飲酒強要でパワハラ | 元MR・社労士がお届けする医療業界のための人事・労務News

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/東京都豊島区池袋 長友社会保険労務士事務所

前回はセクハラに関する最近の判例をご紹介しましたが、今回はパワハラに関するものです。

 

共同通信記事(2013.2.27)

 

▼飲酒強要などのパワハラを受けたとして、ホテル運営会社「ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル」(東京)の元社員が同社と元上司に損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は27日、一審判決を変更して飲酒強要を不法行為と認定し、150万円の支払いを命じた。(中略)
鈴木健太裁判長は、極めてアルコールに弱い体質の元社員が少量の酒を飲んだだけで嘔吐しているのに、元上司が「吐けば飲める」と言って執拗に酒を強要したと認定。「単なる迷惑行為にとどまらず違法。元社員の肉体的、精神的苦痛は軽視できない」と指摘した。
判決によると、元社員は2008年5月、同社が北海道洞爺湖町で運営するホテル付近の居酒屋で、飲酒を強要された。携帯の留守番電話に「ぶっ殺す」と吹き込まれる行為などが続き、元社員は休職後に退職扱いとなった。▼

 

パワハラについては、最近これを認める判例が増えてきています。これまで法令上は明確な定義が示されていませんでしたが、昨年3月に公表された厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」において以下のような定義が示されました。

 

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場の優位性(※)を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。
※上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。

 

パワハラに該当するかどうかは「職場の上司・部下の人間関係の下で、当該行為が業務の適正な範囲内であったかどうか」がポイントです。
実際には「業務の適正範囲かどうか」は非常に難しい判断を要しますが、「吐けば飲める」といってアルコールに弱い部下に飲酒を強要した点や、留守電に「ぶっ殺す」などと繰り返し吹き込んだ行為は、限度を超えた嫌がらせと言えるでしょう。

 

「酒を勧めることが飲酒の強要に当たるかどうか」について、「パワハラは行き過ぎ」と考える方もいるかもしれません。実際、かつては宴席でよく見られた光景だったと思います。世代間の感覚の違いなどもあるのではないでしょうか。

 

飲酒とは場面が異なりますが、最近部下に対して「業務上の注意・指導がパワハラにならないか」と心配されている上司の方も多いと思います。
「自分が若かりし頃は上司や先輩から厳しく叱責されながら仕事を覚えたものだ」という考えから、部下に対しても同じような指導方法を取ってよいのか迷うこともあるのでしょうか。

 

部下に対して、時に厳しく注意・指導するのは当然のことですし、それが部下の人格を否定するような言動により行われていなければパワハラに該当するものではありません。むしろパワハラを心配するあまり、必要な業務上の注意・指導が行われないのは組織として問題です。職場でパワハラを起こさないためには、次のようなことを心がけましょう。
・部下の人格を否定したり、批難するような指導・叱責は慎むこと。
・部下がミス等を起こした場合であっても、頭ごなしに叱責しない。
・指導・叱責した後は、必要なフォローを行うこと。

 

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