妄想blです。
お嫌いな方はスルーで。
そうやって、2人と一緒に登校する毎日にも慣れてきて、学校にも、クラスにも少しだけ馴染んでくれば、嫌でも耳に入ってきた。
あの2人の話。
雅紀は男女共に人気があって、優しくて明るくて。
そんな雅紀と一緒にいる翔くんは、派手な見た目だけどめちゃくちゃ頭が良くて、だけど怒るとすげぇ怖いって。
学年は違うけど、翔くんが雅紀を特別だと思ってるのは周知の事実になってて、
だからこそ、その雅紀の弟である俺に興味本位で話し掛けるヤツも少なくなかった。
それが気に入らなくて。
そうゆうヤツが話し掛けてきてもシカトしてた。
だからだろうか、そのうちそんな俺の態度が「調子に乗ってる」って陰で言われるようになった。
もう、全部がどうでもよかった。
あの家に引っ越して来てからだ。
全部が上手くいかない。
それなのに、いつも笑ってる雅紀。
なんでこんなに違うんだろう。
俺と雅紀、何が違ったんだろう。
考えたくなくて、見たくなくて、必要な時以外は自分の部屋で過ごす事が多くなっていった。
そんな俺の変化を気付いているのか、いないのか。
母さんも、雅紀も、何も言わなかった。
何も言わずに、俺の好きにさせてくれてた。
だけど。
ただ1人、その人だけは、俺の好きにはさせてくれなかった。
「潤ー、入るぞー。」
一声だけ掛けて、ノックもなしに部屋に入ってきたのは翔くん。
食事や風呂なんかの最低限の用事だけを済ませ、あとは部屋でゲームなんかをしていると
こうして時々翔くんがやってくる。
「・・・また来たの?」
「悪ぃかよ。」
悪くはない。
だけど、ホントは俺じゃなくて雅紀に会いに来てるんじゃねぇの?
そんな気持ちから
歓迎なんてする気にもならず
ゲームに視線を落としたままでいた。
「おい、潤。客にはお茶くらい出せよ。」
少し低い声で言われる。
だから、仕方なくゲームを置いて階下に降りた。
リビングでは、母さんと父さんがテレビを見てた。仲良さそうに、くっついて座って。
・・・新婚だもんな。
いい歳だけど。
キッチンからはその後ろ姿しか見えないから、
敢えて2人には声を掛けずに冷蔵庫からジュースを取り出し、グラスに注ぐ。
「潤、雅紀くんの分も持って行って。」
いつの間にか振り返っていた母さんにそう言われ、正直面倒くせぇって思いながら
もうひとつグラスを取り出してそこにもジュースを注いだ。