◆◆◆くじょう みやび日録 第二期◆◆◆
還暦を迎えるより前に「世界十大小説」を読もう企画。
「世界十大小説」とは、イギリスの小説家であるサマセット・モームが考えたもので、必ずしも真の世界十大小説ではないはずですが、ひとつの指標としてみました。あくまでタイトル選びのためなので、モームの意見を読むつもりはありません。
◆ただの恋愛ロマンスじゃない『ジェイン・エア』
世界十大小説『嵐が丘』は、英国ブロンテ姉妹の真ん中エミリ・ブロンテの長編でした。★前回の記事『嵐が丘』
そこからの連想で、長姉のシャーロット・ブロンテのこちらも有名作『ジェイン・エア』にちょっと寄り道。
例に漏れず、恥ずかしながらきちんと読んだことはありません。子供時代から始まる長編で、いつ読み終えるのか不安になりましたが、特に中盤あたりから終わりまではあっという間でした。
シャーロットは、やや先輩となる英国女性作家のオースティンの起伏の少ないストーリーに批判的だったそうですが、確かに、激しいドラマに惹き込まれる展開でした。
孤児だったジェインが家庭教師で身を立て、館の主人と結ばれるロマンティックな恋愛ストーリー、と単純に言えばそれまでですが。
語り手ジェインが自立心にあふれた尋常ではない精神力の女性(全然可愛げがない、笑。あと容姿も「美しくない」と何度も強調される)であり、
女性の自立とは? 男性との対等とは?
全編を通して突き詰められています。
先に述べた通り、格上身分の男主人ロチェスターと結婚し家庭に収まる結果にはなりますが……
オースティン『高慢と偏見』、ブロンテ姉妹の『嵐が丘』『ジェイン・エア』を読んできました。ペンを持つことすら奇異に思われた、当時の女性たちによる小説。女性は「男性の所有物」として存在したのだという事実を、物語世界から感じ取ることができました。
*今回読みましたのは、河島弘美訳・岩波文庫版*
◆ブロンテ姉妹関連本を数冊
『ジェイン・エア』に関して、一点気になることがあります。
それは「狂女」バーサの存在。実はロチェスターには秘された妻がいたのです。彼女は純然たる英国の婦人ではなく……
女性としては虐げられる側のシャーロットですが、彼女もやはり<世界帝国>イギリス国民。帝国からの植民地への偏見も読み取れ、歴史として興味深く思えました。後に書かれたバーサを主人公に読み替えた小説も、おそらく近いうちに読みます。
手に取りましたブロンテ姉妹の本は、以下の三冊。
個人的には、姉二人の陰に隠れた末妹のアンが、最もバランスが取れた印象で好感でした。当然のごとく未読のため判断できないので、アンの『ワイルドフェル・ホールの住人』はいつか読んでみたいです。
・内田能嗣編著『ブロンテ姉妹の世界』ミネルヴァ書房、2010
・『図説 ジェイン・エアと嵐が丘』河出書房新社、1996
・ギルバート/クーパー(邦訳)『屋根裏の狂女』朝日新聞社、S61