で騒ぐから周囲の視線が痛い。
一人で勝手に悔しがる様子を横目に
アイスティを飲み干した。
「お前は声が大きい。
その元気俺に分けてくれって。」
「元気ってのは自分で作るもんだ!
っていうか
ミュージシャンってのは良いよなぁ。
出会いがあるもんなあ~。
俺はユウサクにギター教えてもらったけど
Fで躓いちまったしなぁ」
「俺も初めは弾けなかったよ。
練習と根気があれば弾けるようになる。」
「ガーッ!
俺にはその根気がねぇからなぁぁ
っていうかさ
その水華ってコ、お前にホの字なんじゃないの?!」
こいつは何を言っているんだ。
初めて会った人間にホの字って何だよ。
(続く)