拳足の延長と理解し、武器を操る | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 今日のテーマはタイトルにもあるように、「武器術」になります。


 昨日は空手道のとしての稽古体系についてお話ししましたが、その内容は素手によるものでした。


 しかし、このブログでは何度もお話ししているように本来、空手道は総合武術です。その中には武器を用いることも含まれます。


 その「武器術」の場合、沖縄で伝承されている武器を用いるもので、代表的なものとして「(ぼう)」があります。「(こん)」と呼ばれることもありますが、千唐流では「棒術」と呼称されていますので、ここでは「棒」とします。


 他には「(さい)」、「双節棍(ぬんちゃく)」、「トンファー」、「(かい)」、「ティンベー」、「ローチン」、「二丁鎌(にちょうがま)」など多彩で身近なものも武器として用います。裏返せば、身近にあるものを武器化して用いる、という発想なのですが、そこにはそれぞれの道具を武器として用いる場合、どうすれば効果的なのかというところに知恵を絞り、体系化していったと考えられます。


 その場合、一口にそれぞれの道具の使い方と言っても、その形状や状態に違いがありますので、最も効果的な使い方を意識する場合、自分にとって使いやすい条件を考察する必要があり、そういう前提があって初めて武器術という体系に進化します。


 ですから、素手で行なう空手道の稽古同様、基本から型・「形(かた)」、そして組稽古と進んでいく過程で自分に合った武器ということにも留意する必要があり、それでこそしっかりと武器として使いこなす、ということになります。


 ただ、そこに至るまではしっかり稽古を積み、武器を自分の身体の一部にしていく必要があります。


 では、いきなり武器を手にし、いろいろな操法を学べば良いのか、ということを考える人もいるかもしれませんが、武術として、武技としての身体操作やその動きの意味を知らない段階では逆に悪い癖を身体に覚えさせる懸念があります。


 ですから、まずは通常の稽古体系により武術としての身体作りを意識することが必要になり、千唐流ではその目安として初段以上が「武器術」を学ぶ条件です。黒帯という段階を武術体としての基礎と考えるわけですが、その前提で武器という負荷をかけての稽古をしたり、道具に身体を振り回されることが無いようにということで効果的な武器の操法を習得することになります。


 とは言っても、実際に手にする武器の場合、いわゆる手への馴染みといったことが重要であり、それを念頭に置いて拳足の延長としての意識作りも重要です。自分の身体の一部だからこそ自在に操れる、ということですが、単に武器を手にし、振り回すということが無いように留意することが「武器術」として稽古するための基本的な意識なのです。


初代の棒術 ハワイでの演武



















 上の写真は初代がハワイに行かれた時に演武された様子ですが、棒術を披露されています。「組棒」と呼ばれるもので、「棒術」の約束組手のようなことです。


 初代の場合、以前のブログでも書きましたが武芸百般を地で行くような空手家であり、古流の空手から日本本土の武術にまで精通されていました。


 現在でも総本部には初代が愛用されていた武具が置いてありますが、そこには「(やり)」や「十手(じって)」などもあります


 そういう武器を扱っていらした初代の様子を拝見したかったのですが、今ではわずかに残っている映像で見るだけになっています。それぞれの武器の特徴をどう捉え、活かされているのか、今では多少分かるかもしれませんので、できればぜひライブで拝見できればと思っています。でも、それは今叶うことはありませんので、残された資料から読み解いていければと思っています。


 以下、初代の写真を何枚かアップしますので、そこから千唐流としての「武器術」の雰囲気だけでも感じていただければと思います。


初代と釵

























 続いては初代が「釵」を構えていらっしゃる写真です。


 背景は私が通っていた頃の総本部道場で、昔はこのように屋外で稽古していました。


 後ろに見えるのはいろいろな道具が置いてあり、サンドバッグも吊るされていました。


 投げ」や受け身の稽古をする時には、ここから畳を出し、そこでいろいろやっていました。着替えもここで行なっていましたが、この写真の左側に母屋があり、初代の自宅でした。


 そのため、ここには海外の先生や道場生たちがいつも訪れており、当時なかなか会うことがなかった外国人の人たちとも接することができ、そういう意味では大変貴重な時間を過ごさせていただいたことになります。こういうことの大切さというのは後になって分かるものですが、その時にはそういうことをあまり感じていなかったことをもったいなく思っている自分がここにいます。


 話が横道に逸れましたが、「釵」の話に戻しましょう。


 現在、「釵」をお持ちの方であれば、初代が手にされているものの形状に少し違和感を感じられる方がいらっしゃるかもしれません。


 最近売られている「釵」よりも、「(よく)」と呼ばれる持ち手の横にある2本のかぎ状のところの幅が広くなっているのです。


 この時期、あまり「武器術」で使用する武器が市販されていなかったため、千唐流ではオリジナルで製作されており、そのデザインが前述のような状態になっていたのです。


 こういうことが自分に武器を合わせる、ということの一例になりますが、私も1組持っておりました。過去形になっているのは、現在手元にないためですが、市販されている「釵」と比較すると、振り方に違いが出ます。もちろん、千唐流の「釵」のほうが振りやすく、手に馴染みます。このような経験が前述した「武器術」の意識につながっていくわけですが、こうやって昔の写真を改めて見ると、ちょっとしたところにも相違点があり、古流の武術のコンセプトを垣間見ることができます


初代 棒と釵の組稽古

















 初代と「武器術」の写真と話をもっとアップしたかったのですが、思ったよりも長くなってしまい、今日は上の写真のことを書いて終わりにします。


 他にもいろいろありますが、その話はいずれ機会があれば、ということでご紹介します。こういう資料は単に公開すれば良いということではなく、それがどういう意味を持つのか、ということに留意することが大切と理解しているからですが、あらかじめご了承ください。今回は、千唐流と「武器術」との関係、ということでお話ししています。


 そこで上の写真ですが、今日ご紹介した「棒」と「釵」の組稽古になります。写真では初代が仕掛け、相手の方がそれに対応している様子が写っていますが、千唐流の空手家、あるいはこのブログの読者の方なら、何か気付かれるのではと思っています。


 というのは、この動作は二十四歩(にーせーし)」に登場する「捻り打ち(ひねりうち)」と同じフォームなのです。


 このブログの冒頭、千唐流ではまず武術体作りを意識し、武器を持たない状態の稽古を繰り返すとお話ししましたが、そこには「形」の分解・解説も含まれることになります。そして、「武器術」が拳足の延長という意識であれば、武器の特性を前提に分解・解説の技を活用することも可能であり、上の写真はまさにその様子を表わしているわけです。


 空手道の「形」も、「武器術」も、実際に使うための意識が必要ですので、今学んでいる動作が現実にはどのように活用されるのかを念頭において身体を動かすことが、武術の稽古として大切なのです。








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