今日は武器術をテーマにします。
空手道として稽古する武器術にはいろいろありますが、その中でも特に意識されるものに棒術がありますが、今日はその基本についてお話ししましょう。
今は以前撮った写真を用いている関係で、あまり難しいことはお話しできませんが、だからこそ習い始めの頃を思い出し、基本に帰るというイメージでご覧いただければと思っています。
空手道は本来素手の武術体系ですが、総合武術という側面もあり、そこでは武器の使用もあり、初代もよく稽古されていました。
昔、金城裕先生が発行されていた「月刊空手道」(後年、福昌堂から同名の雑誌が刊行されましたが、それとは異なります)に初代が演武されている写真が何枚も掲載されていますが、そこには「形(かた)」だけでなく各種の武器術も披露されており、他の先生たちの様子とは一線を画している雰囲気がありました。
現在、総本部には初代が使用されていた各種武器が保管されており、いろいろな武術に精通されていた様子が伺えます。
上の写真がその様子ですが、弓や棒が掛けられています。
棒が収められている袋にはエピソードがあり、奥様の着物を解いて作られています。初代ご夫婦の仲睦まじい様子が伺える話ですが、それが現在の総本部に飾られているわけです。
もちろん、初代が棒を扱われている写真や動画もありますが、今日はそれがテーマではありませんので、あえてアップしません。
ここでご理解いただきたいのは、千唐流は多彩な武器も扱う流派であることであり、それが素手の武技にも活かされているということです。
初代の場合、武器の操法と素手の動きの融合を意図されており、空手道の「形」で各種武器を扱うことの大切さを説かれていました。
もちろん、それぞれの武器そのものの「形」もあり、代表的なものとして「佐久川の棍(さくがわのこん)」がありますが、他流の動きとは相違点があり、現在古武術の大家として知られる平信賢先生に話されたこととして今、知られている「佐久川の棍」には異なった流れがある、ということがあり、それが千唐流に伝わっている「形」になっています。
その違いを明確にすべく、千唐流に伝承されている「佐久川の棍」はあえて「知念佐久川の棍(ちねんさくがわのこん)」と称され、他流の流れとは異なることを明示しています。
ただ、そういったことをすぐに学べるわけはなく、やはり基本から積み重ねるというのが武術としての基本になります。
となると、その課程の認識が必要になりますので、今日はその点に絞ってお話しします。
まず大切なのは武器そのものに慣れるということになります。
ですから、いきなり武技としての動作をするのではなく、まずは動かし方を身体で認識するため、棒の中心を感じる稽古が必要です。
上の写真はそういう稽古の際の一例ですが、ご覧のように「外八字立ち(そとはちじだち)」で立ち、両手で棒を持っている様子です。
この「外八字立ち」というのは別名「自然立ち(しぜんだち)」とも言い、文字通り変な力みなく立てる立ち方です。
それを土台に棒を握るわけですが、ここでは強く掴む必要はありません。自由に動かすためには軽い握りが必要で、また掴み方も左右で異なり、一方は「順手(じゅんて)」、他方は「逆手(さかて)」になります。掴む位置は棒の長さの3分の1で分けられるところを意識することになりますが、動かしているうちにこの感覚が薄れてくるので要注意です。
この状態からどうするかですが、落とさないように注意しながら、自分の身体の正面で棒を回転させます。その度に前述した掴み方が変わりますが、そういうことも含めて留意し、棒の中心があちこち動かないように気を付けながら行ないます。
変に掴む意識があれば、棒が自在に動かせないということを感じると思いますが、そういう経験も必要な場合があり、「手の内」で自在に緩急を操るという身体操作の基礎訓練にもなります。
今度の写真は、基本技の稽古の時の用意の状態です。
棒を右側に携え、そこでは肩の前方に収めています。
スタートのところですので立ち方は「結び立ち(むすびだち)」になりますが、棒の状態と姿勢を一致させ、まっすぐにします。
初学者の中には棒が肩口にきちんと着いておらず、上部か前傾しているような持ち方をするケースがありますが、実際に持っている手でコントロールし、きちんと肩口に着くようにします。
こういったところも武器のコントロールにつながる身体意識になりますので、チェックしている項目の一つになります。
続いては構えの状態から1歩前進し、打ち込みを行なっている写真です。
棒術の基本的な攻撃技の一つになりますが、構えの状態から反対側の手(左側)で棒の上から3分の1くらいのところを軽く掴み、床との角度を垂直に近い意識で回転させて打ち込みます。
この時の立ち方は「正整立ち(せいさんだち)」で行ない、「追い突き(おいづき)」同様、前足側で当てる意識で行ないます。
当然、棒の回転は基本で稽古したようにその棒の中心を意識したものでなくてはならず、この点が意識されていないと、せっかくの武技の威力に違いが生じます。
武器の操作と共に身体の使い方に習熟してくれば、武器そのものの重さと自身の丹田の操作と合わせ、重い技になりますが、最初の頃はどうしても腕力で行なおうとする傾向があります。
でも、それでは固い動きになってしまい、逆に技は軽くなり、しかもスピードも鈍くなります。武技としての質をアップするにはやはり緩急の意識が重要で、そこには基本で意識した握りの意識が関係してくることになります。
こういった単独稽古の後、基本の技の組み合わせということで「受け」も含めて稽古することがありますが、それ自体のポイントもあり、そこまで書くと長くなりそうなので、今日はここまでにさせていただきます。いずれこのことがテーマになった時にお話しできればと思います。
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