武術の稽古に無駄はない! 調息動作も武技になる | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 昨日の続きです。


 道場では武術の稽古に無駄はない、ということをよくお話ししています。


 先日お話しした正座や礼法などもそうですが、それ自体が武術としての心構えや身体操作・武術体を練るところにも活用されるわけで、一見、関係なさそうに見えることの中にも深いところではつながっているのです。


 それを意識するかしないかで長い間には違いが出てくるわけで、直真塾ではそういった細かなところにも目を向けることの大切さを説いています。


 昨年の暮れ、2020年の最初で最後の昇級・昇段審査を行なった話をこのブログでしましたが、そこでは審査の様子を写真でご紹介しました。


 その際、各人の距離についても留意してもらいましたが、その実践はそのまま今必要とされるソーシャルディスタンスの意識にもつながります。


 武術的には間合いとして認識されることですが、例えば整列一つとっても武の意識は自然に実践できるわけです。


 稽古の時にも近くの人に「突き」や「蹴り」が当たらないようにする注意するということになりますが、こういった間合いの意識を逆に活用すると当てる間合いについて理解できるようになります。


 こういうことについては、頭で分かっているだけではダメで、実際にそのことを身体で実践できるかどうかが大切です。


 通常ではなかなか意識できないことでしょうが、武術として稽古する時にはこういう要素も自然に身に付け、武術家としての振る舞いができる様にならなければならないのです。


 今日の話はそういうことの延長戦上にあることで、道場では何気なくやっている調息動作もまた武術の一部であり、武技として活用できる要素を持っている、という内容になります。


 調息動作というのは、文字通り呼吸を整えるための動作ですが、そこで終わっていれば稽古としてもったいないわけで、そこにきちんと武技としての意識を持ってもらいました。


調息動作
























 具体的な動作としては、上のイラストのようになります。

 何かの稽古が終わった後に呼吸を整えるための動作ですが、その時の立ち方の変化は基本的には2パターンあると思います。


 一つは左右に開いている場合、そしてもう一つは前後に開いている場合になりますが、いずれの場合も足を一方に引き寄せ、「結び立ち(むすびだち)」になって上のイラストのような動作と共に呼吸を整えます


 そこで足の動かし方ですが、前者の場合は右側に引き寄せます。後者の場合は左右を問わず、前方の側に引き寄せます


 調息動作というのはそういった下肢の動きに合わせ、イラストの左側のように両拳を鼻の近くに持って行きます。そしてその時に息を吸うようにします。


 その後、両拳を息を吐きながら体側に静かに下ろしていきます


 呼吸のリズムとしては「長呑長吐(ちょうどんちょうど)」になり、乱れがなくなるまで数回繰り返すこともあります。この辺りは様子を見てコントロールするところですが、基本稽古の一区切りがついた時に行ないます。


 通常の稽古ではそこまでになりますが、これを武技の稽古の一つとみて、魂を入れて行なうようにすることで本当に武技として活用できるようになります。


 そういうことは話だけでなく実際にその様子を見なければピンとこないでしょうから、今回はその実例を見てもらいました。


 今回実演した内容についてはこの日の出席者の中で見たことがない人がいたからで、それ以外の人は実際にできる人もいます。そういう人には復習になりますが、そういうことはどの段階になっても大切ですし、今度は自分が教える立場になっても役立つことです。


手首の捕り方 1

















 以前撮った写真ですが、調息動作を武技として活用するのは手解きの技になります。


 その場合、相手が手首を掴んできた場合を想定しますが、具体的には上の写真のような状態になります。


 もちろん、力の差がある場合、腕力で解くこともできるでしょうが、武術の意識で行なう場合、もっと楽にできますし、返しにも活用できることになります。


 そういうところはいずれ今の問題が落ち着いたら稽古したいと思いますが、この状態から冒頭のイラストに示した動きを行ない、掴まれた状態から脱するようにします。


手解き 1
















 上手く行けば上の写真のような感じになりますが、そのためのポイントが両上肢の動かし方で、前腕の回旋させながら正中線の前を通りながら上方に挙げます


 握力が弱い人や、そもそもあまり強く掴んでいない場合にはこれで解けますが、そうならないケースもあります。


 その場合、掴んだ側の意識としては元の状態にしようと下げようとする力を入れます


 それを感じた瞬間、掴まれている側は両上肢を一気に下方に落とします。反射的に離すまいとしますが、それが術中にはまった状態であり、そのことが姿勢の崩れを誘発させることになります。


 その瞬間を待ちかねたように相手の顔面に「頭突き(ずつき)」を放つというのが冒頭の動作をそのまま武技として活用した時の流れになります。


合気上げ系手解き















 他の展開もあり、その一部を示しているのが上の写真です。


 写真のアングルからお分かりになると思いますが、掴まれでいる側の姿勢が落ちています


 両上肢の様子は押し上げようとしていますので、一見、全身の動きのベクトルと上肢の動きが逆になっているように見えますが、そういった陰陽論的な動作というのはタイミングなどの「見えない技」になりますこれを誤ると武技にならず、逆に相手に付け込まれる隙になります。だからこそ、動作として行なうだけでなく、こういった手解きの技の場合、触覚を最大限に活用に、相手の反応を感じつつ行なうことが大切になります。


 その時の(せん)」の取り方如何で技の成否が決定しますので、武術家としての感性はしっかり磨いておかなければなりません。この部分は数をこなすことでしか身に付けることはできませんが、そのための誘導はできます。技がかかるプロセスをきちんと理解し、そのタイミングを認識した上で数をこなすことになりますが、前述のように「見えない技」のカテゴリーになりますので、時間をかけて積み重ねることが必要です。


 そこで上の写真の説明ですが、相手の上肢をピンと伸ばし、肩関節を下から押し上げようとする状態にできるかどうかが大切です。


 見ていると簡単そうですが、相手もわざわざ術中に陥るようなことはしません。そうならないように抵抗するわけですが、特に相手も武術経験者であれば、本能的に危険性を察知するでしょうし、その相手が組技系の武術家であれば技にかからない可能性も大きくなります。


 そういうことを押さえ、きちんと技をかけるには前述の「先」の取り方といったところにも留意し、自分にとって優位な状態に素早く持って行くことが必要です。動作として技を覚えるのではなく、それを使える技にするためには、という意識で稽古することこそが大切です。


 早くそういったことをアドバイスできる稽古環境になることを願っています。







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