ことわざ漫談小話
ことわざ小話101~150
118「朱に交われば赤くなる」
このことわざは、友人や交際相手によっては、良くもなったり悪くもなったりするということです。それではばかばかしい小話をして参ります。
「これ佐吉、お前はいつからそのようにオンナたらしくなったのだ?」
「ええ?番頭さん。私が、オンナたらしいですって?」
「そうではないか、声は男だが、歩く姿や手を組むあたりが、まるでオンナのようだ。それだから男としての、いかつい背筋が一本はずれているように、その仕草だって、だんだんオンナのようになってきた」
「ああ、分かった。番頭さん」
「え?お前が、オンナに成った、その訳がわかったというのか?」
「だってねぇ、ここはオンナものの着物を扱う呉服屋ですよ。番頭さん以外はみんな女ですよ。その中で、お客さんが欲しがる柄の着物を着ちゃ、私が女のような仕草をつけて見せるから、いつのまにか女になったのだ」
「そりゃ、いけないなぁ。お前だって、いずれは嫁さんをもらうじゃないか。ええ、嫁さんをもらって、二、三日で、離縁じゃ、ええ、切なかろう」
「心配ないですよ、番頭さん。私のように、男が女になるのだから、その逆だってありますよ」
「ええ?それじゃ、お前は、女でありながら、男のような女を、かみさんにもらうというのか?」
「へぇ、番頭さん。八人兄弟の中で、男の中の女ひとりで育ったオンナがいます」
「何?八人兄弟の中で、女ひとりで、育ったオンナがいる?そいつは誰だ?」
「隣町の、あの今平屋の、お嬢さんですよ」
「え!あの今平屋といえば、そこの男どもは、家を継ぐのが嫌だと言って、みんな外へ出ちまったところだ。ああ、居るなぁ、男のような女がひとり、え?それじゃ、佐吉はそこへ・・婿さんか?」
「へぇ、番頭さん。入るサヤは、あるものですなぁ」
「お前なんぞに、いわれたくない」
お後もよろしいようで「朱に交われば赤くなる」でした。
世間は広いのです。いろいろなことがあって、うまくなりたっています。その人の幸せは、さがせばいたるところに転がっているものです。
どじょうの中に居てもドジョウにならない 源五郎