昨日の続きです。
と言っても、中級者グループの「抜塞(ばっさい)」の話ではありません。
この日は最初に呼吸法を意識して「正整(せいさん)」を行ない、その後、「基本型(きほんかた)」である「前進後退(ぜんしんこうたい)」と「四方割(しほうわり)」を稽古しました。
ここまでは全員で行ない、その後、3つのグループに分けたわけですが、その一つが昨日お話しした「抜塞」のグループ、中学生のグループ、そして今日お話しする「壮鎮(そうちん)」のグループです。中学生のグループの稽古の話はまだしていませんが、それは後日に譲ります。
今日の話の「壮鎮」ですが、最近、上級者のグループ用の研究「形(かた)」として集中的に行なっています。まずは「形」そのものを練り上げる目的で単独稽古を何度も繰り返し、その後、そこに登場する動作をピックアップしてその分解・解説を研究する、という流れです。
この日も最近のパターンに沿った稽古になりましたが、3グループを同時にアドバイスすることはできませんので、単独稽古の部分については全体的なところではなく、分解・解説の稽古をする箇所だけに限定しました。
「壮鎮」を稽古するグループの場合、直真塾の上級者たちですから、互いにアドバイスすることができます。もちろん、それが的確かどうかは確認が必要ですが、その点は改めて行なうことになります。
出席者をグループ分けして稽古する方法は、各人のレベルに合わせて行なえるというメリットもありますが、教える側とすればそれぞれに目を配るのが大変で、共通アドバイスができない分、教えられる内容が少なくなります。
ただ、それも考えようで、その分必要なことに特化でき、道場生にとっても一度にたくさん耳にするよりも少なくても自分が意識できるくらいのほうが覚えやすいのでは、ということも思っています。自主的に考えて身体を動かすことも大切ですし、今はこういう稽古法も良いのではと思いつつ、続けました。
上のイラストがタイトルに挙げた動作を表していますが、ご覧のように転身しながら大きく振りかぶって「下段払い(げだんばらい)」を行なっています。
また、足下をご覧いただくと、床を踏み抜くような動作が入っていることがお分かりになると思いますが、それを「下段払い」と同時に行なう、というのがこの箇所の特徴になります。
床が固いため、本気で踏み抜こうとすれば足を痛める可能性があるので、そこは加減してもらうことになりますが、武技としては踏み抜く時には本当にそうする意識で行なうくらいのイメージが必要です。
実際、その動作を「下段蹴り(げだんげり)」のつもりで行なう時には必要な身体操作・身体意識であり、そうでなくても丹田の落としに関わることですから、これも武技の質に関係します。
「下段払い」にしても、他のケースと異なり、大きく振りかぶっていることから通常よりも大きなパワーの発現が可能になっている可能性があり、武技としてのパワーの出し方を教えている個所とも言えるかもしれません。
そしてこの動作の第一義的な分解・解説の内容は上のイラストのようになります。
仕掛ける側は「中段前蹴り(ちゅうだんまえげり)」で、それを「下段払い」で受けます。
それによって仕掛けた側が足を地に付けた瞬間、「下段足刀蹴り(げだんそくとうげり)」で膝関節を折るようにして蹴る、ということになりますが、前述の踏み抜くような動作はここで活かされているわけです。だからこそ、「下段払い」に連動させて足を床に強く落とすわけですが、この箇所だけでも別の展開が考えられます。
その話はここではしませんでしたが、上肢を大きく振りかぶることを考えると、その動作で相手の下肢に自身の上肢を巻き付かせるような感じで動かし、瞬間的に片足にします。
そうする時、間合いは少し詰めておく必要がありますが、その時の間合い次第では軸足の膝関節を蹴ることも可能です。
この場合、関節そのものにはダメージがあまりなかったとしても、両足の自由を奪われたことになりますので、当然転倒します。
こうなったら立っているほうが断然有利になりますので、最後の止めはそこで行なえる適切な極めを行なうことで完了します。
「形」を武技として意識し、解釈しようとする場合、表面的な動作だけで考えるのではなく、間合いやタイミングといった「見えない技」まで考慮し、その刹那に判断し、最も適切な技を出す、といった意識で対応できるようにするのが武術としての稽古です。
そこには試合での戦い方を超えた世界が存在しており、本気で戦う時の特殊な環境下でもより優位になれるよう、日頃からいろいろな想定をして身体を動かしておくことが大切です。こういう意識は、「形」の分解・解釈を武術の視点から、という意識で稽古する時の大切な心構えの一つではないかと考えています。
今お話したような仕掛けてきた側の下肢に自分の上肢を絡めるという部分は、他のパターンでも活用できます。
上の写真は「風雲(ふううん)」という技ですが、相手の上肢の付け根付近に自身の「手刀(しゅとう)」を押し付けるようにして崩す技です。
そこでは仕掛ける側は「突き」になりますが、それに対して前述の「蹴り」の場合のような感じで対応し、自身の上肢を巻き付けます。
それなりの間合いを意識して行なわなければ、上手く写真のような場所に「手刀」を持っていくことは難しくなります。
こういうところの意識は、動作として行なうだけでなく、その完遂のためにはどういうところを留意しなければならないのかという「見えない技」の実践が不可欠です。
教える側として感じているのは、動作だけならすぐに覚えますが、その使い方に対する工夫が見られないというケースがあるということです。
結果、技がかからないということになりますが、そこには「どうしたいのか」という意識の希薄さが見受けられます。目的・結果をイメージできるならば、おのずと「見えない技」までイメージできると考えていますが、最初の内はどうしても受け身の意識が強くなりがちですので、ハウツーを聞きたがります。
もっとも、このグループの場合、上級者ですからそのようなことはありませんが、思いは持っていても気付かないところがあります。そこがアドバイスするポイントになるわけですが、そこは個別指導の対象になります。
また、上の写真は肩口が接触部位になっていますが、それを肘関節に変更することもできます。
当然その場合のコツがありますので、その稽古になった時にはトータルして再度流れを見直し、「風雲」との違いを理解してもらい、行なうことになります。
類似の技があるからこその稽古メニューになりますが、そういったところで見られるわずかな差異の認識と、そのこだわりが武技の質になるということを改めて認識してもらいました。
この日の稽古の様子はまだ続きますが、今日はここまでにさせていただきます。
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