昨日の続きです。
火曜日の研究稽古の最後のメニューになる「変手法(へんしゅほう)」になります。
今日はタイトルからどういう話になるのだろう、と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、ブログを最後までお読みいただければご理解いただけると思います。
技名についてはタイトルにも挙げてあり、「電撃(でんげき)」と言います。
見本として行なった時、相手役になった人の弁にその言葉のようなイメージが含まれていましたが、命名の際にそういうことが関係していたのかどうかは不明です。
しかし、そういう話でも否定できないのがこの技の特徴であり、相手に対して大きな衝撃になる技であることは想像できます。
もっとも、稽古では衝撃については加減してもらうことになりますが、そうすることで当たった時の感触が変わったケースもありました。
ただ、武技として行なう時には当たるまでは武技ではなく、当たってからの変化まで意識し、実践することが必要です。
その具体例については稽古中、説明しながら実践してみましたが、最後のほうにお話しできればと思っています。
ここから稽古内容について説明しますが、「変手法」の基本の稽古では受ける側は自然体で立ち、仕掛ける側は右足を引いた「正整立ち(せいさんだち)」になります。左上肢は「下段払い(げだんばらい)」、右上肢は「正拳(せいけん)」を腰に置く、というよくあるパターンで、今回もその点については変更ありません。
ただ、仕掛ける側は「右下段四股突き(みぎげだんしこづき)」で攻撃してもらいました。
それに対して受ける側は「下段交叉受け(げだんこうさうけ)」で対応します。
上にその様子を示したイラストをアップしましたが、昨日のブログでは図らずも「手刀交叉受け(しゅとうこうさうけ)」に関わる解釈のお話をしました。
そこでは「鎮東(ちんとう)」に登場する動作についての分解・解説ということがテーマでしたが、見た目は拳形が「正拳」なのか「手刀(しゅとう)」なのかの違いだけです。
同じ日に2種類の「交叉受け(こうさうけ)」からの展開を稽古することになりましたが、実はこれは貴重なことです。武技を単なる行為だけとして捉えている場合、その意義は理解しにくいと思われますが、末端部の違いが武技やその効果についてはどう影響を与えるのかを比較する機会になったということですから、本来はそういう点にも注目してほしかったところですが、残念ながらそこまでは難しかったようです。
これは時間の関係から、そういう話や思考法についての問い掛けができなかったことも関係しており、この点は教える側の問題でもあります。ですから、この点に関しては別の機会を通じ、改めて理解してもらおうと考えています。
上のイラストはこれまでお話ししことをベースに行なわれた稽古の最初の状態です。
相手からの「右下段四股突き」に対して「交叉受け」で対応しているところですが、昨日お話しした「形(かた)」の分解・解説の際は「鎮東」の特徴から「柔」の意識で行なってもらいました。
しかし、ここではそういう意識が無くてもさほど問題ありません。
それは反撃そのものが大変重い技で、受けた瞬間に防御反応が生じても、それをものともせずに行なえるからです。
とは言いながらも、接触時に何も意識しなくても良い、というわけではありません。
稽古の様子を見ていると、単に両上肢を交差させているだけと見えるケースがありました。
「交叉受け」の場合、2本の上肢をあえて使用する技ですが、今回の仕掛け技のような場合、片方の上肢だけでも対応できますし、そのことで残った側での反撃もできます。それを自ら封じた格好になるのが「交叉受け」ですから、それの見合った効果を得ることが必要です。
先ほど今回の「受け」の場合、昨日稽古した「手刀交叉受け」の時のように「柔」の意識は無くても大丈夫とお話ししましたが、その代わり今度は相手の手首が外れないように留意します。
つまり、両上肢で手首を挟み込むということになりますが、その状態で反撃まで行なうのです。
両上肢が反撃に使えない状態での反撃という場合、「蹴り」なのかということになりますが、「電撃」はそういう技ではありません。
具体的には上のイラストのように、身体ごとぶつかっていくわけです。接触部位は肩となるわけですが、かなり意表を衝いた技です。
ご覧のように、自身の足を相手の前足の外側に動かして行ないますが、「交叉受け」で挟んだ手首はそのままで上肢の付け根をターゲットに体当たりをするわけです。
細かく言うと、「肺経(はいけい)」の経穴が並んでいるあたりになりますが、そこに強烈な体当たりをする、といった感じです。
当てる時、挟んだ手首は斜め下方に押し下げるような感じにしますが、腕を引っ張られるような感じのところに肩口に対する体当たりでバランスを崩し、倒れようとしますが、通常であればその方向に足を移動し、踏ん張ります。
でも、それを技を掛ける時の足の移動で封じていますので、仕掛けられた側はなす術がない、といった感じになります。
そういう中、最初の稽古でそれを経験したある道場生がぶつかってくるタイミングに合わせて自身の肩を内側に動かし、相手から衝撃に対抗しようと踏ん張る、というケースがありました。
最初と異なる反応に技の効果が不十分な状態になりましたが、こういう対応は相手が内容を知っている場合です。だから、「手の内」を見せないようにするのが大切になるわけですが、もう一枚上手を取る意識でいる場合、接触後の変化ということを実践します。
それが武術として意識しなければならないことと常々稽古で説いていますが、拙著「活殺自在になる」(BABジャパン)でそのことを「同化の意識」と呼び、接触後の変化の大切さを説明しています。
今回もその話をした上で、具体的にそのことを見本として見てもらいました。
ただ、こういうことは瞬間的なことですから、周りで見ていても分からないことだったと思いますが、相手役になった人は先ほどとは異なる感覚に、その意味と内容を理解してもらったのではないかと思います。
時間の関係で全員に体験してもらうことはできませんでしたが、稽古の中でちょっしてところで発現する技の不備の部分に関し、これまでアドバイスしたことを再度思い出してもらい、応用してもらうわけでが、それなりの期間稽古しているからこそできることです。
そういうことの繰り返しで、武技の深奥を理解していってもらえるのではと期待しています。
ここでこの日の稽古は終了しました。
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