◆◆◆くじょう みやび日録 第二期◆◆◆

 

第一期から断続的に楽しんでいる「女房気分de書写」。

現在は

『栄花物語』を読み、巻一から順にひとつずつ好きな場面を書写

という形で一人密かに進行中です。

 

本日は、巻三十八をご紹介いたします。

 

先日ご紹介したように、すでに全巻書写を終えて製本までしているので、これからあと最後の四十巻まで、毎週金曜日にUPする予定です。



巻三十八「松のしづえ」:斎宮、涙の別れのお櫛

 

延久2年(1070)~同5年5月。
前巻から三年の空白を経て、後三条天皇の御代に移っている。果断が絶賛される新帝の御代だが、政策には言及なく、東宮はじめ多くの子をなした女御・藤原茂子亡き後の源基子とその皇子への寵愛や、東宮による藤原賢子への偏愛などが描かれる。その東宮へ譲位(白河天皇)した後の、上皇一行の天王寺詣での旅、病による上皇崩御まで。



 

書写場面には迷いました。源氏という身分不相応ながら寵愛を受ける基子について(「御幸ひ」と言われる)、また瀬戸内晴美の小説『祇園女御』に登場する大好きな藤原道子さま、彼女は東宮(白河天皇)の古女御なのですが賢子の陰になりつつも立派な姿……

しかしやはり、短くもドラマチックな場面を選びました。
<別れのお櫛>です。斎宮が伊勢に旅立つ折、天皇が斎宮の額に黄楊の櫛をみずから挿す儀式のこと。「都の方へ赴きたまふな」という台詞が知られますが、斎宮が戻るということは、天皇や近親者の不幸をほぼ意味しますから、また生きてまみえる保証はないわけです。
ここで斎宮となっているのは、天皇の女二の宮・俊子内親王。この時点で潔斎もありましたから、すでに三年を経た再会。次はいつ会えるのか、いや果たして再び会えるのか(母は亡き茂子)。思わず泣き崩れ、なかなか退出できない斎宮。雨もひどく降り、見栄えのしない群行……父帝も不満に哀れに思います。

 

 

 

 

☆使用テキスト