武技の質を向上させるための膝の抜き | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 昨日の続きで、「形(かた)」グループの稽古の話です。


 このグループは上級者のみで稽古しますが、宗家杯も終わったのでリクエストを聞いた上で行なうことにしました。試合前であれば、各人が行なう「形」が異なるため、個別指導で行ないますが、その時期が終われば一つの「形」に集中し、それを深く掘り下げます。


 ただ、意見を集約する必要がありますのでリクエストを聞き、全員に諮ることになりますが、決まったのは「鷺牌 大(ろーはいだい)」でした。


 最近、直真塾で上級者の道場生がよく稽古している「形」ですが、その傾向のままの選択になりました。


 まずは全員で号令に合わせ、何度か動いてもらいます。その時の様子を見た上で意識してもらいたい箇所をピックアップし、具体的にアドバイスをしました。


 この時のベースになるのは、試合を意識してのことではなく、武技の質を向上させる、ということが目的です。


 その場合、「武の理」をベースに考えることが必要になりますが、筋力以外のパワーアップのポイントの一つに「丹田」をどう活用するか、というのがあります。


 極めの際には瞬間的に落とし、その勢いを武技の重さに転じるよう身体を動かすわけですが、その時に意識されなければならないのが、タイトルにもある「膝の抜き」です。


 もちろん、その前提としてきちんと身体の中心軸が整っていなければならず、この点が抜けていたら見かけ上「丹田」を落としたようになっていても、その効果は疑問です。むしろ姿勢の崩れ、というマイナス面が強調される事態になるかもしれず、要注意です。


 今回、「膝の抜き」を活用した「丹田」の操作に着目したのは、このグループの場合、姿勢の崩れはないので、膝の用法を意識することでさらなる武技の質の向上を図ってほしかったわけです。


 ただ、時として姿勢を崩すまいとしてか、ちょっと身体を締めすぎ、という箇所もあり今回、「膝の抜き」を意識してもらった背景には、「緩急」の実践を加味して欲しかった、ということもあります。


 「膝の抜き」という身体操作の場合、瞬間的に緩めることが必要になりますが、常時締めることを意識していては実践できません。「形」の中の動作として、さりげなくそういった身体の使い方の実際を体得してもらうことで、武技としての身体操作につなげてもらいたいと願っているのです。


 最初の内はどうしてもぎこちないものですが、数をこなすうちに自然に使えるようになります。先日、宗家杯の会場で関係する大学の空手部の選手にこの身体操作を活用した「突き」を体験してもらったら、一見、何の変哲もない動きからの大きなパワーの発現に目から鱗、といった表情をしていました。防具着用したところで突かれても、その衝撃が十分伝わったのです。そのことがきっかけで、9月から時々直真塾の稽古にも参加したい、という相談がありましたが、筋力以外のパワーの出し方の存在を理解してもらっただけでも良かったと思っています。


 さて、具体的にアドバイスした箇所ですが、その一つが以下のところです。


鷺牌 弓勢から下段払い




















 ご覧のように、「交叉立ち(こうさだち)」による「弓勢(きゅうせい)」の構えになり、交差した足を開くような感じで転身して「四股立ち(しこだち)」になり、そのタイミングで「下段払い(げだんばらい)」を行なっています。


 動作について簡単に言うならこのような表現になりますが、これを武技として行なうには、それぞれの動作の中の「見えない技」の部分を意識しなければなりません。


 そのうちの一つが「膝の抜き」というわけですが、それは「弓勢」の際の「交叉立ち」の極めの際にも必要になります。


 この立ち方の場合、しっかり踏ん張っているわけではないので、土台としての意味からは続いて行なう「四股立ち」に比べると脆弱です。


 でも、武術の立ち方ですから、要件の一つである堅牢性についても意識しなければならず、上手く「抜き」から「締め」へと移行しなければなりません。それがこの立ち方の中での「緩急」ということになりますが、瞬間的な、あるいはつなぎ技的な立ち方になることが多い「交叉立ち」でも、土台としての性質をきちんと保持するための身体操作を有するわけです。


 立ち方の部分だけに着目して「形」の流れを見てみると、「交叉立ち」から「四股立ち」になるわけですが、その変化はそのまま「丹田」の位置の変化でもあります。


 もちろん、「四股立ち」のほうが低くなりますので、その際に「膝の抜き」を活用して「丹田」を落とすことになりますが、抜いた後はすぐに締め、その瞬間に「下段払い」を極めます。そのタイミングが上手くシンクロすることが大切ですが、それが上手くいくと、体重が乗った重い技になります。


 その場合、上肢の「脱力」と極めの際の瞬間的な締め、ということも技の質に大きく関わるため、ここでも「緩急」の意識が不可欠です。


鷺牌 下段払いから返し突き





















 「下段払い」からの続きですが、ご覧のように転身して「正整立ち(せいさんだち)」になり、「中段突き(ちゅうだんづき)」を行ないます。


 これも先ほど同様、動作だけを説明すると肘ように簡単に済むことです。


 でも、そこに身体の使い方の深さを見るのが直真塾スタイルであり、武術としてのコツにつながります。


 「四股立ち」から「正整立ち」という変化は、「丹田」の位置としては上がることになるので、体重を「突き」に乗せるのは難しそうに思えますが、瞬間的な身体の操作ができれば、やはり重い「突き」とすることができます


 たしかに、「四股立ち」から「正整立ち」に変化する場合、単純に見れば「丹田」が落ちるタイミングはなさそうです。


 でも、転身時、姿勢の高さがピークになった瞬間わずかに「膝の抜き」と直後の締めを行なえば、「丹田」の瞬間的な落としは可能であり、これが「突き」の重さになります。


 一見、「丹田」の落としとは逆方向に動いているように見えても、瞬間的なわずかな身体操作を意識し、また実践できれば「見えない技」として作用し、同じように動いても質的に異なった技になるのです。


 今日はあまりお話しできませんでしたが、稽古では他の箇所についても説明しました。いずれこの「形」の話をする時、再びテーマとして取り上げるかもしれませんので、その時に譲りたいと思います。





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