引き続き、濃淡に気を配るとともに、字間にも変化をつけてみました。詰めて書くところもあれば少し空間をあけたところもある、というように、配置にも緩急が必要です。やはり、気分の問題で、意味上の区切りのところをあけるようにしてみました。
しかし、昔の手蹟などを見ていて不思議に思うのは、「なぜそこで改行する!」と突っ込みたくなるところです。出版物にかかわる仕事をしているせいか、どうしても気になります(^^;)
な か に も か
よの那可ハつね尓毛可
さ ま の
もななき佐こくあ万能
ね の か な
をふ年濃つなて可難
も
し毛
93 世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも
鎌倉右大臣
訳:この世の中は永遠に変わらないでいてほしいなあ。渚を漕いで行く漁師の小舟の、その引き綱を引いている光景が、しみじみと胸に迫ることだよ。
メモ:作者は源実朝(1192-1219)。暗殺された悲劇の鎌倉幕府第三代将軍。源頼朝の次子で、母は北条政子。妻を坊門家から迎えるなど、京との関わりが深い。藤原定家を師匠筋にもつ。万葉調の和歌に佳作が多い。この歌は、ささやかな風景に思わず永遠を願ってしまうというところに繊細さを感じる。
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(最後のほうに、この歌の本歌が載っています。)