ことわざ漫談小話
ことわざ小話101~150
119「人を呪わば穴ふたつ」
このことわざは、人をのろって殺そうとして墓穴を掘るものは、その報いで自分のための墓穴も掘らなければならなくなる意で、人に悪いことをするものは、そのむくいをうけるとの例えです。
「何だ?ええ、権助がため池に落ちたって?」
「ああ、あの悪餓鬼(わるがき)が、天道の罰が当たったのだ。すってんころりと滑って池に落ちた」
「え?罰ですか、一体、何の罰が当たったのですか?」
「権助がなぁ、そのため池に落ちた罰とは、お地蔵さんの、お供えのぼたもちを食って、旨くないと言って、目の前のため池に捨てた、その罰だ」
「へい、その罰でっか!」
「それになぁ、この前は、人の家の甘柿の木に登って、甘柿泥棒はじめた途端、甘柿の木の枝が折れて、その枝とともに地面に落ちて足の骨折った」
「え?足の骨ですか」
「それに、懲りず、学校では人のお弁当を盗んで食って、下痢が止まらず救急隊に運ばれて病院だ」
「まったく、何をやっても懲りない悪餓鬼だ」
「あの悪餓鬼、今度は、何をしでかすか、楽しみだ」
「ところが、随分と真面目になって、学校の先生になったよ」
「え?ヤツも到頭、騙されたなぁ」
お後もよろしいようで「人を呪わば穴ふたつ」でした。
でもねぇ、このような悪餓鬼って、昔はいましたね。今は、そんなことはない、粒のそろった太平の世の中ですね。そんな悪餓鬼は、今では随分と出世しています。これ、ホント。
悪餓鬼はナマズときめてかかる 源五郎