妄想blです。
お嫌いな方はスルーで。
オレの学校の事を考えて、中学を卒業するタイミングで2人は籍を入れ、俺と母さんが引越しをする。
夏休みの間にそんな話で纏まって、引っ越した家から通える学校を志望校にした。
それなりの学校。
校則が厳しくないのが決め手になった。
「オレもそこだから、潤くんも少しは心強いかな。」
そんな風に言われても、心強いとはあまり思えなかった。
お互いひとりっ子なオレらは、お互いにその距離感を掴めずにいて。
雅紀は俺を「潤くん」と呼び、オレも「兄ちゃん」なんて単語はなかなか口に出来ず、かといって「雅紀くん」とも呼べず、「ねぇ。」なんて言葉で濁していた。
だからだろうか。
受験を終え、無事に志望校に合格し、入学式を迎えても、オレ達の距離は縮まる事はなかった。
「潤くん、そろそろ行こう。」
初めての登校の日、当たり前みたいにそう言われてほとんど荷物の入っていない軽いスクールバッグを差し出された。
「・・・ん。」
短い返事、受け取った俺のスクールバッグ、それを確認してから雅紀が先に立って玄関を出る。
並んで歩くのも何だか違うような気がして、雅紀の数歩後ろを付いて行った。
ポケットに突っ込んだ両手。
高校生になったら履こうと思っていたお気に入りのバッシュは、雅紀とお揃いになってしまったからクローゼットに隠して
ハイカットのスニーカーにした。
全部がチグハグな気分だった。
新しい家も、新しい自分の部屋のそこに置かれた家具も、履きたかったのに履けなくてしょうがなく選んだこのスニーカーも、雅紀の数歩後ろを歩くオレ自身も。
何一つ、歯車が噛み合わないまま動き出したロボットみたい。
チグハグで、居心地が悪くて、全部がどうでもよかった。
「あ、翔ちゃん!!」
雅紀が大きく手を振った。
少し先の電柱に凭れるようにして立っている「翔ちゃん」と呼ばれたその人は、雅紀とは反対に小さく手を挙げている。
・・・遠目からでもわかる金髪。
「ねぇ、だれ?」
「ん?翔ちゃん。幼馴染みなんだ。」
そう答えた雅紀は、今にも走り出して行きそうで。
その姿に
仲、良いんだろうなって思った。
「翔ちゃん、おはよ。」
「うっす。そいつが潤?」
そいつって言われてちょっとムっとした。
「潤くん、翔ちゃんはオレの一個上。同じ学校なんだよ。」
って事は、三年生ってことで。
よく顔を見ると、母さんが好きそうな爽やかないわゆるイケメン。
・・・金髪だけど。
「ねぇ、髪そんなでも怒られないの?」
嫌でも目立つその髪の色、校則違反じゃないの?
「怒られるよー。それでも翔ちゃん、やめないの。」
くふふって独特の笑い方で、雅紀が答える。
いや、お前に聞いてねぇし。
2人が並んで歩いて、その少し後ろを付いて行く。
気にしないようにしてたけど、視線が刺さるのがわかって、ちょっとずつ2人から距離を取って行くのに
ふと振り返って雅紀が呼ぶから。
結局下駄箱に着くまで、周りからの視線を振り払う事は出来なかった。