三戦の絞り突きを活用した鍛錬 | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

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 土曜日の稽古の話です。


 稽古前、少しずつ道場生が集まっている中で、早く到着している人が一人で身体を動かしていました。鍛錬を意識してか、「三戦(さんちん)」の最初のほうに出てくる「絞り突き(しぼりづき)」のところを呼吸法と共に繰り返しやっていたわけです。


 他にはストレッチをやっている人もいますが、その日のテーマを決める際、こういったところに道場生それぞれの見えない意識が潜んでいると理解し、出席者の様子を見ながらどういう稽古をするかを考えます。


 出席者にレベル差があったりすれば、その効果にも偏りができますので、総合的に考え、その日の稽古の効果が最大限になるよう工夫するわけです。


 もちろん、終日それのみというわけではなく(場合によってはそういうこともありますが)、いくつかのパートには分かれますが、この日はその中の一つにこの「絞り突き」を活用した稽古を入れることにしました。そのことがタイトルにも記してありますが、ここでは武技としてではなく、鍛練がテーマでした。


 何度もお話ししていることですが、「形(かた)」稽古の意義は、武技の伝承と武術体作りです。後者の中に鍛錬という概念が入ってくるわけですが、「三戦」自体、鍛練の要素が強い「形」ですので、その点を念頭に、より効果的に行なってもらいました。


三戦 絞り突き






























 上に「絞り突き」の様子を示したイラストをアップしましたが、「三戦」を行なう代表的な流派である剛柔流や 上地流の動きとは異なっている、ということがお分かりいただけると思います。


 千唐流の「三戦」は東恩納寛量先生の師の一人である新垣世璋先生から伝授されたもので、那覇手系ではありますが、伝承の際の違いが見て取れます。


 ちなみに、千唐流の「三戦」は時間が長く、最低でも5分くらいかかります。剛柔流で稽古されている「転掌(てんしょう)」に似た動作も含まれており、全体の流れを見てみても、ユニークな内容を持つ「形」です。


 さらにお話しすれば、私が初代から教えていただいた中に「転掌」の一部があり、後年、初代が残されていた動画の中に、「これは東恩納先生の『転掌』です」と説明されて上で演じられているものがあります。現在、剛柔流で行なわれている「転掌」とは異なる内容になっていますが、貴重な資料です。その点については、昔書いた「活殺自在になる」(BABジャパン)の中も記してありますが、来年、その本が英文版で出版されますので、こういう話もお知らせできることになります。


 歴史の話はここまでにし、稽古の話に戻ります。


 「三戦」自体、通常は単独で稽古して武術体を練り上げていくわけですが、この日はあえてそのスタイルは採りませんでした。


 鍛錬として行なう場合、呼吸法と共に身体を締めることになりますが、意識しなければならないのは単に身体を鎧のように締めるだけでなく、その際の筋肉の動きの意識をどのように持っていくか、ということを身体自身で認識することが必要であり、この日はその点を念頭に置いた稽古にしたわけです。


 つまり、各動作の際、身体のどの部分に負荷がかかり、それに対応するためにはどう身体を動かせば良いのか、ということを実感してもらったというわけです。


 そういう場合、実際に負荷をかける稽古が有効なわけで、その為にペアを組んでもらうことにしました。


 単に負荷をかけるだけなら、指導者が「形」の動作に合わせて行なうことも可能では、と思われるかもしれませんが、この日はあえてペアを組み、同じ動作を合わせ鏡のような感じで行ない、その際に互いに負荷をかけ合う、ということを行なったわけです。


 具体的にお話ししましょう。


 イラストでは「三戦立ち(さんちんだち)」で行なっていますが、稽古では「内八字立ち(うちはちじだち)」で行ないました。これは運足を伴わず、その場で行なう為ですが、下肢の締めを含む鍛錬には支障ありません。


 互いに「扇受け(おおぎうけ)」の状態で向かい合い、イラスト通り「中段突き(ちゅうだんづき)」を出します。両者ともまっすぐに向き合っていますので、正しく突けば拳がぶつかります。それではこの日の稽古の趣旨から外れますので、そうならないよう両者ともやや内側を突いてもらいました


 そこでは互いの上肢が接触しているわけではないので、相手からの負荷は感じませんが、「形」の中で「絞り突き」として行なう場合、イラストのように「突き」として上肢を伸ばした後、そのままの状態で外側方向に呼吸と共にやや開きます


 これを両者同時に行なってもらうわけですが、必然的に小手の部分が接触し、互いに負荷がかかります。この部分が鍛錬となるところですが、脇の締めや中心軸の確保、土台の堅牢性などの要素がしっかりしていなければ、すぐに崩れてしまいます。


 こういう時、上肢の筋力だけでは耐えることはできず、そのような身体の使い方をしている人の場合はよろけています。


 そこから、動作として見えていることを表面的に捉えるだけではハリボテのようなものである、ということを認識し、武技は全身を活用するものであり、その際に意識する箇所はどこか、ということを確認しつつ、具体的にその部位の鍛錬を図ったわけです。


 話を聞くと、人によってその負荷が肩にきたり、腰にきたり、あるいは股関節や膝にきたりと様々でしたが、そういう感覚が自身の弱い部分の発見につながったり、これからの稽古テーマになったりもします。今後、必要であれば各自でも稽古時間外に同様の稽古もするでしょうし、今回のことがそのきっかけになればと願っています。もちろん、出席者の状況によってペアを組み、そういう時間を設けるのがこの時期の稽古の特徴ですので、各自、しっかり自分のことを認識してもらえるものと考えています。


 なお、ここから別の鍛錬も行ないましたが、そこまで書くと長くなりますので、今日はここまでにしたいと思います。





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