ある土曜日の稽古の話です。
この曜日の場合、いわゆる一般稽古が主体となり、メニューもその前提で行なわれることになります。
試合がない時は第1部で基本や約束組手、第2部で自由組手、第3部で型や「形(かた)」というパターンになりますが、この日の場合、最初はタイトルにあるような内容になりました。
夏にある宗家杯を意識し、試合用の技にしようかとも思いましたが、そういうパターンは栃木の大会前に行ないましたので、今回は少し傾向を変え、大会では1本と判定されないかもしれないけれど、武術的には効果的な技として稽古してもらいました。
この第1部では2つの技について行ないましたが、今日は最初に行なったパターンについてお話しします。
内容的にはタイトルに示した通りで、今日は相手が構えの前手で仕掛けてきたパターンです。次回は奥手で仕掛けたパターンになりますが、仕掛け技が異なれば受ける側の感覚も変わります。対応する技についても相違がありますが、説明の関係で一つずつになりますことを予めご了解ください。
ということで早速具体的なことをお話ししていきますが、ここでは互いに組手時の状態を想定し、左側を前にした「正整立ち(せいさんだち)」で立ち、中段を意識した構えと言うオーソドックスな状態で対峙している様子を想像してください。明日も同じ状態で行ないますので、同じイラストが続かないよう、あえてこの様子について文章のみにします。
前述の状態からの仕掛け技ですが、タイトルにもあるように、左上肢による「上段刻み突き(じょうだんきざみづき)」です。
その様子を示したのが上のイラストですが、仕掛け技として定番の一つで、実際の組手試合でも多用されます。
今回も実際の戦いの意識で行なってもらうことになりますが、いきなりその意識で行なった場合、稽古生の中にはその様子についていけないケースもあるかもしれませんので、そこは段階を踏んで徐々に互いの質をアップしてもらうことになります。勇ましいことだけが良いのではなく、稽古ということを踏まえ、安全に、そして少しずつレベルアップを図るため、という前提で行なうことが肝要であり、その点は教える側として十分認識しているつもりです。
その際の意識として、仕掛ける側として意識してもらったのは正確なコントロールであり、その一つはターゲットの部位です。上段ということですが、その場合「人中(じんちゅう)」を意識します。
その上で「裏三寸(うらさんずん)」という意識を前提として間合いも重要で、中途半端な状態では反撃時の意識の醸成になりません。そもそも当たらないような間合いであれば、「受け」や体捌きは必要ないからです。
受ける側としても自然に仕掛け技が分かっており、しかも号令によって技を放つことからタイミングも分かります。さらに、スピードについても徐々にアップしていくということで行ないますから、目も身体も慣れていくことになります。
それで回数をこなすとなるとそれなりの時間を要することになりますが、いたずらに数をこなすだけが稽古ではありませんので、こういうステップも直真塾スタイルになります。
上のイラストは実際の稽古の場合と少し異なりますが、「掌底落し受け(しょうていおとしうけ)」としては重なりますので参考としてアップしました。
イラストと実際との違いを記しますと、仕掛ける側の状態が異なります。
前述のように、左上肢による「上段刻み突き」というのが今回の仕掛け技ですが、イラストは右上肢による「突き」になっています。
また、イラストでは受けた際、同時に相手の手首を掴んでいます。でも、今回は「掴み」は行ないません。さらに、受けた際、相手の姿勢を前傾させるようにコントロールすることが求められまずが、イラストの設定は相手が「中段突き(ちゅうだんづき)」という設定のため、姿勢の崩れは見られません。
そういうことを念頭に置いて改めイラストをご覧いただき、「掌底落し受け」がどの様に使われたかについて改めて文章で説明していきます。
仕掛ける側の様子についてはすでにお話ししている通りですが、受ける側としては上半身を右回転をするような感じで体捌きを兼ね、前手で「掌底落し受け」を行ないます。
まずはこの点を意識してもらうことになりますが、例によって説明した上で見本を示し、全員に数をこなしてもらいます。
その様子をしっかり確認しつつ、必要に応じて後にアドバイスするという流れになります。
そういう状態で見えたことですが、前述の「崩し」を意識する場合、接触する位置やタイミングなどが重要で、またその時の圧の掛け方が重要です。
つまり、ここでは「柔」の意識で行なうということが大切というわけで、ある程度稽古の様子を見た上で、問題のある動作をしている場合と比較した動きを行ない、その違いを視認してもらいました。
その上で最初の場合よりもう少し詳しくそのための要領について説明しましたが、その一つが接触のタイミングとその際の間合いについてでした。映像が無いので誤解を生じるかもしれませんし、ライブでその様子を見てもらった場合にもなかなか再現できなかった、という現実を考えると、その詳細をブログで綴るところに限界を感じます。
申し訳ありませんが、そういう理由でその詳細について割愛させていただことになります。「見えない技」ゆえの説明の難しさと、誤解のままにならないようにとの配慮とご理解いただければ幸いです。
そこで反撃技ですが、ここでは2パターン行なってもらいました。
その一つが上のイラストに示した「手刀内回し打ち(しゅとううちまわしうち)」です。
イラストでは右上肢による「打ち」になっていますが、稽古でも同様のパターンになりました。
となると、「受け」との絡みで考えた時、同じ上肢が攻防を行なっている、ということに気付きます。
実はこの点が今回の技のポイントの一つになります。
この流れが可能なのは、というより、そのつもりで今回の流れにしてもらいました。
「受け」のところから続けてお話ししますと、相手からの「左上段刻み突き(ひだりじょうだんきさみづき)」で仕掛けられた際、前述のように上半身を捻り、ギリギリのタイミング・間合いで体捌きを行ないながら、自身の左上肢による「掌底落し受け」を行ない、「受け」と同時に相手の姿勢の「崩し」を図ります。
反撃はそういうことがきちんとなされたことが条件になりますが、上半身の体捌きに関係する捻りはそのまま反撃の際の溜め、という風にも解釈できます。
そして、そのことを現実に活用しようというのが今回の反撃技であり、上のイラストに示した「手刀内回し打ち」を相手の姿勢が前傾したタイミングで首をターゲットに打ち込みます。
こういう流れが淀みなくできれば、相手の状態も「虚」になっているためその効果は大きくなります。
ただ、こういう流れを実際にイメージ通りに行なう場合、拍子という要素が不可欠で、この認識と実践が無ければあまり効果は望めないかもしれません。
また、こういう流れについて実際にやってもらうと、実質的に上肢の動きだけの技になっており、せっかくの腰の溜めを活かし切れていません。
結果、軽い技になってしまいますが、武技を単なる行為としてだけで見ているからの結果であり、その点の改善が望まれました。
もう一つのバターンが上のイラストに示した「裏拳(うらけん)」を用いた反撃です。
全体の動作として同じですので、ここでは拳形を変えて行なったことになります。
とは言っても、「手刀(しゅとう)」と「裏拳」の武器としての用法は異なりますので、細かなところでは違いがあり、その一つはターゲットでした。
前述の「手刀打ち(しゅとううち)」場合は首でしたが、「裏拳打ち(うらけんうち)」の場合は頭部で、具体的には側頭部でした。
技を放つタイミングなどは重なりますので、ここではターゲットの違いと共に、当てる際の手首のスナップの用法の違いなどについて理解し、実践してもらいました。
少々ぎこちなさが残る人もいましたが、今後、数をこなす中で解消していくものとして期待しています。
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