妄想blです。
お嫌いな方はスルーで。
トレイに乗せた、グラスみっつ。
それを手に部屋に戻ると、翔くんはマンガ雑誌を読んでた。
テーブルの上にトレイごと置いて。
ひとつを自分の方へ、残りのふたつを翔くんの前に置いた。
「なに?オレ2杯もいらねぇよ。」
「・・・翔くんが持っていく方が、喜ぶよ。」
家の中でもほとんど会話らしい会話をしない俺が持って行くより、きっとその方が雅紀は嬉しいだろうから。
「・・・わかった。」
読んでいた雑誌は途中のページが開かれたまま、床に押し広げるように置かれ。
その代わりにグラスをひとつ手に取って翔くんが部屋を出た。
テーブルに残されたグラスは、翔くんがまた戻ってくる事を意味していて。
どうせならふたつとも持って行けばいいのにって思った。
予想どおり、少ししてから部屋のドアがノックもなく開けられ翔くんが戻ってきた。
そして、その後ろには雅紀。
・・・なんでお前まで来んだよ。
舌打ちしたい気持ちを隠して、ゲームに視線を落とした。
「潤、ゲームやめろって。」
「なんで?」
「おまっ!可愛くねぇ・・・。」
翔くんの大事な雅紀に比べたら、俺なんて可愛いわけが無い。
だから、無視してゲームを続けた。
「おい、潤!」
「翔ちゃん、怒んないでよ。」
雅紀のその言葉が、余計にイラつかせる。
「2人で遊んでればいいじゃん。」
雅紀の部屋で。
母さん達みたいに仲良く、さ。
喉まで出かかった言葉は、最後の理性で押し止めた。
「まさきー。潤が可愛いのに可愛くないー。」
そんな甘えた言葉、学校では絶対聞けないってくらい甘い翔くんの声。
時々、翔くんは目を細めて俺を見る。
それが何だか恥ずかしくて。
その目が意味する事がわからなくて、戸惑うんだ。
だけど、こうして雅紀に甘えた声で話しかけたり、雅紀を見つめるその目とは明らかに違っていて、翔くんが何を考えているのかやっぱよくわかんねぇ。
その目も、2人でこうして俺の部屋に来る事も、朝一緒に学校に行く事も
全部意味があるんだって気付いたのは
それから暫くしてからだった。