中島みゆき9 | Review

Review

エンターテイメント評論(本、映像、音楽、お笑い…)



前作「寒水魚」の出来とセールスがあまりにもすごく、次どうするんだろう…という空気の中で(想像ですが)出てきたのがこのアルバム。


全体的にドラムがよく響いていてかっこいい。洗練された印象だった前作に比べ、歌詞も、曲調も、アレンジも泥臭い。アレンジは…1曲目から4曲目までは中島さん自身。5曲目以降は井上堯之。


「夏土産」…中島ベスト10に入る作品。ピアノの前奏から、導入、サビへの盛り上がりで背筋がゾクッと…話しかけるような歌声、終わりかけの恋(浮気されている)の歌詞が切ない。


「ばいばいどくおぶざべい」…〽︎ライクアローリングストーン、はなんとなく想像つくものの、ドクオブザベイってなんやねん!と長年思ってきましたが…このたびオリジナル(オーテイス・レディング)を初めて聞きました。この曲自体は、夢破れたギタリストの悲哀というか哀愁の漂う雰囲気で…ベースかっこいいなぁと思って聞いてたら細野晴臣だった。


「誰のせいでもない雨が」…ギターかっこいい。歌詞で出てくる滝川と後藤って…


「縁」…漢詩のような歌詞・曲調。じわじわと沁みてくる。


「テキーラを飲みほして」…時々中島作品に出てくる“酒”のモチーフ。初めて行ったコンサートで唄っててかっこよかった。


「金魚」…長い長い前奏から一瞬で終わる歌唱部分。語りかけるような歌声が良い。ラスト余韻…


「ファイト」…ドラムのみの前奏、そこに囁くようなヴォーカルが入り、ベースが入って(このあたりの絡みがかっこいい)、一番を歌い上げたところで、エレキの間奏!…ここでなぜか毎回泣けてくる。音楽の持って行き方にグッとくるのか…で珍しく最後は転調〜!

で、歌詞だが…これがいまだにシチュエーションも伝えたいメッセージ的なものもよくわからない(出て行った故郷への恨みがましい感情は「異国」や「ホームにて」に近いものなのか…)。後世になってCMで応援ソングのような扱いで使われたりもしていたが…この曲の本質はそんな爽やかなものではない気がする…謎多き作品。